新連載

「なにわともあれ村のアシカレ」 眼我真

 前回は中学生のアシカレでした。今回からは彼のもっと幼いころの話から始めたいと思います。
登場人物の紹介から、
ヨカレ鉄工所の息子アシカレ、その友だちのロイヤル・ヨッタ君、まとう商店のゼリー・フーちゃん。
この三人を中心に物語は詩を中心にした、超短編、気まぐれオムニバス形式で書き進めたいと思います。
 
第一話「ターザン」
 
 なにわともあれ村は海と山に囲まれた小さな村です。
その村で唯一のヨカレ鉄工所の息子アシカレはわんぱく坊主で有名です。
遊び友達のヨッタ君とフーちゃん、いつも三人そろって遊びます。
「今日はなにしてあそっぼっか?」幼稚園から帰るといつもヨカレ鉄工所うらの
空き地に三人あつまり相談します。いつもたいていアシカレが決め、ヨッタ君と
フーちゃんがあとについて行くのでした。今日は「お墓であそぼうか?」
お兄ちゃんたちが来る前に、ターザンのまねごとをしたいのです。
お兄ちゃんたちは斜面の一番上の山道から飛び出しますが、まだ小さいアシカレたちは
下のほうの斜面から始めます。そこからだとそんなに遠くまで飛ばないので
危なくないのです。それでもヨッタ君とフーちゃんはこわごわとツタにぶら下がります。
「ヨッタ、もっと勢いよくジャンプだよ!」そう言いながらアシカレは自分の番になる
といつもより一つ上のところから勢いよく飛び出しました。
「ヤッホー!ア〜、ア〜!」ターザンのまねごとをして奇声をあげます。
まだまだ、お兄ちゃんたちのような本格的なターザンではありませんが
気分はターザンそのもでした。
一段上からできるようになったアシカレは得意まんべんです。
そうこうしていたらお兄ちゃんたちが学校から帰ってきたようです。
常連のお兄ちゃんたちが集まってきました。
「アシカレ!じゃまだから他であそびな!」
しかたありません。アシカレたちは上の山道からお兄ちゃんたちの
ターザンごっこを見ながら時間のくるのをまちます。
いつもこのまま夕方になり三人は家路につくのでした。
それからしばらくして、中学のお兄ちゃんが墓場のターザンあそびで足を折ったという
うわさを耳にしました。その日のうちに三人はさっそく墓場にいってみました。
すると、大きな木の枝に結ばれていたツタがはずされていて
「よい子はここであそばない!」という立て札がぽつりと立っていました。
墓場は静まりかえり、それこそ人の気配もしない、ただのお墓になっていました。
  
『ターザン』(眼我真詩集より) 
  
僕が幼稚園児のころ
お兄ちゃんたちは
墓場の裏の斜面で
大きな木の
大きな枝に
ツタを結んで
タ-ザンごっこをして遊んでいた
僕は
斜面の上の山道から
お兄ちゃんたちの
遊びを見ていた
翌日も
その翌日も
ただ見ていた
いつの日か自分の番が来ることを信じて
待っていた
そのうち一人のお兄ちゃんが
手をすべらせ骨折してしまい
その遊びは大人によって中止させられた
僕はついにタ-ザンに成れなかった
ツタを斜面の上まで持って行き
いっきに下に向かってジャンプする
お兄ちゃんたちの歓声
次は僕だ 俺だと
言う大きな声
墓場は僕達の遊び場だった
あれからいく年
斜面の上の山道は人も通らない
ケモノ道になってしまった
大きな木と墓場は
時を失ったかのように昔のままの姿である
ただ
あの子供達の喜びの歓声は
もう何処にも聞えない
 
第二話「ハエ殺しのジョニー」
(毎回詩が出てきますが、すべて眼我真詩集からです)
 
