PARKER  VP

      
(1962年〜1964年)

      

     
       
  「青と黒のVp」   「VPの構成」   「VPのニブ」  

 これまで、パーカー社は、数字による命名が多かった。ところが「パーカー
VP」では、新たな機能を持たせ、その機能の頭文字を商品名とした。「VP」は、Very  Personal の略で、ペン先の筆記角度が自由に調節できるようになっており、個々の書き癖に合わせられるになった。この機能は大層重宝された。また、クリーン・フィラーと呼ばれるインク吸引方式の導入である。インクフィラーの工夫改良がなされたのである。このクリーン・フィラーは、コンバータとカートリッジの中間のような機構を持たせたのである。フィラーを外してインクを吸引し、カートリッジのようにペンに取りつけるという方式である。ペン先やペン芯、ひいては手を汚さずに済むという便利なきのうである。しかしながら、このフィラーの先端部分は細くなっており、折れやすくて壊れることが多く、改良された「パーカー 75」に引き継がれ、結局2年で生産が打ち切られた。生産期間が短かいために種類も少ない。作られた色は、黒、青、赤、灰の4色のペン軸で、キャップも金張り及びラスタロイ製の2種類だけであった。
 
  パーカーVPの広告   「カートリッジの特徴を持つインクフィラー」   「細い首部分が難点である」  

 発売当初は10ドル(1ドル=360)という値段であった。現在はその希少価値からコレクター間では高値で取り引きされている万年筆となっている。
 このペン先の角度が変えられるという機構は、
1964年から発売となった「パーカー 75」に引き継がれ、以後16年間に、1100万本売り上げがあり大ヒットしたことは、前にも紹介したとおりである。
 
カートリッジの特徴を持ったインクフィラーは、当時としては画期的な工夫がなされた商品であったが、「パーカー 75」では、カートリッジとエアロのインクフィラーになっている。ペン先が簡単に取り替えられる機能は、パーカー 75や、45に受け継がれている。
 

  追 加  (07'  06- 21 )
「1960年代の広告」 「VPのGift-Box」 「珍しいデッドストック」

 1960年代は、実に悠長な時代であったのであろう。それとも、「パーカー」というネームバリューが強力であったのだろうか。と言うのは、「Parker VP」なるこの万年筆の開発の意図が中途半端なものだからである。
 この万年筆の命名については先に述べたが
「Very Personal」の頭文字を取ったものである。このVery Personalは、後発のParker 75」のようにペン先が自由に回転し、書き手の一番書きやすい位置にセットできるように配慮された。そのために、目印となる角度表示が付けられているのだ。しかし、手に持つペンの首軸(セクション)部分は円柱であるから、気に入ったようセクションごと回せばすむことで、ペン先(Nib)を回す必要はないし、目印もいらないはずである。
 「
Very Personal」の追求ばかりにとらわれたのであろうと思われる。そのため、必要でない技術開発であったようで、「Parker 75」ではセクションが円柱でなく親指、人差し指、中指の3本が当たる部分を凹ませてあり、Nibを回転させて丁度よい書き心地が得られるように改善されたのである。
 このように製品を観ていくと、
「Parker VP」は、「Parker 75」の試作品であったのではないかという感じがする。よりよい万年筆を作ろうとする根強いパーカーのフロンテァ精神が見て取れる万年筆である。使用してみても、決して使いよいものではないが、この万年筆の機能が生かされて、後発の「Parker 75」が大ヒットしたのである。

「VPのブラック」 「独特のインクフィラー」 「セクションの目盛り」

 「Parker VP」はこの様な開発の途上製品とも言うべきものであるため、発売期間も短く、少ない販売数である。こうしたことから、当時の手つかずの製品を探すのは中々苦労する。幸いにも、デッドストック品を入手することができた。当時、パーカー社としては画期的な製品の開発であったとする意気込み があったのであろうか、写真にあるように専用の立派なGift-Boxまで用意していたことから 、試作品的な商品ではなく開発途上のものであったと訂正せざるをえない。