(V)4章化石エネルギ−枯渇とそれで生ずる社会現象
4-1 利用されるエネルギ−の種類
産業革命から使用され始めた石炭,石油,天然ガスは、いずれも太古地球上の太陽エネルギ−を取り込める単細胞又は植物が繁茂し、動物が食しそれら動植物の屍骸が積もり地中深く変成されて生じたもので、石炭,石油等を使用するのは太古の太陽エネルギ−をまとめて使用していることになる。数億年かけて地下に溜め込まれたものを200〜300年で使い果たしそうである。
ただし石油,天然ガスの成因については異論があり、地球が生成した時内部にメタンガスが保有されていた、又は炭素が地球の水素と地中深く高圧高熱によって変化してできたもので、今でも内部から湧き出してくるとの説がある。それによると数百年の寿命すら可能とする。しかしこの説は色々の角度からあまり取り上げられず、最近は否定に落ち着いたようである。
成因がどちらにあるにしろ、後でふれるように油田発見量が減少している事は否定できず、採掘技術の向上があっても限度があり現在予想されている寿命が変わることは考えられない。
他に使用出来るエネルギ−としてウランと量は少ないが水力電気がある。また過去の生物由来のメタンハイドレ−ドが塊として相当量深海にある。深さはともかく集めて海上にまとめるのが難しい。その過程で空中にメタンガスを漏らし温暖化の手助けをする危険性もある。
4-2 化石燃料の寿命
化石燃料とウランはいずれも寿命がある。2003年の使用状態で進めば石油40〜50年,天然ガス・ウラン70年,石炭が200〜300年と言われている。石油・天然ガスは新しい発見がありこれより長くなると思はれるが、一方中国・インド・ロシア・ブラジル等人口が多く発展も著しい国で使用量が急増しているし、後進国も燃料の森林が消滅の傾向著しく石油・石炭への依存が高まるのみならず、自動車の使用はどこでも当然の流れとなり化石燃料の需要は増える一方で、化石燃料の寿命は短くなる方向となる。
4-3 原子力の問題
使用したウランを再処理して高速増殖炉で使用すれば4000〜5000年使用出来るかもしれない。しかし高速増殖炉は危険性が高く各国中止し最も開発が進んだフランスも中止したが、日本では開発の姿勢だけはとっているが再処理プルトニュ−ムが溜まるばかりで成功の見通は少ない。また普通のウラン原子力発電を含めて500年1000年と考えれば放射性廃棄物の処理が出来ないのではないか。
核融合が成功すればエネルギ−寿命は解決するが技術的に高速増殖炉よりもっと難しいと思われ設備も巨大な物になりそうである。原子力とゆうものは人間の制御の外にある。
4-4エネルギ−枯渇が本当に起こるのか
石炭,ウランの地下資源が新しく発見され寿命に影響する話題は少ないが、石油,天然ガスについては年々新しく埋蔵が判明し、採取法の進歩でそれまで利用出来なかったものが汲み上げられている。石油,天然ガスのほうが使い易いということだ。採掘は1945年以後盛んになりその速度は需要より大きかった為、可採年数(石油の寿命)は年々増加し減少していないことをFig4-1で見ることができる。

Fig 4-1
小出裕章氏koide@rrkyoto-uao.jp提供
油田の発見が盛んに行はれたのは第二次大戦後中東が主だったが、1970年以後Fig4-2にしめすように少なくなり今期待されているのはカスピ海であるがFig4-3各国埋蔵量の図にあるイラン,クエ−ト並と言われる。発見量が減少し使用量(産出量)が増加しているので早晩可採年数は減少に転ずると思はれる。

Fig
4-2石油の発見と産出量
2000年の埋蔵量は1o31Gbバレル=1兆310億バレル
Tony boys,Murry Duffin,Colin Campbell,Jean Lahere’re氏 提供
産出に終りが来る最大の理由は、石油,天然ガスが太古の生物が取り込んだ太陽エネルギ−の遺産が元来有限の物だからだ。
次に埋蔵量の分布を調べると、石油がFig4-3,天然ガスがFig4-4で石油はサウディアラビア,イラク,UAE,クェ−ト,イランの中東地区で63%を占め新しい発見もこの地区で多い。最近有望視されているカスピ海もこの地区の続きでUAEと同じ位埋蔵されていると言われる。天然ガスはイラン,カタ−ル,サウディアラビア,UAE,その他の中東地区合わせて34%、旧ソ連地区で36%と両地域で70%も占め石油,天然ガスとも
偏在している。 (尚Fig4-3,4-4は前田高行氏ホ−ムペ−ジ「中東経済を解剖する」より引用)