 アシカレはきょうの朝、食卓の上で飛び回っていたハエを二匹殺しました。
さっそく、ヨッタ君とフーちゃんに自慢します。
「おれを呼ぶときはきょうから『ハエ殺しのジョニー』って呼んでくれ!
おれの早わざは二ちょう拳銃さ!へ・へ・へ」
二人はきょとんとして聞いていましたが「なんで?アシカレがジョニーなんだ」
ヨッタ君がアシカレに聞きます。
「まあ、そういうな。ジョニーのほうがかっこいいじゃん。
西部劇のヒーローみたいでいいんだよ!」
フーちゃんがくすくすと笑います。アシカレはすっかりそのきになり、二ちょう拳銃で
バ・バーンと撃つカッコウをしてみせます。
 
 『ハエ殺しのジョニー』
 
「おれ様の近くに来るんじゃねえ!
殺し屋のおれ様に殺されたいのか!」
おれ様の体温を感じて近づいて来るハエども
行くところ行くところ おれ様について来る
おまえら知らねえな
おれ様は「ハエ殺しのジョニー」と言われている男
狙った獲物は必ず仕留める
早わざのジョニー
ハエたたきを片手に濡れタオルを反対の手にぶらさげ
すばやく打ち出す
「バチ、バシュッ」
二回に一回は仕留めるプロフェショナル
おれ様はハエ殺しのジョニー
 
 (その夜、アシカレは夢をみました)
 
『ハエ殺しのジョニー』続編
 
ちょっと殺し過ぎじゃねえか?
でもよ
やたらハエのやつら増えているんだぜ
もう何匹殺したやら
後から後から出てきやがる
おれ様も殺生したくねえがよ
来る火の粉は払わねばなあ
 
ハエさんたちよ 
もう来るなよな
それでも来るものは来る 
 
殺人鬼の役も辛いものよ
天使の役なんてのもいいね
今度は天使の役にしてくれよな
 
死んだハエを生きかえらせ
ハエの恩返しで億万長者なんていいね
 
ハエの宝物って何だろう?
 
腐敗しかけた食べ物とかネズミの死骸だったりしてね
それを山ほどプレゼントされ
生ゴミ長者になったりしてね
 
「生ゴミ長者のジョニー」なんて言われちゃったりして
カッコわりー 
 
 朝、起きるとアシカレはお寝しょをしてしまっていました。
かあさんに「寝る前にトイレに行くように、いつも言ってるでしょ!」としかられ、
アシカレは小さくなって家を出ます。
ヨッタ君とフーちゃんに会っても元気なく、昨日とは別人のようなアシカレでした。
 
第三話「つばめの赤ちゃん」
 
 玄関の上につばめが巣を作りはじめました。アシカレがそのことを言うと、すぐに
ヨッタ君とフーちゃんがアシカレの家まで見にきました。
「こんなふうにして作るんだ!」フーちゃんがめずらしそうに下から見上げます。
まだ巣作りが始まったばかりなので、つばめが忙しそうにいろいろなものを口に
くわえてきては壁に張り付けるようにして器用に巣作りをしています。
三人は玄関の前に座ってじっと見上げます。
近所のおばさんたちが声をかけながら横を通っていきました。
「いつ卵を生むんだろう?」ヨッタ君が聞きます。
「そりゃあ、巣ができてからさ!まだまだじゃないの?」アシカレがそう言いと、
「6月の田植えあたりじゃないかしら。いつもそのころになるとつばめさんたちが
よく田んぼの上を飛びまわっているわ」フーちゃんが答えます。
 「そうだ、6月だよ!」アシカレもそう言い出しました。
「たのしみね、あかちゃんが生まれたら知らせてね。わたし毎日見にくるわ 」
「ぼくも!」フーちゃんとヨッタ君はそういうと家に帰っていきました。
 それからしばらくすると、つばめは卵を生み、暖める時期がしばらく続きました。
アシカレは毎日巣を見ては「まだかいな。まだかいな」と言ってすごしました。
そのころ「まだかいな、まだかいな」がアシカレの口ぐせになっていました。
ヨッタ君もフーちゃんも「まだかいな、まだかいな」と言っては巣を下から
見上げます。
ちょうど田植えの時期でした。ちゃんとヒナがかえったのです。五羽かえりました。
アシカレたちは心待ちにしていたぶん、喜びも人一倍大きかったようです。
「やった!やった!」と歓声を上げて喜びました。
 
