(W)2章 豊かさと軍事力
2‐1豊かさ
豊かさも成長も望ましいが最終目標ではない。目標は未来に亘って侵されず 自由に生き続けることである。従って自分たちの住む環境の変化を予測し続け、最も有利な選択をとる必要がある。状況は固定的では無く、しかもその予測にも誤ることが多い。油断無く変化を絶えず確かめて先手を打つ必要がある。
現在の豊かさは数千年前人類の石器等道具の使用、火の使用に始まり農耕の発見による生活の安定、文字の使用・宗教・哲学更には科学の発見と化石エネルギーの使用が絡んだ産業革命が起こって弾みがつき、激しい戦争が伴ったが人類の生活は豊かになった。
この先に破綻が待ち構えている可能性があり、避けるにはいかなる未来を期待すべきであろうか。
総合研究大学院大学教の池内氏の説によると人類最初のハイテク革命は火の使用で40万年前のホモエレクトスに始まり、その1/40の.1万年前に農業革命を達成し社会を形成文字、学問、宗教、哲学、芸術と文明を生み出した。更にその1/40に当る250年前産業革命が起こり化石燃料を原動力としてから生産力は飛躍的に増大した。更にその1/40である6年前コンピューターによる情報革命が生じたとする「技術革新40分の1の法則」を述べられ、その急進する革新に終止符を提案されている。氏の提案理由は存じてないが、技術革新が人類を豊かにする事は明らかであるが、それが人類を将来に亘っての安定を担保するかどうかは明らかではない。現在地球上の人類には食物、水にも事欠く人々も多く豊かさの格差は甚だしくこれを調整する案も見通しも発見されていない。 豊かな利便性が複雑化した社会を脆くして崩壊する危険性があり、いったん崩壊すると複雑化した社会は滅亡に向かう恐れがある。
この問題を更に複雑にするのは成長と豊かさに決定的影響を与える化石燃料枯渇問題がある。元来有限であり大きな油田の発見は2次大戦前後に中東に集中し現在新たに発見され埋蔵量が増加するより、消費量のほうが多くなりインド・中国の消費はそれに拍車をかけている。投機のせいもあるが最近年々石油の値段があがり続けるのは需要に供給が答えられないからで、未来の不安が後押ししている。
もう一度人類豊かさの歴史を振り返ってみよう。
A 200~300万年前 道具を使用
B 50万年前 火を使用することを知り食物を調理して食べやすく美
味しくし、それまで食べられなかった物も食料にでき
世界が広がった。
C 1万年前 農耕・牧畜を発見し定住して計画的に安定して大量の食
物を得られるようになった。
D 5000年前 文字の発見、数える、四季のルール、コミニュケーショ
ンの組織化即ち社会制度(国家)の形成。まとめて文
明の始まり文学・哲学・宗教等
E AC1500年 科学の発見
F AC1750年 産業革命
産業革命は乱暴に言えば科学に石炭エネルギーが結びついて豊かさが急拡大し更にエネルギーは石油に代わり、拡大の一途をたどり人口も豊かさもエネルギー使用量に比例して急速に増大した。
自由競争の見えざる手によって世界は制御された。地球は資源も未開の土地も無限のごとく思はれ、米英を先頭に成長し敗者復活も可能で18世紀より20世紀は希望の世界であったが、動乱の世界でもあり産業革命に乗れなかった国は支配をうける運命となった。
20~21世紀になると地球の資源も土地も人類の成長と消費を受け入れる限界が見え始めた。排出するCO2の増加から温暖化が成長へのストップをかけ始めている。エネルギーの枯渇の兆しもインド・中国の消費急拡大で原油価格の年々の急騰があり無視できなくなった。
この今の環境で18世紀からの構造では敗者復活が難しくなり、努力と成果の連鎖が失われ貧富の差が大きくなって社会の希望が失われてゆき、社会をささえる倫理も崩れてゆく。
石油の枯渇は数十年後だが影響はすでに始まり年々強まり数十年で底へ着くものでゆっくり対処を今すぐ始めるのが賢明だ。成長が閉ざされた世界で成立する豊かさと規律を求めねばならぬ。
1798年産業革命を始めたイギリスでマルサスの人口論が人口増のほうが食料増より大きいと述べ問題となり同時に、その頃展開していた産業革命に使用する石炭(視野はいぎりす国内)の枯渇も問題になっていた。その後アメリカ大陸の開発と石炭・石油が大量に発見され問題は棚上げされた。しかし今度見えた成長の限界は本物で逃れる余地はない。将来に亘って安全に生き延びる方法を模索することが希望であろう。
2‒2 軍事力の限界
軍事力の優れた国が劣った国を制御するのは数千年前から常道であるが、世界の人口が60億を超え資源・食料・耕地・海産物に限界が見え、地球温暖化により成長に疑問が生じこの様な敗者の逃げ場と復活の余地のない世界では軍事力の効果がなくなる。
よい例が現在アメリカのイラク攻撃である。イランの反米化を抑えるためてフセインイラクを援助することで成功したが、その後フセインイラクがアメリカの意に沿わない行動をとったので、中東石油を握るため2003年3月20日イラクを軍事攻撃忽ち制圧したが、その後4年経っても治安が収まらず費用と死者が増えるばかりで、世界の軍事超大国アメリカの事実上の敗北となる恐れがある。勿論イラクの勝利ではないがどの様な結末になるか全く予測がつかない。しかし軍事超大国アメリカの意に沿う結果にはならないであろう。
アメリカ以外でも崩壊したソ連の1979~1989年に行われたアフガニスタン侵略作戦や、アフガニスタンで2001年より続いているアメリカとヨーロッパ諸国軍事力がタリバン・アルカイダ掃滅作戦に成功していない。その他ロシアのチェチェン問題、中国のチッベト・ウイグル等制圧しているかに見えるが不安定要素であり長期的には弱点である。
17~19世紀ゲルマン人の子孫ヨーロッパ人が他の大陸先住民を征服し植民地を作ることができたのは、先住民の視野が居住している区域に安住し遠くの世界を追求交流する行為が無かったからであり、遠くから未知の世界を求めて来たヨーロッパ人の活力に押され、かつ知の世界にも領域を広めて得た科学知識から生まれた銃火器、更に18~19世紀には産業革命を背景とした大砲艦船の強化があり、先住民は犬猫の様に扱われた。
その後20~21世紀に生き残った先住民(日本人、中国人を含む)に知識が伝えられ文明化が進み、ヨーロッパ人の自由にならなくなった。
中東アラブ人は7~8世紀よりギリシャ・ローマの文明、インドの数字等を受け進展させ化学・医学・代数などゲルマン人のローマ帝国への侵入後の混乱の時代世界文明の中心で、1100〜1270年の十字軍によりヨーロッパにその文明が伝はりルネッサンスが起こり、科学の発見、産業革命と連鎖しヨーロッパ人がアラブ世界を追い越してきた歴史がある。現在後進国の制御は難しくなっているが、特にアラブ中東は難しい。
充分な知識を持ち自尊心を持つ民族は軍事力が小さくても強大な軍事力で左右することはできない。過去に強大な軍事力が事を決したと見える裏には、豊かな知識と経済力を有し理性と規律に富む集団であったのが常である。
強大な軍事力があっても世界認識に誤りがあり、正確な知識を欠いた場合強大な経済力を併せ持っても見当はずれの方向に力が消費され負ける可能性がある。
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3章ヨーロッパ文明の限界
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