Fig 4-3

Fig4-4
第二次大戦後エネルギ−の消費が増加した様子Fig4-5.4-6に示した。

Fig4-5

Fig4-6
注目するのはFig4-6日本のエネルギ−使用量特に石油使用量の増加が1955年から1975年にかけて急増している。世界の使用量Fig4-5の1965〜2000年まで一次エネルギ−の増加は約2.4倍(石油だけでも2.4倍)であるのに、日本の1955〜1975年では6倍(石油だと約30倍)と急増している。しかし日本の1975年以降は1.5倍(石油だけでも1.1倍)であり、同時期1975〜2000年の世界エネルギ−増加はFig4-5より1.5倍(石油だけで1.4倍)とほぼ同じである。日本が先進国になったという事である。
以上の状況が現在の後進国または中進国で当然起こるが、中でも人口の多い中国,インドが先進国並になったらどうなるか(現在なりつつある)Fig4-7で示したい。

Fig4-7
インド10億中国13億の人口を有し共に発展が急激である。Fig4-7の中国一人当たりエネルギ−石油換算で年0.7トンが日本並に4.1トンになれば、年間エネルギ−消費量は石油換算で年53.3億トンとなり、インドも一人当たり年0.3トンが4.1トンになるから年間41億トンの石油を消費する事になり、インドと中国で年間94.3トンの石油換算エネルギ−を使用することになり、Fig4-7の2002年の世界エネルギ−使用量石油換算94トンはインド,中国の94.3トンを加えて倍増する。Fig4-5で世界のエネルギ−使用量が倍増するのに30年かかっているが、インド,中国のほかにアジア,中東,南米すべてに消費が高まり倍増するのに15年も要らないであろう。 しかも新しい油田発見はFig4-2の様に減少しているので需要が追いつかず、Fig4-1のような事は成立しなくなり枯渇の日が早まるだろう。今アメリカのみならずロシア,中国も石油天然ガスの利権を必死になって追求している。 アメリカが核をもっている事がほぼ確実な北朝鮮でなく、持っていない公算の大きかった(事実なかった)イラクを攻撃し中東の制圧を狙っているのは、石油資源が近い内に無くなる前兆であるとも考えられる。
新しい油田ガス田の発見と採取技術の向上は今後も続くけれども,中後進国の生活向上の早さはこれを打ち消す作用をする。大雑把に言えば100年以内に石油,天然ガスは無くなり50年以内にはっきりした兆候が生ずると推定される。 兆候が見えただけで社会,経済に大変動をおこす。石炭はまだしばらく供給されるが、石油,天然ガスの消失は致命的である。
4-5 化石燃料に基いた文明への批判
4-4で化石燃料の寿命を50年後その兆候が生ずると推理した。需要の増加を過去の遺産がうめる事はできず、いかなる技術を用いても化石燃料石油が200年も300年も使えると考えるのは空想に近い。化石燃料による文明は早晩滅亡の運命にある。しかも我々人類が目標とする世界は100年〜500年のように短いものではなく、少なくも1000年以上の未来を見据えて自分の国家,社会を形成するものである。
日本自体既に1500年以上の歴史と文化を持っており、今後も永く子孫に伝えて行くだけの価値を作らねばならない。それは化石エネルギ−によって生ずる豊かさによって左右される問題ではない。しかしエネルギ−による豊かさも人々にとって重要なことであり、化石燃料が無くなったらどうなるか考えてみよう。
産業革命前日本で言えば徳川時代の生活になると考えればよい。農耕生産の能力も低下し(耕運機,化学肥料も使えない)、地球で人口60〜90億人を養うどころではなく5〜6億人と1700年代に逆戻りし、日本で言えばせいぜい2000〜3000万人そこそこの人口しか養えない。自動車,高速鉄道もなく多少の鉄道と通信機能が残るだけとなろう。日常的に貧しい生活---徳川時代よりは近代化された程度に落ち込むことになる。
勿論100年後突然そうなるのではなく、50年後くらいから問題が生じ代替エネルギ−開発が進められてもそれまでの豊かさの感覚からぬけきれず、開発は順当に行かず化石燃料争奪の混乱と低迷する経済が人口減少を招き、希望の見えない時代が長く続くと思はれる。石炭はその不幸を緩める作用はするが石油,天然ガスの利便性を埋めきれず、その石炭もまた早晩消失することを気づいているからそれほど安定はしない。
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