『がんばれ!がんばれ!』
 
つばめの赤ちゃん
顔を出し
静かに待ちます。じっとして。
静かに待ちます。じっとして。
父さん、母さん、飛んで来る。
ギチャ グチャ ベチャ ギチャ 大変です。
ギチャ グチャ ベチャ ギチャ 大変です。
顔ぜんたいが口になる。
「ここに入れてよ。一番に」
ギチャ グチャ ベチャ ギチャ 大変です。
顔ぜんたいが口になる。
大きな大きな口になる。
父さん、母さん、どれにする。
一番大きな口にする。
もらえない赤ちゃん、元気ない。
 
がんばれ!がんばれ!
今度は体ぜんたい口になれ、
もっと、もっと、大きな口になれ!
 
 ここのところ朝の日課になっている、つばめの赤ちゃん見物をするためにいつもの
ように玄関の巣の下までにきました。・・・一羽のヒナが巣から落ちていました。
アシカレはおどろいて、こわごわそのヒナを拾い上げます。やわらかくてこわれて
しまいそうなヒナの赤ちゃんです。
「お母さん!落ちてるよ!」といって母親に見せにいきました。
「まあまあ、かわいそうに。巣に返してあげなくちゃね」
お母さんはそういうと椅子を持って玄関にいきます。お母さんはアシカレを抱き上げて、
巣に届くように持ち上げます。
「アシカレ、そっと返してあげなさい。なん匹巣の中にいる?数えてごらん」
「うん、え〜と。一、二、と五匹だよ!」
ヒナたちがおどろいたようにして泣き出したのでアシカレの方がびっくりしました。
幼稚園でヨッタ君とフーちゃんに会って、今朝の落ちていたヒナの話をしました。
「ワア〜、わたしもさわってみたいわ!」とフーちゃんが言い出しました。
「ざんねんでした。今度落ちたらそのときね・・・」アシカレはもう落ちることは
ないだろうと思いそのように言いました。でも、翌日も落ちていたのです。
なにか弱っているような気がします。お母さんに相談すると
「そうだねえ。弱いから落されるのかもしれないね。かわいそうに・・・」
巣にもどしてもすぐにまた落とされます。結局、そのつばめの赤ちゃんは育つことなく、
雨の降る日、玄関のはしっこに落ちて、死んでいました。アシカレたちは泣きながらその
赤ちゃんの墓を裏の原っぱに作り、そっと埋めました。墓には「がんばれ!がんばれ!」
と書かれた木切れが立てられていました。
 
第四話「イチゴ狩り」
 
 きょうはイチゴ狩りです。アシカレは先日近所のお兄ちゃんたちにつれられてイチゴ狩り
に行ってきたところです。たくさん取れたので、今日はヨッタ君とフーちゃんをつれて、
またイチゴ狩りです。いつもはすぐ裏の石鎚山で遊ぶのですが、きょうはその北側に立つ
少し高い天狗山へ向かいます。村の北の斜面を登っていくと、今は使われていない病院跡の
前を通ります。以前ここは結核治療が専門の病院だった、とお兄ちゃんたちから聞いて
いました。アシカレたちはこの前を通るときは息を止めて走り抜けるのでした。
「はあ、はあ・・・。苦しかった」ヨッタ君とフーちゃんが大きく息としながら言います。
さらに斜面は続き、急になります。一歩一歩たしかめるようにして、上の道へと登っていき
ます。上の道は自動車が走れる少し広い道です。石鎚山にも通じていますが、この斜面を
登るのが一番の近道なのです。さらに斜面は続きますが、これからは上社へ登る石段を
登らなくてはいけません。さあ何段あるのでしょうか?三人はそれぞれ数えながら登ります。
途中、石段の真ん中あたりで脇にそれる獣道のような狭いわき道があり、その道へわけ
入ります。アシカレは二人に聞きます。
「ヨッタ君、フーちゃん何段あった?」
「102段」とヨッタ君が言うと、フーちゃんが「え!わたし104段だった」
「そうだろう、ちがうんだよな。おれは103だった」
そんなことを言いながら高い草をかきわけて進むと、ぱっと開けた斜面が目の前に広がり
ます。
「ここだよ野イチゴがたくさんなっているとこさ!」アシカレが自慢げにいいます。
そこは南斜面の日当りのいい場所でした。さっそく三人はそれぞれ手に袋を下げ野イチゴ
狩りをはじめます。
アシカレが野イチゴとへびイチゴの違いを説明しますがヨッタ君はよくわかりません。
「つぶつぶが丸くて、赤いのが食べられる野イチゴで、とがって色が少しだいだい色なのが
食べられないへびイチゴだよ」
アシカレは野イチゴをとってヨッタ君とフーちゃんに渡します。
「食べてごらん」
「あま〜い。うんおいしい!」二人とも大喜びです。
 
