Parker Duofold Orange

("Pen of Peace")

1998年 1000セット限定販売

 

 
       
  「紙製のGift Box」   「朱塗り木製Box」   「軽量な包装」  


 アメリカの1920年代は、繁栄の時代とも言われていた。その時代に「Big Red」の愛称のついた「Duofold Orange」
が誕生した。 これ以前の万年筆は、硬質ゴムの黒一色であった 。そこへParker社は 万年筆に鮮やかなオレンジのカラーを導入したのである。また、これは新鮮なアールデコ調のデザインを導入した。これが、万年筆業界に新風を吹き込 んだ。その結果として、Parker社は、この業界のリーダー的存在に君臨する立場に至ったのである。
 それ以後も、Parker社は「愛用者に受け入れられるもの作り」に徹して、数多くの名品を製造してきた。こうした地道な製造と、卓越した市場開拓により、世界中にParker Penの愛用者が広がっていった。こうした中で、1945年に太平洋戦争の終結文書の署名にマッカーサー元帥が、奥さんの愛用していた「Big Red」を使用したことを上手く宣伝に使った。そして「Parker Pen」を世界に知らしめたのである。蛇足であるが、日本側の出席者である重光外務大臣は外務次官が使っていた万年筆を使った。それが、Vacumatic Penであった。
 さらに、ブッシュ政権時代に、ソ連との軍縮文書の調印式に望んだ。この調印式のブッシュ、エリツィン両大統領が署名するのにも「Duofold Orange」が使用された。このことから「Parker Duofold Orange」を「平和のためのペン」と呼ぶようになった。パーカー社の機に応じた上手い宣伝が功を奏したものとも言える。

「セットの全て」 「international size」 「歴代Duofold Orange」


  歴代の「Big Red」を並べて観てみると、初代はアールデコ調の直線的なデザインであった。1930年代になると少し丸みを帯びた淑やかさを漂わせるデザインとなった。 第1次世界大戦の突入による軍用品の製造 は、万年筆の材質や、機構の改良に一役を果たした。Parker社のインクフィラー機構が1933年からVacumatic方式 を導入した。それ以後はVacumatic Penが全盛となり、「Duofold」という言葉も忘れ去られてしまったのである。
 第2次世界大戦は、様々な面に技術革新が起こった。万年筆にもバレルの材質や、新たなインクフィラー構造の改良が促進された。それは「Parker 51」の導入に始まり、その後の継機種や、廉価版等が生み出されたのである。 万年筆にもバレルの材質や、新たなインクフィラー構造の改良が促進された。それは「Parker 51」の導入に始まり、その後には様々な機種の万年筆が生み出されたのである。
 1980年の後半になって、パーカー社創立100周年を迎えた。それに際して、
Parker社は記念すべき製品を販売することにした。それは、1920年代の「Duofold」のデザインをモチーフとした「New Duofold」を世に送り出す事になった。そして、1987年に創立100年記念の「Duofold Centennial Black 」を販売したのである。多くのひとから、この万年筆の品質の確かさと、デザインの良さが再認された 。このことから、次々と新たな「Duofold」が作り出されるようになったのである。
 上の右の写真に示したように、歴代の「Big Red」は
Centennial Sizeであった。今回(Duofold Orange Special Edition 1998)の万年筆は、やや小振りのインターナショナルサイズとなっている。これは1995年に第二次世界大戦終結50周年でCentennial Sizeの「Parker Macarthur Duofold」を1945セット販売して間もないことから、サイズの異なるものにしたと思われる。
 万年筆の限定販売は1000セットである。ローラーボールもセットに加えたセットも販売されたようである。今回の限定品のシリアルナンバーは、箱の中の「銘板」と、キャップリングにインプリントされている。
 

「発売当時のチラシ」 「リングにシリアルNo」 「天冠は市販物と同じ」


 「
ビッグ・レッド」を持っているというだけで、喜びを覚える万年筆の逸品であると思う。Tassie(天冠 )は、市販の「Duofold」と同じである。キャップリングは1990年発売や「Macarthur」等は幅の違う二重リングであるが、1930年代の物に似た細めの二重リングである。
 主な仕様は、
 サイズがインターナショナルサイズであり、ボディとキャップの材質はアクリライトの切削成型仕上げとなっている。クリップはベリリウム合金ベースの23Kゴールドプレート仕上げで、キャップリングは23 Kゴールドプレート(2連リング)である。Nib(ペン先)は18Kソリッドゴールド
/ルテニウムプレート装飾仕上げで、ペン先はM(中字)となっている。インクフィラーはカートリッジコンバーター両用式である。世界限定1,000本で、定価は¥55,000(税抜き)であった。
 

「NibはM」 「定価5.5万円」 「銘板」


 Parker社は、1987
年に英国のNEWHAVENへ拠点を移したが、英国王室より名誉ある証「ロイヤル・ワラント(英国王室御用達)」が与えられている。その翌年の1988年には、サッチャー元英国首相も多忙なスケジュールの中であったがパーカー社の工場を表敬訪問をしている。これは伝統と歴史を重んずる英国の有様を物語っているとことと言えよう。
 「Duofold」は、万年筆のトップメーカーであるパーカーのフラッグシップモデルである。材質やカラーバリエーションが豊富であり、オーソドックスなブラックは格調高くシックで落ちついた感じであり、カラーものはそれぞれに優雅さ、気高さがあり、一本一本異なった感じを与えてくれる。同じモデルで同じサイズの万年筆であってもどれも異なった筆記感覚を受けるのである。だから、万年筆は不思議な筆記具なのである。
 

「Pen of Peaceの説明」 「ロイヤルワラント」 「英国王室御用達印」


 万年筆をしばしば評価するが、自分なりのその観点は、@ デザイン A カラー(材質) B 書き味(日本語/英語) C バランス(サイズ) D 扱い(触感) E 耐久性  F 価格 G その他(第一印象、ステータスなど)などである。これらをチェックしている。今回の万年筆は、トータル的には80/100点と言ったところである。価格的には、限定品と言うことでやや高めであると言えよう。