Parker VS

    
  
1947年〜1949年 製造販売
 

     
       
  「オープンNib」   「矢羽根でないクリップ」   「ペントップ」  
 

 Parker Penの命名の多くは数字が取り入れられている。今回紹介する万年筆の名前は独特なものである。「Parker VS」は「Vacumatic Special」の意味を表したと 言う説がある。Parkerに「Parker VP」 という名前の万年筆がある。その命名では「Very Personal」の略字である。そのことから、今回の「VS」は、「Very Special」と解説する人もいる。しかし、VSがボタンのフィラーであること や、オープンニブであることから、前者のりゆうから命名されたと考えたほうが望ましい思う。
 第二次世界大戦が終わりに近いころ、Parker社は将来の万年筆製造ラインについて検討し始めた。
当時は、最高級品「Parker 51」が生産されていて、ParkePenの一大繁盛期で あった。Parker社が世界中に大量のペンを届けることができるようになっていたのである 。他方、Vacumaticはその生産を終えようとしていた。また、セルロイドから近代的な材料のプラスチックを利用することが可能になってきたのである。会社がより多様な 万年筆を取り揃える方針をとり、「Parker 51」のユーザーからの要望をつかんでいたのである。その要望は、「金属キャップ」、「モノクロ以外のカラーのバレル 」、「Hooded NibでないOpen Nib」などであった。この要望に答えるために開発されたのが「Parker VS」万年筆なのであった。
 

 
       
  「VPとVS」   「アルミのボタンフィラー」   「透明なペン芯・ボタンフィラー」  
 

 キャップデザインはLustraloyバージョンと金張バージョンの2種類だけである。 「Red-Brown VS」の金張バージョンはキャップに縦に平行なラインが入れられている。
 「Parker VS」のインクフィラーシステムは、1912年に発明されたボタンフィラーを一層、簡単で、信頼できる安価なボタンのフィラーに改良されている。
 1947年の硬質ゴム(プラスチック)の導入への転換と同時に高い精度で作られたアルミニウムボタンを付けた「Parker VS」が現れたのである。それは「Parker 51」より古いアルミニウムカラーで あった。その後、Parker社が「Parker 51」にaerometric
フィラーを 導入した。そのため、「Parker VS」は、ボタンフィラーの製造が中止になるまで、わずか3年間弱の短い寿命の万年筆となった。

 
       
  「カラーバリエーション」   「デッドストックのペン芯」   「BlackのVS」  
 

「Parker VS」のカラーバージョンは、アメリカでは、Black Red-Brown Royal-Blue Gray の4色だけであったが、Greenはアメリカ以外の国で発売された。
 「Parker VS」
は非常に良いペンで ある。しかし、多くは売れなかったようである。その大きな理由は、「Parker 51」の斬新なスタイルと宣伝であった。また、多くの万年筆メーカ−がHooded Nibの、万年筆を販売していたからである。Parker 社も「Parker 51」の生産体制が万全となり、高品質の「Parker 51」をだれもが購入でき るようになった。それにより、ユーザーはオープンニブの時代遅れの感じがする「Parker VS」を敢えて求めなかったようである。さらに、1948年には「パーカー21」(流線型のシェルの中に隠されたNibの万年筆で、「Parker 51」の廉価版)も販売された。「Parker VS」には一層の追い討ちがかかってしまった。しかし、「Parker 51」の順調な売れ行きにより、1949年「Parker VS」と、「Parker 21」も製造が中止された。しかし、「Parker VS」はヨーロッパでは人気もあり、デンマーク工場で、1950年まで製造されていたそうである。この工場での生産の中に、アメリカで発売されなかった緑色があった。(緑色のaerometric VSはデンマークでクリスチャンのオルセンによって作られた。)

 
《追 加》「Parker VS」後期品

「上 初期タイプ(レッド)」
「下 後期タイプ(グレー)」
「上 初期のクリップ」
「下 後期のクリップ」
「Nibは変化なし」

 初期に発売された「Parker VS」は、写真でも分かるようにキャップクリップの形状が矢羽根ではない。1936〜1941年に販売されていた「Vacumatic  Duofold
」のクリップと同じである。このことからも、「VS」の名前の由来はVacumatic Special」の頭文字から付けられてと思われる。
 後期タイプは極最近、入手できたものである。ほとんど使われた形跡のないものらしい。
インク挿入された形跡もなく、ペン芯が透明な状態である。アルミのボタンフィラーも順調に作動している。
 
「アルミのボタンフィラー」 「天冠は同じ」