 『イチゴ狩り』
 
イチゴ狩り イチゴ狩り
へびイチゴじゃないよ
あま〜い あま〜い 野イチゴだよ
天狗山
南しゃめん いっぱい なっている
野イチゴだよ
だれにも内緒の野イチゴ畑 
イチゴ狩り イチゴ狩り
へびイチゴじゃないよ
あま〜い あま〜い 野イチゴだよ
おかあさんがジャムにするまえに
おなかいっぱい食べちゃうよ
ぼくのホッペは野イチゴみたい
赤くかわいい野イチゴ小僧
きょうは
野イチゴ食べて
野イチゴ小僧になちゃうよ
でもね 
間違えてへびイチゴ
食べちゃあいけないよ
いけないよ
へび小僧にされちゃうよ
されちゃうよ
それから
天狗山から
天狗が飛んできて
あっという間に
天狗小僧にされちゃうよ
へびイチゴの鼻を持った
天狗小僧にされちゃうよ
されちゃうよ
 
 それから三人は
「これへびイチゴ?」
「そうだよ!」
「いや、ちがうよ。野イチゴだよ!」と
ワイワイさわぎながら、たのしくイチゴ狩りをしました。
袋いっぱいになるほど野イチゴを取った三人は
日が天狗山の上にかかってきたので、家路を急ぎます。
家に帰りつくと、イチゴ狩りの話を自慢げに話しながら、
みんなでたのしく野イチゴを食べました。
 
