『名探偵コナン』 「あの方」は誰だ。

『名探偵コナン』の単行本24巻においてその存在が示唆された黒の組織のボス あの方 の正体について本稿では迫ってみようと思う。

『名探偵コナン』に登場する架空の犯罪組織、通称黒の組織の総帥であり全ての元凶。
しかし間接的な登場だけであり、直々に描写されたことは一度もない。
その為名前、顔、年齢、性別、居住、国籍等は今でも謎に包まれている。

表舞台に出ることはないが各種ミッションの際には影から指示を送っている様子。
組織の幹部であるジン以上の慎重居士であり、不穏分子にはすぐさま多数の監視をつけ、いざとなれば幹部だろうと躊躇うことなく抹殺を命じる。
よく言えば慎重、悪く言えば臆病な性格と言える。
組織の女幹部ベルモット曰く「石橋を叩きすぎて壊しちゃうタイプ」とのこと。
特に組織を追うFBIきっての切れ者である赤井秀一を恐れており何度も暗殺を試みているがその度に煮え湯を喰わされている。
ただそこまで臆病なので、実は死亡工作をしている可能性もまた高い(赤井秀一も死亡工作を行っているため)


メールアドレスは#969#6261。@を使ってなかったり通常アドレスに使用できない#を使っていたりとなかなかお茶目である。
(作者がイタズラ防止の為に実際は使用できないアドレスを設定した為)
因みにこのアドレスは童謡「七つの子」のメロディーとなっている。
実際にボタンを押してみると七つの子が少し濁った感じのメロディーになる。


同じ青山作品である『まじっく快斗』における「あのお方」との関係は不明。


主なヒントとしては、


1.少なくとも単行本53巻-File8「釘とヘび」までには名前が登場している。
2.「青山剛昌とコナンファンの集い」というインタビューによれば Q:黒の組織について? A:正式名称はある。言うとボスの名前がバレちゃうので言えませんとのこと。
3単行本24巻-File7~11「黒の組織との再会」にて登場した.組織の一員ピスコ(大手自動車メーカーの会長・枡山憲三 享年71歳)が「長年仕えた」と語っている
4.組織の幹部の中でもベルモットがお気に入り (単行本42巻-File5~10「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」より) 
5.灰原曰く「ただでさえ信じがたい人物が浮かび上がって来るかもしれないんだから」 (単行本46巻-File7「封印」より)
6.組織は半世紀前から極秘プロジェクトを進めている(単行本 19巻-File9「狙われたボール」より)
7.灰原の研究の目的は死者を蘇らせるような夢のような薬ではなく、この地球のほとんどの人間にはその価値を見いだせない愚かしい代物 (単行本38巻-File2~4「夕日に染まったひな人形より」)
9.単行本のある巻を教えると、誰だかわかってしまう。作者曰く「この頃に『あの方』を決めた」とのこと(『ダ・ヴィンチ』5月号の名探偵コナン特集における佐藤健との対談より)


【主なあの方候補】


◇宮野厚司
 灰原の父親。灰原曰く「研究中の事故死だってお姉ちゃんは彼らに聞かされていたようだけど・・・」(単行本38巻-File2意外なお宝)
灰原の「ただでさえ信じがたい人物が浮かび上がって来るかもしれないんだから」というセリフから、
「まさか貴方でも私の父が黒幕だなんて予想もしないでしょう?」という意図あり。
阿笠博士は、過去に発明品の発表会で二、三度会ったことがあり「気さくで感じのいい男じゃったぞ・・・ワシの発明品も気に入ってくれとったし・・・」と言っている。(単行本39巻-File6「引き裂かれた友情」より)
しかし、自分が何の研究をしているかは阿笠には一度も話さず友人達に「自分の理論を認めてくれたスポンサーの大きな研究施設に行く」(単行本41巻-File10「ある来訪者の残した謎・・・」)と話しており、スポンサーというのも間違いなく黒の組織のことだと思われる。



◇烏丸蓮耶
 単行本30巻-File4~7「集められた名探偵!工藤新一vs.怪盗キッド」で名前のみ登場した故人でありモブキャラ扱いだが、
名前の「烏」が組織のイメージカラーである黒であり、さらにメールアドレスの「七つの子」を連想させること、
「半世紀前」に死を遂げたというのが組織の目的と関連していること等から疑われている。



◇常盤栄策
 単行本48巻-File9~49巻-File4「ブラックインパクト! 組織の手が届く瞬間」で実質名前のみの登場(顔が出たのは1コマのみ)。
黒の組織が選挙に出馬する土門康輝の暗殺を狙っていた際、コナン達が想定したターゲット候補の一人。
元々薬学に携わっており、組織に関する情報操作をするべく社会的地位を得る為に出馬し、対立するであろう土門を暗殺依頼したと予想されている。



