NO 6

                    エッセー     人 生 は 旅       


                               
平成18年4月22日  尾北ホームニュース     
                                                
第1297号に掲載    
       
第26話  夫婦で歩こう
                    
【山内一豊ゆかりの地】

  名鉄羽黒駅を出て西へ、最初の信号を右折し、左側にある自転車店北の細い道を左に曲がると、まもなく戦国の武将、梶原景時が開基した興禅寺の東門に至る。
  梶原氏の出身と伝えられる山内一豊の母法秀尼は、流浪する千代を引き取り、これが一豊と千代の最初の出会いとなる。羽黒城趾は同地内の竹やぶの中にあり、一豊は小牧、長久手の戦いで焼失した羽黒城を修復し、母親の出生地である羽黒地区一帯を死守したと伝えられる。

      
          興禅寺の東門                           羽黒城趾          

  羽黒駅に戻り、「小弓の庄」から五条川の上流に向かって左岸を歩く。春は両岸桜三昧の贅沢な道となる。新郷瀬川と合流する冨士橋南まで約20分、左折して新郷瀬川に沿いクルマの通らない右岸を歩く。右に心休まる里山、左に豊かな尾張平野を眺めながら赤坂橋から左岸に渡る。

  新郷瀬川に架かる橋の多さも新しい発見である。特に41号線を潜ってからは、さまざまな形をした橋が目を楽しませてくれる。

  名鉄犬山線を渡って東余坂地内に入ると、辺りは一変城下町風景に変貌する。旧奥村邸を過ぎ、魚新通りを西へ突き当たると本町通りである。左折して「真野邸」まで往復する。近年活性化著しい本町通りは、「なつかしや」や「トリック絵画邸」など新旧同居して、歩くほどに楽しい通りとなった。

  続いて本町通りを北へ、長い石段を上がって針綱神社に参拝。本殿から近道を通って一豊が関ヶ原に出陣したと伝えられる犬山城に登り、城下の休息所で弁当を開く。これまで約七`、2時間の行程である。

     
        赤坂橋より北方を望む                        本町道り            

  さて、馬喰が売りに来た馬を欲しがる一豊に黙って持参金の10両を差し出した千代。一豊が土佐20万石の基礎を築いた大きな要因ともいわれ、千代の内助の功が話題になっている。

  一豊千代の香り豊かなこの道は、やはり夫婦で歩きたい。定年後が夫婦の最大の危機といわれる現代、最近失われつつある「内助の功」の意義を改めて検証するとともに、来し方に感謝し、行く末を誓いながら、夫婦で歩く恰好のウオーキングコースでもある。

           





                       
平成19年8月25日  尾北ホームニュース 
                                                  
1364号に掲載
        第27話  風流で楽しい

                            
【 犬 山 の 池 巡 り】

  犬山市の東部に広がる里山に沿って多彩な池が点在する。日本有数の大きな溜池、入鹿池をはじめ、そのほとんどは田畑を潤す潅漑用の溜池である。犬山駅から15の池をつないで楽田駅まで、全長22キロ余り。
  今回は8つの池を巡り市民健康館(さら・さくら)の湯に浸かり、巡回バスで帰途に着く、前半のコースにチャレンジする。
  午前10時、犬山駅東、からくり時計前を出発。国民年金の宿(サンパーク)前の丸山天白の信号を東に向かえば、左に「徳ケ池」、右側に浮き草に埋もれた「馬堤池」が道を挟んで展開する。
  少年の頃、ひしの実を採りにきた懐かしい徳ケ池は、当時と違い周囲がコンクリートで固められていた。

       ☆ 徳池やひしの実採りし遠き日よ

  池畔の和風喫茶で鋭気を養い、馬堤池東の三差路を左折、約8分で市養護老人ホーム手前に広がる四角い池、富岡地区の「西ノ池」に到着。東側の竹藪が湖面に揺らいで美しい。数人の釣り人が黙って糸を垂れていた。

  池の東側の細い道を「小野洞池」に向かう。2`余りでひばりヶ丘公園横を通り小野洞砂防公園に到着。ここでは土石流など自然災害に対する砂防工法の幾つかが見られる。公園内には神秘な水を湛えた四つの池が点在し、その総称が「小野洞池」である。
  そのまま南下し広見線を横切ると、愛知用水の導水路流量調節室に突き当たる。右に折れてまもなく左側に「四十八池、下」、愛知用水を挟んで南側に「中」「上」と三つの池がきれいに並ぶ。

  城東中・小に挟まれた道を進み、41号線を潜れば、当コース前半最大の池、「中島池」と「新池」が寄り添うように開けてくる。一服したくなる景観である。二つの池兼用の堤防の道を南下すれば、やがて犬山病院の東に「大畔池」が広がる。池を過ぎれば直ぐ市民健康館の南側入り口である。これまで約8キロ、2時間の行程である。

  後半は、巡回バスで犬山駅東から市民健康館へ移動。
  前原地区の「三ッ沢池」を皮切りに、羽黒地区の「中池」 「空池」 更に池野地区に入ると「稲干場池」がある。そしてヒトツバタゴ自生地の南、「西洞池」から最大の難所、本宮山と信貴山を結ぶ尾根を超えて、最後の小さな文字通り神秘な池 「宮池」を巡ると、ゴールの楽田駅までの距離は、前半の倍に及ぶ。
  楽田駅から逆のコースを辿れば、最後に「さら・さくら」の湯に浸かることができる。