第五話「ミツバチになったアシカレ」
 
 アシカレはミツバチになった夢を見ました。
ミツバチのアシカレは好奇心が旺盛です。今日も花を探しに飛び立とうとしています。
巣の門を出るとき、門番のミツバチさんに元気よくあいさつをします。
「やあ!いつもお世話になります。今日も暑くなりそうですから、空調をよろしく
お願いします」
「やあ!新人のアシカレかおまえさんはよく働くとの噂だが、あまり遠くへ行くなよ、
燃料不足になるからな。それと水を何処かで汲んできてくれ、冷房につかいたいからな」
「はい、分かりました。水ですね、忘れないように持ち帰ります。では行ってきます」
「ほうか、ほうか、ほうか、ほうか(訪花)今日も朝から楽しいな
 ぼくはミツバチ、ダンシング・ミツバチ
ほうか、ほうか、ほうか、ほうか今日はどこへ行こうかな?
ぼくはダンシング・アシカレ。ほうか、ほうか、ほうか、ほうか・・・」
鼻歌を歌いながらサンタは花を求めて飛び回ります。
田植えの終わった水田の近くにきたら、モンシロチョウのモンローさんに出会いました。
「こんにちわ、お元気ですか?」
「あ〜ら、アッシーちゃんじゃないの、お久しぶり。少し暑くなってきたわね、日焼け
止めクリームをかかせないわ。坊やあまり遠くへ行ってはだめよ。
この辺にハエ殺しのジョニーという凶悪犯がいるから、気をつけてね。坊や」
「ハエ殺しのジョニー?それってなんですか?」
「ああ、ジョニーさんね。ここから南西に行ったところにランの花があるのよね、
そこのレストランのコックでジョニーさんて方がいらしゃって、
その方がハエさんたちをいじめていらっしゃるみたいなの、
わたくしには関係ございませんことですけどね、ホホホ。坊や行ってはいけませんよ」
そう言われると行きたくなるものです。さっそくアシカレは南西に向かいます。
すぐにランの香りが漂ってきました。もう先輩のハチが密を取っています。
「こんにちわ、いい日ですね。美味しいですか?」
「ああ・・・」返事がありません、忙しそうです。アシカレは今度は他の花さんたちに
聞いてみます。「ちょっと噂で聞いたんですが、ジョニーさんて方がハエさんたちを
いじめているそうですが、本当ですか?」
「あ・あ・そのことね、ジョニーさんはいい人よ私たち花にはね、ただハエさんたちには
 厳しいかな?それもしかたないと思うわ。レストランのお客さんが嫌がるから、
しかたないわ、ハエさんて汚いもの。でもミツバチさんは好きよ!
見ためは似てるのにね?」
「違いますよ、全然違います。わたしたちは花粉と密の狩人です。ハエさんたちは腐敗の
狩人です。全然違います。見ためも違います。もう困りますよ、パンジーさん友達を間違
えないでくださいよ」
「そうお?あなたも気をつけなさいよ、ハエさんに間違えられないようにね、ジョニーさ
んて二丁拳銃なんだから、ハエさんなんてよくやられているわよ!」
「二丁拳銃?なんですか?」
「そこの調理場の窓から覗いて見てごらんなさい、コックのジョニーさんがハエ退治
をしているはずよ。見れば分かると思うわ、でも決して中に入っちゃいけませんよ、
あなたもやられてしまいますからね」
「パンジーさんそこからだと中は見えないでしょう?
どうしてそんなこと知っているんですか?」
「あ・あ・それはね、ネットでなんでも分かるの。便利よ、バードネットに昆虫ネット
あなた知らないの?ミツバチネットは知ってるでしょう。それと同じよ。鳥さんや昆虫さん
と話をしてつながるの。だからここにいても世界中の情報が手に入る訳なの便利よ」
「そうか、ネットはぼくたちミツバチだけじゃないんだ。物知りだねパンジーさん。
ぼくたちミツバチはダンシング・ネットなんだよ。知っていた?」
「ダンシング・ネット?それって何、知らないわ、教えて」
「いろいろな情報をダンスで仲間に知らせるんだよ。あそこの花が美味しいよとかね
そんなことをこんなふうにして踊るんだ、見て!」
そう言いとサンタは腰を振り振り、腰振りダンスを始めます。
「面白い、面白い、君は面白いミツバチさんだね。名前はなんて言うんだい?」
「ハイ、ダンシング・アシカレって呼んで下さい。パンジーさん」
「ぼくはおしゃべりリンクっていうんだ、よろしくね。ダンシング・アシカレさん」
「あ!ジョニーさんがタオルを両手に持って、ハエさんを狙っていますよ!
おしゃべりリンクさん。ア!早い一瞬にしてハエさんがやられましたよ、
これは早い・・・。分かりました。二丁拳銃の意味が、そうですか、なるほどね・・・」
「そうだろ、あの濡れタオルが両方からくると逃げれないだろう。おまえさんも気を
つけなさいよ、でもレストランに入らなければ大丈夫だよ。外ではジョニーさんは
決して二丁拳銃はしないから、本当はやさしい人なんだけどね。
ハエさんには凶悪なんだ、だからハエ殺しなんて言われるの」 
「でもハエさんも生活がかかっているわけだから、かわいそうだよ。
あ!また狙われていますよ、あのハエさん、危ない!」
