■音楽コラム 第03回 Claude Debussy (1862-1918) ■

 

「ピアノ曲を三曲かきました。曲名が気に入っています。

 <塔>,<グラナダの夕>,<雨の庭>というのです。

 自前で旅行をする術がないときは想像で埋め合わせをするしかありません。」

 

これは、ドビュッシーがアンドレ・メサジェに宛てた手紙であるが、

図書館で勉強していた時、息抜きに手に取った文献に書かれているのを見付け、

巨匠の芸術の根底にあるものを垣間見た様な…そんな衝撃と感動を覚えた。

 

ドビュッシーは、フランスを代表する音楽家で

西洋音楽の伝統的な理論を脱し、

新しい音楽語法を確立した歴史的に重要な作曲家で

音の印象派と呼ばれるほど鮮やかで、情景の浮かぶ曲を多数残した。

 

私は「印象派」という言葉に反応し、

ルノワール達が刻一刻移ろいゆく光を描くように

現実世界を見つめて音楽を描いていったのかと思っていたが

実はそういう試みは稀で、心の底から湧き出る美しい情景を紡ぎ、

音楽として織り上げていったという事が分かった。

 

想像の愉しみ、好奇心を追求する喜び、

心に広がる無限の景色に包まれたときの感動・・。

前奏曲や版画にそれは非常に色濃く表れている。

 

"旅"が好きなドビュッシーにとって、

東洋は非常に魅力的な存在であったのだろう。

交響詩<海>が、彼の愛蔵していた北斎の版画「神奈川沖浪裏」から

霊感を受けて作られたという逸話は、非常に誇らしい限りである。

(2006.11.20)