笑う男「生」学


ジェンダー問題相談室:意気地ある育児

(月刊「クーヨン」04年12月号)

明希さん:こんにちは。
マスター:いやあ、明希ちゃん、やっとかめだがね。赤ちゃん元気きゃー?
明希さん:はい、お久しぶりです。マスターは元気でいいわねえ。
マスター:不景気だけどよ、毎日なんとかやっとるがね。仕事復帰するんだってね。もう、保育園決めたきゃー?
明希さん:それがね、朔ちゃんともめているんですよ。
マスター:なんでだね。朔ちゃんもええお父つぁんになるに決まっとるで。この前も、店へ来て喜んどったがや。違うのかね?
明希さん:なんかね、子どもは母がしっかり家にいて、育てるのが一番いいとか言うんですよ。まあ、もうちょっと大きくなってから、働くのがいいとか……。
 私の友達にも、『母親が働いていると、子どもがちゃんと育たないよ』って言われちゃって。マスター、変でしょ、そういうのって。
マスター:まあね。ほんでもよ、そう思うなら、働くのやめりゃーええがね。無理して働くことないに。
明希さん:ええ、マスターは女も働くべきだと言うかと思ったけど?
マスター:あのね、仕事をすることが、なんでも良いことだとは、わしは思っとらん。仕事やらんでも、それなりの生活ができるなら無理する必要はないがね。働かんとお金が要る、働くことで生活が楽しい、生き甲斐もある……。まあ、なんでもいいけど、明希ちゃん自身が本当に働きたいのか、働く必要があるのか?それを考えることだわな。
明希さん:そうかあ。でも、働くと、家の外へ出られるし、色んな人と出会えるし、つらいこともあるかもしれないけど楽しいんだよね。
マスター:それなら、絶対に働くべきだな。男もいやいや働いている奴が多いんだな。それに比べれば、働くことが楽しいとか、言えることはすごく良いことだわ。
明希さん:でも、朔ちゃんがねえ。
マスター:彼だけじゃなくて、妻が仕事にいくのを嫌がる男は多いわ。まず、妻が給料を持ってくることで、自分の立場が「劣位」になると勘違いしている男は多いなあ。給料の多寡で妻や夫を見下すような人間関係なら「解消」した方がええぞ。お互いが、給料を持ってくることで、依存して、主従の関係にならんですむ。男もきちんと考えて、妻と関係を持たなくてはいけなくなるわな。甘えは許されないから、鍛えられるんだよ。いいねえ、緊張感があって。
明希さん:うわ、過激。
マスター:それと、子どもを育てる上では、夫婦がいるなら、ちゃんと二人で育てる方が良いに決まっている。わしの経験から言うと、一番手のかかる、乳児から小学校へ上がるまでを父母でしっかり育てることが大事だな。だいたい、日曜日パパでははっきり言って意味がない。何にもしないなら、いてもいなくても一緒だわ。とりあえず、親なら、毎日、家事と育児を少しでもやることの方が重要だ。わしは「口より手」「能書きより性能」というのが口癖だった。かっこいい育児論を語るより、茶碗一つでも洗いなさい!っちゅうことだ。
明希さん:マスターって昔、勤めてた会社で、男にも育児時間を!って要求したんでしょ。
マスター:ほうだよ。めちゃくちゃバッシングがあったわな。でもよ、おもしろかったわ。何でか言うと、バッシングの8割は女の人だわ。『家の主人では考えられません』とね。話していくと、『うらやましいワ』ということだな。
明希さん:へえー、そうなの。
マスター:男性からは、ウチの会社では上司に理解がないからダメだとか、あなたは元気ですね……と愚痴だったりするんだわ。案外、夫が育児や家事をやっているのを「やっかみ」で、批判非難する人は多いんだな。
明希さん:へえ、おもしろい。
マスター:だって、保育園へ荷物いっぱい持って子どもを預けに行く夫は、それだけエネルギーがあり、子育てにもしっかり関われる能力があるだろ! しんどそうだなあと思いながらも、妻なら、うらやましくないはずがないがね。
明希さん:でも、そういうことを朔ちゃん、分かってくれるかなぁ?
マスター:世界の中心で愛をさけんだ仲だろう!まあ、いっぺん叫んだれー「朔ちゃん、好きよ」って。


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