そう言うとアシカレは窓のすき間から中に飛び込みました。
そして、ジョニーさんの前を素早く通ります。「バシ!バシ!」連続攻撃です。しかし、
一瞬ジョニーさんのタオルが狂いました。ハエさんはそれで助かりました。
アシカレのおかげです。
「危なかったね。早くここから出たほうがいいよ。ハエさんまた狙われるよ」
「でも、ここの料理美味しいんだよ。癖になる味なんだ」
「だめだよ!早く、また狙っているよ、早く!」
「バシ!バシ!」とまたきました。アシカレはハエさんを窓のすき間から押し出すように
して逃げました。
「は〜あ、危なかった。ハエさんきみの友達もやられたでしょ、ここはあきらめなさいよ
他のレストランにしたら?」
「うん、そうだね、分かったよ。ありがとう助けてくれて。
きみの名前はなんていうの、ぼくはハエのカレーていうんだ」
「カレー?変な名前だね。ぼくはミツバチのダンシング・アシカレていうんだ」
「カレーね、それはねカレーが好きだからさ。ここのレストランは美味しいカレーを
出すんだよ。ところでダンシングってなんだい?」
「ああそれは、これさ」アシカレは得意なダンスを見せます。
腰を振り振り、羽根を震わせ、ダンスを踊ります。カレーはゲラゲラ笑い出します。
最後はターンを決めてハイポーズ。
「面白い、それだけ踊れるんなら、ダンスフェスティヴァルに出場できるよ。
いや出場すべきだよ、是非たのむよ。俺応援するからさ」
「ダンスフェスティヴァル?何それ」
「知らないの、毎年夏に行なわれる昆虫たちのダンス大会さ。去年はモンシロチョウの
あのモンローさんが最優秀賞を取ったよ。フェロモンダンスが得意なんだ、あのモンロー
さんは色っぽいだろう。君のダンスは奇抜だよ、コミック・アクロバットダンスって
とこかな、ユニークでいいよ。なにか生命の源を感じるよ、
その一生懸命さがなんともいいね、僕好きだよ」
「そう、そんなに褒めてもえるとうれしくなるよ。ダンスには少し自信があったんだ。
でも許可をもらはないと出れないよ。ぼくたちミツバチは何をするにも女王バチの許可が
いるんだ。許可が出るかなあ?だれか女王様に進言してくれないと出れないよ」
「進言ね?誰がいいんだろう?」ハエのカレーが悩んでいたら、その話を聞いていた
おしゃべりリンクが「それならオオスズメバチのボスがいいよ」
「なんだってオオスズメバチ!だだめだよ、そんなことしたら、大事だよ。
オオスズメバチはぼくらの天敵だよ。知ってるの?」
「ああ知ってるよ、だからいいのさ。昆虫ネットを使えばすぐにオオスズメバチの
ボスに伝わるから、そうしたらぼくの方からお願いしてみるよ。ミツバチの女王様に
許可を出してくれえるように進言してもらうよ。心配しなさくても大丈夫。
わたしに任せなさい、いざとなったらモンローさん、それにダンスフェスティヴァルの
審査委員長のお月様にも間に入ってもらうからさ」
「なんか心配だなあ?そんなにしてまで出なくてもいいよ。ぼくこうみえても気が小さい
んだ。女王様に叱られそうだよ・・・。気が重くなるよ」
「大丈夫自信持ちなさい、あなたのその尻振りダンス素敵だよ。わたしも大好き」
そう言っておしゃべりリンクはダンシング・アシカレを励まします。
丁度そのときモンローさんがパンジーさんに会いに来ました。
「あら、ミツバチの坊や来ちゃあいけませんよって言ったのに、来ちゃったのいけな
い坊やだこと、ホホホ」
「丁度よっかた、モンローさんこのミツバチのダンシング・アシカレさんを今年のダン
スフェスティヴァルに推薦したいのですが、よろしいですか?」
おしゃべりリンクさんがそう言うと
「そうあなたがそう言うのなら間違いないと思うけど、一度見せてもらえませんこと、
今年わたくし審査委員にならせてもらったのよ、ホホホ」
サンタはさっそく例の腰振りダンスを踊ります。モンローさんは目をパチクリさせながら
驚きの顔で見ていました。最後は手をたたいて「ブラボー!ブラボー!」を連発して
います。「す〜ばらしいは、ブラボー!よ。わたしも推挙しますわよ、坊や。ステキ!」
褒められると嬉しいものです。なんだか勇気が涌いてきます。
 よっし自分で女王様に頼もうと心に決めます。
「ぼく自分で女王様に頼んでみます。おしゃべりリンクさんありがとう。カレーさん
モンローさんありがとう。なんだか勇気が涌いてきました。また何かあったらよろしく
お願いします。今日は楽しかったです。ぼくそろそろ仕事に行きます。水も汲まなくては
いけないので、今日はこれで失礼します」
「礼儀ただしい坊やだこと、いいわよ坊や、頑張りなさい。応援しますよ、ホホホ」
モンローさんはそう言うと投げキッスをします。アシカレはお辞儀すると急いで蜜探しに向
かいます。梅雨の合間の晴れた朝の出来事でした。
しばらくするとアシカレは蜜と水を持って巣に帰りました。
「門番さんこれでいいですか?だいぶ暑くなってきましたが、水はこんなもんでいい
 
