この授業は、ボクが今年家庭科専科でこだわっている「食文化と世界」というテーマの実戦。
学区の中には外国人の人が沢山入るはず。でも、たぶんそんなに親しくはしていないし、親しくする必然性も子どもには無い。いくら国際理解教育といっても、そんなのはお説教であり、実際に国際理解教育なら、コソボからはじまって北と南の世界の問題を避けられないはず。そういうことを棚上げして国際理解もないもんだ。
だから、ボクはそんなだいそれたことをかんがえずに、韓国のちぢみという「韓国風のお好み焼き」が美味しいと言う子どもの話から、それなら、だれか韓国の人に来てもらって、作って食べよう!ということにした。
国際理解なんていっても、こんな美味しいものを作れる人を理解したら、それが国際的だったと言うことだけの話にしたかった。李さんという30代の女性(母親でもあり、労働者でもある)を、子どもに紹介してもらって、お会いして、主旨を話して
快く引き受けてもらった。校長に、「いいというにきまっているよね?」というと、果たして「いいよ」と言った。
さて、今日は、朝、8時前に出勤して(つまり超勤)、フライパンやボールを洗い、包丁、ザルを確認。にんじんを千切りしておく。ニラ、生カキを準備し、6年1組の子ども達を待つ。みんな、朝から元気である。もう少し、元気がないと、こちらは助かるのだが、ハイテンションなので、ちょっとビビル。李さんは、9時少し前に来てもらって、準備。9時過ぎから、開始。
ニラをざくざくと切る。生カキを正体不明になるまで切り刻む。あと、にんじん、しょうゆ、塩を、小麦粉を溶かしたものに入れて、ごま油をひいて焼く。たれはしょうゆとごま油をニラのみじん切りとまぜてつくり、焼き上がったものにつけて食べる。これがおいしい。
李さんは「なぜ生かきをいれるかというと、私は釜山でそだったのですが、お母さんが港にくる美味しい海のものとして味をつけるからです。これは、私のお母さんと家族の味です。」といわれ、家族の味がコンビニの味になっている私達はちょっとシュンとしてしまった。まいった。
しかし、たべはじめるとがぜん子どもは「餓鬼」に変身し、教員の分まで、勝手に食べてしまったので、ボクはとても腹が立って、腹が減った。コニャロー!!!
その後で、チマチゴリに着替えた李さんから、韓国の話を聞く。子どもが、幼稚園や保育園のころから、自分で通うことや、親と先生には、尊敬の念を持つとか、でも、自己主張はきちんとしなくてはダメだと言われるとか、面白い話だった。いつもより、子ども達は興味深そうに聞いている。むろん、勝手にしゃべっている奴も少しはいて健全だった。
質問の中で、ある子どもが、「韓国の人は、日本をどう想っているか?」という質問が出た。ボクは、あらかじめ李さんには特に侵略戦争については「あえて」話をしなかった。ところが、「きびしいことをいいますが、日本の侵略には悲しい想いがたくさんあって、つい最近まで日本の歌や映画を聞いたり上映できませんでした……」という話になった。淡々と、話す李さんにボクは静かに感動した。侵略戦争のことを知らずに大人になるのは困るとボクは想っている。しかし、一人の韓国の大人からちぢみを作ってもらいながら聞く方がいいなあと想った。とにかく美味しい授業であった。
1999.10.30