Crosshatch grid(1964 - 1993)
 
                  (一般的に
Ciselと呼ばれた網状線格子模様で、オーソドックスなモデル)


 垂直と水平な線の彫り込みによる網状線正方形格子が描かれている。その刻まれた溝に黒いエナメルを塗り込んみ、グリッドパターンをさらに強調させている。このパターンは、元々は、 19世紀のイギリス人の銀細工師によって作られたシガレットケースのパターンで、「パーカー 75」開発時点にケネス・パーカーがそのシガレットケースを所有していたことから導入されたとなった、非常に特有のパターンである。面白いことに、このパターンは大ヒットしたために、他の国内外の多くの万年筆メーカーもの導入を図った。
「スターリング・シルバー」
(右の2本はバーメール)
 

「初期の金属製セクション」

 

「0マークのセクションリング」


 材質は、胴軸(バレル)やキャップは純銀(
92.5%の銀と7.5%の銅の混合で、当時の英国の銀貨と同じである。)で、9Kの金でクリップとペントップの天冠とペンエッジが作られている。
 初期に生産された「パーカー75」の首軸(ペン芯とインクフィラーをつなぐ部分で、セクションともいう)は1965年末まで金属製のものが使われていたと聞いている。以後は全てそれらはプラスチックモデルに取り替えたのである。従って、この初期の金属製のセクションのついたものはコレクターの中で特に尊重されているが、小生はまだ入手できてない。 この後販売されたのが、目盛りの付いたセクションリングに、「0」マークが入ったのが販売され、これもまた希少価値が高くコレクターの注目するところである。
 また、時代が進むにつれ、材質などの改善が図られた。ペン先のすぐ前のセクションの縁の上の金属のリングには、短い仕切線とゼロ(0)がマークされていたのがなくなり、長短交互の仕切り線だけとなった。アルミ製の金属は、インクにより腐食するために材質をクロムにかえ、さらに、クロムリングを金色リングに取り替えている。

「セクション・リング新旧」 「tassiesの新旧」 「宝石を着装したtassies」


 「パーカー 75」のキャップやバーレルの外観も、僅かずつであるがデザインを変えてきている。
 初期のキャップトップとバーレルエンドには金色の平たい蓋(通称
tassies)が付いている。これが、途中からは周りが盛り上がった皿のような外観のものに変わった。さらに、中心部分がすり鉢状に掘られたものとなっている。また、宝石商(ティファニー)などで販売した物には、様々な宝石がペントップにつけられて販売された。
 キャップのクリップの形も目立たないが変えられている。クリップが取り付けられている付け根部分の三角形の部分が、初期タイプは「のっぺり」で、以後は鋭く彫り込まれている。クリップの長さは45mmから43mmに短縮され、クリップの矢尻は5mmから6mmへと伸張され、クリップの矢の羽は14mmであったものから16mmに伸張されている。
 そのほかに、キャップバンドも3o幅から4o幅へと拡大されている。当然なことに掘られている文字も変化している。

「クリップ付け根の形状」
(左−初期のタイプ)
「クリップの形状比較」
(上−初期のタイプ)
「キャップバンドの変化」
(右−初期のタイプ)

 重さの面では、キャップとバーレルに使用される銀の量は、20.5グラムから15グラムまで、およそ25%
減少された。これはペンのバランスを改良するためになされたということである。

 長い期間製造販売してきたので、その間に様々な特別企画の製品も多く作られている。
1715年のフロリダの沖で沈んだスペイン船、ガリオン号から引き上げられた銀を使用した、スペインのTreasure Fleetとして知られている「パーカー75」の限定版を196566にかけて販売した。 そのほか、アメリカ建国200周年記念、戦略兵器削減条約の締結記念など多くのリミテッド・エディションが企画された。

 このスターリング・シルバーの「パーカー
75」の製造を オーストラリアとカナダでも行っている。製造した製品数は少なく、これもまたコレクターの秘蔵品となっているようである。 小生もやっと、オーストラリアで製造された「パーカー75」の万年筆とボールペンセットを入手することができた。話しによると、加工された物をオーストラリアへ運び、組み立てをしただけで、一貫生産はされなかったようである。


 
19813月に「パーカー75」は米国での生産が止められ、完全にフランス 工場での製造となった。ここメルー工場で、およそ20年近く「パーカー75」の製造が続けられた。その途中で
、「パーカー85」「パーカーT-I」 などが作られたが後継機種にはならなかった。30年間蓄積した「パーカー75」の製造ノウハウを注ぎ込むことになったのは「ソネット」なのであった。1994年から本格的な製造販売となった「SONNET」 が21世紀に繋がる筆記用具の使命を担ったのである。
 
Treasure Fleet(資料集より) オーストラリア製セット」 「キャップリングの刻印」
「上 初期の金属セクション」 「下 初期のセクション」 「Nibの記号位置が違う」
(右が初期バージョン)

 やっと「Parker 75」の初期ものが入手できた。これまでに2度ほど眼にしたが入手できなかった。今回、大阪の友人から分けていただくことができた。使用されていた感じがほとんど無く、天冠の金メッキにこすれもないものである。
 初期の初期の「Parker 75」は、セクション(首軸)が金属で作られており、短い期間の製造であったため僅かな本数しか存在しないのである。その後オールプラスチック製になってしまったのである。初期の頃の「Parker 75」の特徴は、下の写真のよう「首軸に「0」マークがあるもの」、「天冠がフラットのもの」である。
 
「「0」マークは同じ」 「天冠は平坦」

 追 加  (2008-8-24)


 1964年に最初の「Parker 75」が製造されたことは、よくご承知のことと思う。ヤフー、eBayなどのオークションでは、金属製のセクション(首軸)でなくて、セクションリングに「0」マークと
tassies(天冠)が平らな物であれば、初期型として高値で取引されている。
 下の左の写真は、
「Parker 75」のCiselの各種のキャップをはずした状態の物である。最左の万年筆のセクションを観てみると、バレル(胴軸)との境目に金属部分が出ていて、この状態でもセクションが金属製で初期型の物であることが分かる。バレルを外せば(中央と右の写真参照)はっきりとセクションとバレルのジョイント部分が金属製であることが分かる。
 

「首軸の違い」 「上 2年目のタイプ」
「下 初期型タイプ 」
「上 2年目のタイプ」
「下 初期型タイプ 」


 1964年から30年間販売された「Parker 75」の超ロングセラー商品であり、この間に様々な改良と新たな改良や工夫がなされてきている。このCiselには元々、FP(万年筆)、BP(ボールペン)、SP(シャープペンシル)が1970年には販売されていた。
 下の左の写真にあるようにRB/BP(ローラーボールとボールペン)両用タイプが用意されている。RBとBPのrefillの長さが異なるために、調節用の部品も揃えてある。(中央の上の写真参照)
 また、「Parker 75」のBPとほぼ同じ形をしたSPのrefillが用意されたのである。(下の写真右参照)これは大変便利で、BPのrefillの変わりに挿入すれば、0.9ミリ芯のSP となる優れものである。ちなみに使用してみると結構便利であるが、SP専用機種のような消しゴムはない。
 

「上 BP/RB」
「下 BP専用」
「上 BP/RBとrefill」
「中 BP専用とrefill」
「下   SPrefillタイプ」
「上 BPの refill」
「下 SPの refill」