にっしんまちづくり学習会　岡　崎　　勝

　２００２（Ｓ１４）年８月１７日土に市民会館第三会議室で午後２時から約２時間に渡って、「懲罰動議」とは何かと言うテーマで、４０数名の参加者で学習会が開催された。
　日進市からは議会事務局から鈴木さん他二名に来ていただき１０分間ほどの概説のあと、質疑がされ、懲罰動議に関して意見交換がされた。
　以下、その場で出された論議と資料その他を参考に、私の責任でまとめてみた。

１「懲罰動議」とは何か？簡単な説明

1. ）　地方自治法１３４条?１３７条までにある懲罰に関する法によって、議員への懲罰はなされる。
   　懲罰であるから、当然「罰」を議員に与えるというのが、この法律である。で、はっきりしているのは、その懲罰は「議会の秩序保持、規律保持、のために、法、会議規則、委員会に関する条例に違反した議員」に課すことができるということだ。
   　したがって、議会の品位や秩序を乱したり、違法行為等があったときに、懲罰を承けるということになる。
   　懲罰の種類は、重い順に1.除名2.出席停止3.陳謝4.戒告（かいこく）
   
2. ）　懲罰の手続きは、
   議会中に、懲罰に値する他の議員の言動があったと認識した議員が存在して……
   
   1. 　議員定数の８分の１以上が「発議」（Ａ議員を懲罰しよう！と連名なりで動議を議長に提出）し、
   2. 　「懲罰委員会」（懲罰を与えるかどうか裁決するのは本会議なので、その動議を精査して、本会議へ出すかどうかを決める委員会）で、懲罰動議を審査し、本会議へ出す事に決まれば、
   3. 本会議で賛否討論し、議員全員で裁決して、「懲罰する」か、するなら、「どんな懲罰にする」か、あるいは「懲罰をしない」かを決定する。そしてその後で、
   4. 　懲罰が与えられるということになる。
3. ）　委員会事務局は、「発議」（懲罰動議を提出すること）が「法的に適正な要件を満たしているか」を確認し、満たしていれば受理するという事務的な手続きに関わる。
   
4. ）　懲罰への制限（なんでも懲罰できるということではなく、慎重に決議する必要がある。）
   
   1. 　議会の秩序維持に直接関係ない事は、懲罰の対象にならない。議会の運営、または品位の保持と直接関係のある事のみが懲罰の対象になる。
   2. 　議会の運営と全く関係のない議員の議場外における個人的行為は、懲罰の対象にならない。
   3. 行為当時には懲罰の対象とされていなかったにもかかわらず、事後に遡って懲罰の対象とすることは許されない。（遡及懲罰の禁止）
   4. 　議員の行為を懲罰し、重ねてその他の懲罰を課す事はできない。（二重懲罰は違法）
   5. 一事不再理であり、一度議決された、事を再度、議決はできない。
   6. 懲罰対象の行為の三日以内に、発議（動議提出）しなくてはならない。→その会期中に、そのこと納める主旨
5. ）　懲罰と救済。懲罰に不服の場合にも対抗手段がある。
   1. 　行政争訟：審査の申立て、処分取消訴訟、
   2. 　国家賠償請求：公権力の違法な行使への損害賠償

