ボロボロの木の下で  
 
ポーさんの家では、将来息子たちといっしょに
暮らしたいと思って、無理をしてニ世帯住宅を建てました。
その新築の家が不審火で出火、身内で消そうとして
かえって火の手が広がり、消防を呼んだ時には
すでに遅く、全焼してしまった。
 
兄弟は家族のため高校を中退した。
兄は靴職人の道へ、弟は塗装工に成った。
兄は学業が優秀だったので、先生たちは
大変残念がりましたが。本人はさほど人生に
ついて考えてなく、まあこれも一つの選択か
といった程度にしか考えていませんでした。
弟は学校が嫌で嫌でしかたなく、
これみよがしに元気そのものです。
 
弟は不良仲間と一緒になり、
おじさんの塗装機材一式をただ同然
で借り、仲間たちと要領良く仕事を始めた。
 
兄は生真面目に靴作りの仕事をしていた。
ある時、お客の一人から「兄さん、こんな仕事
していても、一生家なんか持てませんよ。俺と
いっしょに旅をしょう。兄さんには人が持って
いない才能がある。わしには分かります。
その才能を生かしてみませんか。家ぐらい
簡単なものさ。」以前の彼なら、そんな話しには
耳もかさなかったけれど。今は現実の生活に
幻滅を感じていたので、その男の話しに乗ってしまいました。
家族にはいい仕事が見つかったので、そちらに変わると
だけ手紙で知らせた。
その口のうまい謎の男と旅に出た。
 
弟は世渡り上手で、頑張り屋だった。
いい棟梁に目を付けられ、塗装工から大工の棟梁の弟子
になった。そこで厳しく仕事を仕込まれ、
めきめき腕を上げ、3年もすると一人前の大工になり。
家族を養うようになった。
 
兄は謎の男と客船に乗り、男の手伝いをしていた。
男はカードの詐欺師だった。兄は相手のカードを
後ろから見て、男にサインを送った。詐欺の相方をしていた。
ニ人で組み大きな客船から客船へ渡り歩いていた。
兄は美男子だった。いたるところで可愛がられ、
もてた、いつしか酒も覚え、一人前の詐欺師になっていた。
男がある船で客に大麻を売りつけようとしたら、
その相手がマフィアのボスで、逆に縄張りを荒されたと
痛い目にあっていた。兄は近くにあった暖炉の
大きな火バチを持ってマフィアのボスを一撃で倒した。
取り巻き連中の子分がいっせいに反撃してきた。兄と男は
すぐさま川へ飛び込み、息絶え絶え対岸にたどり着いた。
 
かなりの重傷です。男の姿は見えません。
大きな木の下で意識が薄らいでいきます。
その木はボロボロの木といわれる不思議な木でした。
ベニツチカメムシが巣を作っています。
緑の葉にびっしり、すずなり状態です。
みんな一つの家族です。
その中の一匹が彼の額に降りてきて、彼の意識を読み取るように
しばらくじっとしていました。
彼が完全に意識を失うと、そのカメムシは飛び立ちました。
なぜか、目指すは彼の住んでいた町です。
幾日も幾日もかかり彼の家族がいる町にたどり着きました。
 
弟が棟梁になり、家族の家を建てています。
その柱にへばり着いたカメムシはじっと弟たちを見つめています。
弟はそのカメムシに気付き捕まえました。
昔の彼なら一撃で殺していたところですが。
今は人の上に立ち、相手の気持ちが分かる優しい人間になっていたのです。
カメムシを森に返すと、しばらく、その後を見ていました。
消息の無い兄を思い出したのです。
昔、いっしょに森に行きカメムシを見つけ、殺そうとして
兄に止められたことを思い出したのです。
子供が彼のところに来て
「ご飯だよ。」と言ってます。彼の息子です。
 
カメムシは森へ返りながら
泣いていました。
心の奥で無くしたあったかい思いがよみがえります。
 
その時、兄は意識を取り戻しました。夢なのか?。
カメムシになって昔なつかしい所へ飛んで行ったような気がしました。
目頭からあついものが込み上げてきます。
家に帰ろう、帰りたい。
大声で「助けて!。」と叫びました。
天に届くほど大きな声です。
祈りました「私の罪をお許し下さい。どうか家族の所へ私を連れて行ってください。」
 
しばらくするとボロボロノキからいっせいにベニツチカメムシが飛び立ちました。
彼の思いを伝えるかのように、彼の町へ向かっています。
 
夕陽に赤く染められたベニツチカメムシは紅に燃える鬼火のようでした。
 


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