 ですか」そう言うとアシカレは急いでみんなの所にいき、収穫ダンスを始めます。
アシカレの最も得意なダンシングです。なかまのみんなも集まってきてアシカレのダンスを
目と耳で聞いてます。アシカレは歌いだします。今日の朝の出来事も歌にして伝えます。
それを聞いていた長老さんが「アシカレちょっとこっちへ来なさい。話があるから」
「おまえはダンスフェスティヴァルに出場したいそうだな?本当か?」
「はい!出来ることなら出場したいです。女王様が許可してくださればのことですが」
「そうか、それは難しいのう、女王様は大変忙しいお方じゃ、おまえの話など聞かれるこ
とは出来ないじゃろう。モンローさんの話では次の次の満月の夜、菜の花畑の広場で真夜
中そのダンス大会が開かれるそうじゃ。おまえに是非出席してほしいそうじゃ。先ほどこ
の花粉を持ってあいさつに来られたわい。おまえのそのダンスが気にいったそうじゃ。
そこでじゃ、これはここだけの秘密ということで、いいかその日わしがおまえを夜の
門番に使命するからわしと門番をするのじゃ、そして、いいか真夜中に近づいいたら、
そ〜と抜けて、そのダンス大会に出席するのじゃ。いいかこれはおまえとわしの二人だけ
の秘密じゃ。モンローさんにはいろいろとお世話になっているのでな・・・」
「いいんですか?そんなこと。ばれたら大変じゃないですか?」
「大丈夫、わしがいいと言ったらいいのじゃ。なにも言わずにダンスに励みなさい。
出るからには優勝するつもりで踊るのですよ。ミツバチの代表のつもりでな、ははは」
それからアシカレはいままで以上に腰振りダンスに励みました。
 早いもので、今日はそのダンスフェスティヴァルの日です。
アシカレは朝から仕事が手につきません。パンジーのおしゃべりリンクさんに会っていろ
いろ情報を聞かせてもらいました。今年はいつになく激戦になるとの予想だそうです。
最大のライバルはアゲハチョウのフェロモンダンスだそうです。でもリンクさんはぼくが
優勝するだろうと応援してくれました。
真夜中に近づいてきたら、長老さんが近くにきて
「さあ、安心して行きなさい。もしかしたら女王様が見にいかれるかもしれないそうじゃ
そうなったら名誉なことじゃ。ミツバチダンスのすばらしさを多くの昆虫たちに知っても
らうんじゃ。頑張れ!アシカレ、フレー!フレー!アシカレ」
「わかりました。頑張ります。応援ありがとうございます。では行ってきます」
アシカレが飛び立とうとしたら、仲間のみんなが門の入り口に集まり、いっせいに
「頑張れ!アシカレ」を合唱してくれました。勇気百倍アシカレは元気に菜の花畑の広場
へ向かいます。
会場はもう多くの虫たちでいっぱいでした。ライトアップは蛍さんと今日の審査委員長
のお月様、演奏担当はキリギリスとコオロギさん。司会はテントウムシさんです。
審査委員席にはモンローさんもいます。ハエのカレーさんも応援にきてくれていました。
参加者の紹介が順次行なわれます。アシカレの番になると、一段と大きな拍手です。
会場を見渡すと、なんと女王様と長老さんそれに仲間たちが来てくれていました。
アシカレはもう感激してしまいます。少し緊張していたら、モンローさんが近くに来て
「リラックス、リラックスよ」と声をかけてくれました。
次次にダンスが踊られていきます。アゲハさんのフェロモンダンスは色っぽくつややかな
踊りでした。次がアシカレの番です。まずポーズを決め、歌を口ぶさみながら、
踊り出します。するといっせいに会場から手拍子が出てきます。その手拍子に合わせ、
激しくせつなくアシカレは本能のまま舞台狭しと踊り回ります。生命の躍動を感じさせる、
すばらしい踊りでした。踊り終わると会場をうめつくした虫たちがいっせいに立ち上がり
拍手の嵐です。「ブラボー!ブラボー!」歓声があがります。モンローさんが歩みより
サンタに抱きつきます。お月様も満足のようです。いちだんと強くアシカレに月光を降り
注ぎます。女王様も喜ばれています。長老さんは感極まって泣き出しているようです。
アシカレはこんなに感動されるとは思ってもみませんでした。
「ありがとう、みんな!」達成感で胸が一杯です。「ブラボー!ダンシング・アシカレ」
会場から声が上がります。ダンスフェスティヴァルは朝方までにぎやかに続きました。
 