  ウオーキング、吟行、サイクリング、すべてよし。この風流で楽しい犬山の池巡り。
  さあ、後半はどちらから歩こうか。




      
         第28話  どんでん返し
                         
 【友情!20年目のショック】

  同期入社のK君は、同じ経理部に席を置く、よき友であり、ライバルでもあった。当時は年2回(3月、9月)の決算で、揃ってよく残業をした。直属の上司で決算、税務を担当する優秀な若き経理課長Nさんは、胸が悪く欠席勝ちのため、同じ課のボクとK君がいつもお手伝いをした。

  毎夜遅くまで残業をするボク達に、M経理部長は入れ歯をカラコロ鳴らしながら、「行こうか」と、豪華な夕食を頻繁に誘ってくれた。まことに良き時代であった。

  決算も終わり、その日久しぶりに定時に退社したボク達は、たまたま新規開店の喫茶店のカウンターに腰を降ろした。そして思わず顔を見合わせた。店主の娘らしいその彼女は、いわゆる共通の好みであったからである。

  もちろん冗談のつもりであった。誘ってみようか。どちらにOKするか試してみよう。
  ところが数日後、機会はあっけなく訪れた。冗談から駒が飛び出してしまった。

  「テレビ塔に上がってみない?」

  翌日の退社後、ボクと彼女は久屋通り公園を歩いたり、テレビ塔に上がって美しい夜景に息を呑んだり、楽しいひとときを過ごした。このことはK君に報告していない。友情のつもりなのだ。

  まもなくK君の兄が不慮の事故で亡くなり、K君は兄に代わって家業を継ぐため退社した。以来、ずっと音信は年賀状のみとなった。

  昭和50年代の半ば、会社のOB会に在職者代表で出席することになった。ふと思い付いて、勤続年数で資格に満たないK君にも案内状を送ったところ、OKの返信。

  当日、会場には昔と変わらぬ懐かしいK君の姿があった。やがて盛況を極めたOB会も別れの刻となる。

  「市ちゃん、ありがとう、またネ。高校後輩の奥様によろしくネ」
  「Kちんもネ。奥様は知らないけど、よろしくネ」

  「市ちゃん、ごめん」
  「………」
  「家内は、市ちゃん知ってるよ」
  「………」
  「ほら、あの喫茶店の…」

  それは脳天をグワーンと一撃されたようなショックであった。
  友情は、反対にかけられていたのである。





                         
平成20年11月29日(土)  尾北ホームニュース 
                                                      
1427号に掲載
             第29話 秋色迫る
                          
【犬 山 の 里 山 を 歩 く】

  10月25日、秋色迫る犬山の里山を歩く会に参加した。
  犬山駅東口にて行程表を貰い、前日の雨にしっとり濡れた歩道に一歩踏み出す。

  随時出発のため、前後に大勢の参加者が思い思いの格好で列をつくる。モンキーパークを過ぎて、尾張パークウエーに入ると、田中犬山市長の歓迎があり、手を振って応える。
  まだまだ深い緑の中には、僅かに色づき始めた樹木も点在し、いち早く赤みを帯びた漆の葉や色まだ浅い草紅葉が迎えてくれた。

  国道41号線と立体交差する手前で、パークウエーを降り、田んぼと線路に挟まれた細い道を歩く。一部稲刈り跡のひこ生えが青く広がり、パッチワークのようだ。善師野駅を過ぎて直ぐ東海自然歩道に合流。大洞池に向かう途中、熊野神社に参詣。百八の石段を上がった先に「建速須佐之男命」が祀られており、百八の願いを叶えて下さるという。

  さあ、いよいよ本格的な里山の厳しいアップダウンに突入する。美しい竹藪の中を上がって辿り着いた山中の神秘な大洞池は、釣り人の糸を落とす波紋以外は波一つない静かな湖面であった。腰を降ろして喉を潤し、弁当を開く。

    ☆ 里山のベンチに開くにぎり飯

  ここより大平林道に向かう。道中アライグマがかじったという痕跡生々しい木々が散見された。 また落ち葉を踏みながらたまたま肩を並べた方々との会話も楽しいものであった。
 大平林道に入ると、両側の草木がもはや紅葉に向かって満を持しているようである。

  鳩吹山への登山口の一つ、石原登山口を過ぎて長い下りになる。林道は瀬音を立てる清流に沿い、枯葉が散り敷く、正に癒しの遊歩道である。
  不老の滝は前日の雨で水量が多く、轟音と共に幾状にも分かれて落ちていた。

  そして最後の難関に取り付く。寂光院往復、続いて善光寺往復。ようやく辿り着いたゴールの犬山遊園駅、周辺には完歩した参加者の満足な顔々があった。
  約3時間、歩いた里山11`余り、前半は比較的平坦な道、後半は起伏の富んだ激しい道。まもなくこの全行程に今年は特に美しく絶品といわれる紅葉が訪れる。その頃もう一度歩きたくなる素敵な里山のコースでもある。





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