年代測定について

原子

  1. 放射性元素(ラジオアイソトープ)
  2.  身の回りの物質は、原子とよばれる粒子からできています。その原子は、電子と原子核からでき、さらに原子核は陽子と中性子からできています。原子のもつ性質は、原子核中の陽子の個数により決まり、性質の異なる原子ごとに元素名がつけられています。

    中性子の数  同じ元素の原子の中に、中性子の数が異なるものが存在しています。それらを、同位体とよんでいます。例えば、炭素原子には中性子の数が6個、7個、8個のもの(陽子はどれも6個)が存在しています(右表 参照)。これらの化学的性質は同じで、同じように化合物を作ります。 同位体をを区別してあらわすのに元素記号の後に質量数(陽子の数と中性子の数を足した値)を書いてあらわすこととします。先ほどの炭素原子の場合には、C12、C13、C14と表記します。

     炭素原子の同位体の中で、C12がもっとも多く、C13とC14はわずかです。C13は、磁性をもっていて内臓や脳の断層撮影(MRI)などに利用されます。C14は、β線という放射線をだすので放射性元素(ラジオアイソトープ)とよばれします。この性質を利用して、年代測定、トレーサーとして植物の光合成量の測定、河川や地下水の流量の測定、医薬品の効いている部位の測定などに利用されています。これらの物理的性質は、二酸化炭素やセルロース等の化合物中でも同じです。


  3. 放射性崩壊
  4. 半減期のグラフ  放射性元素は、放射線を出すと他の元素に変化をします。この現象を放射性崩壊といいます。C14の場合、β線という放射線を出して、窒素原子に変化します。つまり、C14の数は減少していくのです。この減少する割合は一定で、崩壊しないで残っている放射性元素の数がもとの半分になるまでの時間を半減期とよんでいます。C14の半減期は、5730年です。始めに10,000個あったC14が5,000個になるのに5730年かかるということです。さらに、5,000個が2,500個になるのにも、5730年(10,000個から2,500個になるのは11,460年)かかるというわけです。(右図 参照)


  5. 年代測定
  6.  C14は放射性崩壊で減っていきますが、大気の上空では宇宙線により窒素原子からC14が新たに作り出されています。その数と放射性崩壊で減少していく数がつりあっていると考えられており、大気中に存在するC14の割合(C原子全体に対する割合)は、一定に保たれています。

     次に、植物の体内ではC14の割合がどうなるか考えてみましょう。植物は、光合成により、二酸化炭素を大気中から取り込み炭水化物を合成しています。その炭水化物中に含まれているC14の割合は、大気中と同じになります。植物が、光合成をしている限り、C14の割合は大気中と同じと考えてよいでしょう。

     では、遺跡中から見つかった植物の年代をどのように測定するか考えてみましょう。まず、植物が切り倒された時点で光合成は止まります。植物内の炭素の量もこの時点から増加することはありません。しかし、C14は、放射性崩壊をするので徐々に減っていきます。C12、C13は、崩壊しないので量に変化はありません。そうすると、植物が切られたときから時間がたてばたつほど、C12、C13に対するC14の割合が減っていきます。そこで、現在の大気中のC14の割合と遺跡で見つかった植物中のC14の割合を比較して、どれだけC14が減ったかが分れば、年代の測定ができるのです。
     例えば、植物中のC14の割合が大気中の割合の1/2だったとすると、5730年前のものだということが分ります。では、植物中のC14の割合が大気中の割合の7/10だったとすると、何年目のものでしょうか。上のグラフを利用して求めてみましょう(ヒント 10,000個が7,000個になると考える)。