２　意見交換

市民「動議は出されたら、事務局はなんでも受けざるを得ないのか？事務局の独自判断はあるのですか？」
事務局「そのあたりは難しい。動議には1.人的制約（どの議員を）2.場所的制約（本会議・委員会開催中であること）3.時間的制約（ことが起きて三日以内）がクリヤーしていれば、私どもは受けざるを得ない」
市民「議会秩序を乱した事例は？」
事務局「不穏当な発言などです。」
市民「どういう発言ですか？」
事務局「それはちょっと分かりませんね」「聞くところによると、豊明は会議休憩中に傍聴席で議員が知人に自分の情報宣伝用チラシを渡したことが、品位に欠けると懲罰に値するとの意見がでたそうです（これは懲罰にいたりませんでしたが）。」
市民「懲罰委員はどのようにして選ぶのか？」
事務局「日進の委員会条例で９人を選ぶ事になっています。会派から一人ずつ出してもらっている。動議提出者や当該者も除いている」
市民「秩序とか品位を乱すという判断は、どのように？」
事務局「これが秩序違反だという秩序規定のはない。私生活には懲罰対象に及びませんが、秩序も品位も本会議中の議員の皆さんの判断ですね。瀬戸市では政治倫理審査会というのがある。これは常に委員会があって、事例はその委員会で審議されている。勧告を出すことができる。」
事務局「品位とか秩序は、これだっていうものはないですね。」
市民「すると、多数決の暴力で、あの議員をやってやろうってなった場合に、それをセーブする歯止めはありますか？」
事務局「それはないですね。議員の数で多数決であれば、意図的なものが発生する可能性もあります。ただ、それはかなり勇気がいる事だと思いますが」
市民「動議提出の際、それ自体には行為の特定（どんなことをやったのか）は必要ないのか？」
市民「懲罰動議は理由がいりますね。動議が文書で出されたときに、記載されていない理由や行為を、一週間くらい後でつけ加えるってことはできますか？」
事務局「動議文書にあるものが動議ですから。それはあり得ません。後付けで、これをやったということはできません」「動議理由に具体的に第何条に違反とかは書いてなくてもいいです。説明の中で、それを入れてもらえばいいということです。」
市民「動議提出の中に、この議員がこうした事をやったと対象行為は書かれていないのですか？」
事務局「動議の中に、書かれるべきですね。」「法、規則等に違反しているということが含まれている。その行為が書かれているといいですが、特定な行為は理由には書いてあると思いますが、ファジーかピンポイントかどうかは、事務局としては、規定された書式もないので、それは行為の特定判断はできない。幅広く取れるというなら、取れますね。とりあえず、文書が出て、先ほどの三条件があれば受けます」
市民「アイツの顔が気に食わないということでも、書式が整っているなら受理するということですか」
事務局「それは、議員さんの常識でね……」
市民「それは甘いですよ。議会制民主主義が、緊張関係の中で品位を保つ努力をしていればいいけれどね。たとえば、国会での懲罰と市町村での懲罰には格差がある。懲罰動議が恣意的かどうかを判断する基準や枠のようなものが、何かあると思っていたんですが、ないんですか？」
事務局「ないです。アイツの顔がどうのというのは想定してないですね。考えにくい。」
市民「ボーダーがはっきりしていないと、だめですよね」
事務局「顔がどうのこうの……ということなら、事務局もその議員さんに、『これは、どうも……』と、申し上げますが、それでも強硬に出すと言われたら受けざるを得ないですね。」
市民「全国からみると、0.2%くらいしかない。それが日進市で出されているといったことは、非常に重要な問題ですよね。日進全体にとって重要ですよね。それを、懲罰委員会だけが審議していますよね。議会事務局はまとめるだけで、調査しないの？」
事務局「極論言えば、私たち事務局は、決定権がない。議員さんに資料をもってこいと言われれば取ってきたりね。中立であるがゆえに、門前で判断はしない。まあ、違法と思われるかな？っとか、余りにもひどいと思うものは、ちょっとお話をさせていただきますが。運営が間違いなくされるような仕事をしている。」
市民「懲罰委員会へ第三者が関わる方法として、傍聴が問題になったが、傍聴はどうなっている？」
事務局「議長が決める。迷うときは委員に諮る。今回は二回目は報道をいれました。」
市民「委員の中に一般の人は入れないのか？」
事務局「議会の自浄作用ですから。議員だけです。」
市民「議員を選出した市民の気持ちは黙殺ですか？」
事務局「反映され得る法的なものはないですね。決まりの中ではできません」
市民「傍聴を認めないのはなぜか？」
事務局「会議公開の原則は、本会議はそうですが、委員会は議長の許可が必要。委員会規則が変わらない限り無理です。委員会は審議優先なので、本会議とは若干違うんです。」
市民「委員会の方が傍聴する意味がある。委員会の議事録が読めるんだから、傍聴だっていいんじゃないの。」「条例を変えればいいんですか？」