 朝起きたらおねしょをしているかと思い、あわててふとんの中をのぞきましたが、
今日は大丈夫でした。なんて夢なんだろう?はっきり覚えているのです。
「ハエ殺しのジョニー」が出てきたときは一瞬ちびりそうでした。つい先日このために
おねしょしたところでした。おじいさんに夢の話をしたら「おまえの先祖はミツバチ
かもしれんなあ?」アシカレはきょとんとして聞いていました。
「おれの先祖がミツバチ?」アシカレはヨッタ君とフーちゃんにこの話をしてみました。
「おじいちゃんが言うんだから、そうじゃないの?カワイイわ!」フーちゃんが目を
丸くして、うれしそうに言います。「人は猿から進化したんだから、ミツバチから人間には
なれないよ!おかしいよ」ヨッタ君が真剣になって言います。
「中国にいるおばあちゃんがフーは白蛇の生まれ変わりじゃ」と言ってたわ。
三人はそれぞれ思い思いのことを言い合って分かれました。
アシカレは思いました「白蛇って、何だ?」
 
第六話「台風と便所と錦鯉」
 
 昨日からの大雨は台風の影響です。このまま雨が続けば明日は学校が休みかもしれない
と期待を胸に雨戸を確かめて便所に行きます。アシカレの家のトイレは縁側で続いた部屋
の外にあり、その縁側には雨戸がついていなくて、横雨のときは縁側の板が濡れてしまい、
爪先歩きで急いで便所にかけこまなくてはいけません。
それに雨の日の大便は気を付けなくてはいけません。
ぽっちゃりとおつりがくるのです。
 
 『雨上がりの汲み取り式便所でのおつりの付かない方法』
 
    まずティシュを下に落す
    ウンチが落ちるあたりにティシュを落す
    うまく落ちなかったら出来るまで繰り返す
    うまくティシュが落ちたらその上にウンチを落す
    これならおつりはきません
    懐かしい汲み取り式便所
    雨上がりの便所はおつりもたくさん
    思い出もたくさん
     幼いころを思い出す
 
 なにわともあれ村は毎年台風の通り道になっていました。
アシカレもなれたもので床下浸水ぐらいなら驚きもしません。
でもこの時の台風は少し違っていました。
 
 『台風と錦鯉』
 
なにわともあれ村を流れる山田川
台風の季節になるとよく氾濫します
ある台風のとき石槌山の土砂が崩れ
山田川の流れをせき止め
山際の地区は床下浸水
アシカレの家から見える高台の家は池が壊れ
逃げ出した錦鯉が氾濫した山田川を越え、水に沈んだ道路をすいすい泳いでいました
アシカレはヨッタ君といっしょにその大きな錦鯉を捕まえたのですが
家にはそんな大きな鯉を入れる池がありません
タライぐらいの池はありましたが
便所のすぐ脇にあるせいか
よく便所虫がもぞもぞと泳いでいたのです
その時はすでにペンキの筆洗い場になっていました
アシカレとヨッタ君はしかたなく水の引いた川へその錦鯉を戻しました
あの錦鯉は海へ行ったのでしょうか?
台風の季節になると
いまもあの錦鯉を思い出すアシカレでした 
 
 
「第七話 童話を読んで感動」へ進む。