事務局「そうです。」
市民「陳謝、戒告を受けたあとは議員活動に影響があるか？」
事務局「出席停止は七日間以内で、委員会も出られません。あとは、まったく議員活動に影響ないです。」
市民「累積されたら……」
事務局「それは関係ないなあ」
市民「でも、繰り返してもいいわけ？」
事務局「関係ないです。」
市民「議会のお手盛りっちゅうことですね。」
事務局「まあ……懲罰に従わなかった場合に、また、それが懲罰の対象になる」
市民「懲罰動議がかかるようなことって、誰が見ても聞いてもそりゃあそうだっていうものばかりだと思っていたんだけれど、さっきの豊明の例を聞くと、エッ、どこが？という感じがする。で、それで事務局はそれでいいんですか？助言は？普通はそれで、議会が止まるとか、違法行為だという瑕疵があると判断できなければ動議なんて出せないと思っていたけど」
事務局「そういう基準はないですねえ」
市民「動議自体に不適当なことがあるかもしれないのに、受理しているの？」
事務局「それを審議するのは懲罰委員会です。懲罰の行為が特定できないのであれば、委員会で否決されますよね。」
事務局「懲罰動議が、しょっちゅう、よく出るようなことがあれば、それが異常ですね」
市民「でも、それは逆に、懲罰にかけなくて、謝って済むという考えや、謝るべきでないのに、謝ることがあるとすると、それは多数の暴力もあるでしょ。いくら、簡単に、穏便に済んでもそれは、自浄作用ではないですよね。無理やり謝って済ませるより、きちんと懲罰動議を出した方がいいかもしれない。そんなこともありますよね。」
市民「動議を出した人が、論議の中で、行為が特定され、どうしてそれが品位に欠けるのか？という説明はしなくてはイケナイのですね。」
事務局「なぜ品位に欠けるのかという具体的な事由は言います。」
市民「動議を受け取る時点で、そういう話はしないの？」
事務局「権利もなく、法律に書いてないですからしないです」
市民「でも、庶務運営上必要じゃないんですか？」
事務局「本当は出して欲しいこともありますが、言いづらいこともある。事務局が議員に対して言える立場にない」
市民「三日間ということは、時間でなく……」
事務局「はい、日単位です。土日も入ります」と事務局。
市民「誹謗中傷の対象の、議員か議会全体かは発議には出ないの？」
事務局「その時には分からない事もあります。」
市民「動議にはテーマもないの？」
事務局「ないです。受けたときは内容は分からないです。」
市民「懲罰委員の資質とか考えると、会派代表なんですか？」
事務局「それは代表ということにしているわけではないのです。」
市民「倫理審査会は構成委員は？」
事務局「議員ですね」
市民「懲罰を受けた議員の不服は？」
事務局「できないですね。除名はできるかな？秩序罰なので、行政ならできますが、議会ですからね……。ちょっと詳しくは分かりません。」
市民「すると名誉回復は？」
事務局「別の世界で……」
市民「陳謝して、また除名というのは可能ですか？」
事務局「除名は議員活動はできませんが、また選挙で選出されれば、また活動できます。除名なんてのはよっぽどです」
市民「横浜の除名もね、そこへ行くまでに色々あったんですよ。意見を聞いてもらえなかったとか。だから、たとえ行為があっても、必ずそこに至るプロセスがある。だから、今回もいくら軽いとしても、多数決の暴力となれば、いくらでもエスカレートしていく可能性はある。戒告だって除名の一里塚になり得る。もっと、懲罰をどうするというなら、きちんと精査してほしい。第三機関設置なり、事務局でそういう考えを持っていないのか？」
事務局「ないですねえ」
市民「議会をテレビで放映するのは？議会と市民との緊張関係、公開の原則で実現できるでしょ？」
事務局「議会で決定ですね。でもお金がかかるので……、でも将来的に期待して下さい」との事務局。
市民「動議の出し方に違法性があると考えた市民が、手続きに違法性があるとか、無駄な非合理的会議をしたとか、受理した事務局に問題があるというときに、争訟可能ですか？」
事務局「できないことはないかもしれない……」
市民「違法な委員会のために、給与払ったとか、それが、無駄な税金の支出したとか、それは争訟の対象になりすまか？」
事務局「それは、できないことは……。予想してませんね。だから、こうなるまえに謝罪するとかね、いろいろ……」
市民「そうじゃなくて、それが、懲罰動議にかかるほどのことかとか、謝罪するようなことなのか？そういうチェックをすべきだろうね」
事務局「公の場などでは、事務局の発言は控えている。でも、個人の議員さんには非公式に話もできるので、できるだけ事務局の意見を伝える努力もしていきたい。議員の秘書ではないので、言いにくいこともある。」
岡崎「本日は、お忙しいところをありがとうございました。」


以上（まとめ責任は【岡崎】、事務局の方の意見も岡崎の責任でまとめました）

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