◇鈴木史郎
 彼の年齢は「51歳」であり、丁度プロジェクトが始まる「半世紀前」の前後の年に誕生した事になる。
また、単行本16巻-File6~File9の「コナンvs.怪盗キッド」によれば鈴木家の家宝は「漆黒の星(ブラック・スター)」という名前の「黒」真珠であり、鈴木財閥はこの真珠を購入した60年前に創立されたと語られている。
「組織の正式名称であの方が誰だか分かる」という条件に当てはまる。
(この場合、正式名称が「鈴木財閥」となる。あるいは「漆黒の星(ブラック・スター)」辺りか)
また新一の親友である鈴木園子の家族であり、「信じ難い人物」という条件にも合致する。
しかし、単行本78巻File1~File7「漆黒の特急[ミステリートレイン] [発車/隧道/交差/終点]」が起きた際、ジンが鈴木次郎吉の事を「鈴木財閥の親玉」と表現したためこの説も少し怪しくなってきている。
(史郎本人に言及した訳ではないので少々微妙)



◇阿笠定子
 単行本12巻-File1~File3「月と星と太陽の秘密」に登場した阿笠博士の伯母。76歳の「高齢」であり「50年前」に死亡した兄・栗介(阿笠博士の叔父)の面倒を見ていた。
後述するアーント・アガサに関しても、aunt agasa=阿笠おばさんという説も。
阿笠博士曰く「昨年亡くなった」というが、シャロン(ベルモット)のような例があるので本当に死んだとは限らない。


◇大黒連太郎
 本人は登場していないものの不老長寿の伝説がある人魚の島の名簿に名前が載っていた。(単行本28巻-File6~File10「そして人魚はいなくなった」より)
烏丸と同じく名前が組織のイメージカラーである黒であること、服部平次によると昔の日本を動かしていた大物らしいことから表向きの仕事ではないかと言う説もあり、名簿には灰原(宮野志保)、ジン(黒澤陣)、ウォッカ(魚塚三郎)の名前もあったことから有力な候補として扱われている。
また組織の一味であるテキーラが絡んだ単行本12巻-File4~File6「ゲーム会社殺人事件」に大黒ビルという建物が登場している。



◇浅井成実
 単行本7巻File2~File7「ピアノソナタ『月光』殺人事件」の犯人でありコナンが唯一自殺させてしまった犯人である。その特異性をもって実はあの方なのではないかという突拍子もない予想がなされている。かなり無理があるのだが、浅井成実でググると「浅井成実 あの方」が候補に出るなど、意外にも関心が集まっているようだ。




【×あの方候補から脱落】


◇阿笠博士

 最有力候補だった。
ピスコ殺害時に的確に場所を把握できていたのは博士のみ、さらにはコナンのメカをはじめとするすごい科学力を持っていること、
身元不明の少年少女の身柄を偽って何の苦もなく小学校に編入させる……などが根拠であり、
今まで味方だった博士が元凶というギャップ狙いというのが定説。
アーント・アガサ(アガサ・カクテル)なる酒も存在する。材料は、・ホワイト・ラム = 60ml・ オレンジ・ジュース = 120ml ・アンゴスチュラ・ビターズ = 1dash
単行本8巻 -File2~File7の「闇の男爵[ナイトバロン]殺人事件」では蘭が「例えば犯人が阿笠博士だったりしたら……」と回想。
映画5作目の『天国へのカウントダウン』では10年後の顔を予想する機械で全く顔が変わっていなかったことから不老不死説も。


しかし2011年10月のクラブサンデーの公式ブログで「黒ずくめの組織のボスは誰ですか!?」という質問に、
作者が「阿笠博士じゃないよ(笑)」と答えた為この説は崩れた。


 作者としてはコナンとベルモットが対峙した際にそのやりとりを録音していた博士が銃声を聞いて慌てていたのを描いたことで否定したつもりだったのに、
以降も度々この説を唱える人がいたため、明確に否定する発言をしたらしい。
その後も公式ファンブックにおいて「黒の組織のボスのヒントは?」という質問に対して作者は「ヒントは・・・阿笠博士じゃありません!」と否定したりしている。
作中で最も不可解な存在であることや、滲み出る怪しさはどうしようもないので仕方ない。
「最初はあの方の正体は阿笠博士だったが、連載が長引いたことと、こうも代表的になるとサプライズ感がないので変更した」など説を唱えられることもある。
これの真偽はともかく、ここまで連載が長期化したことは作者も予想しえなかったのは事実であり、初期はジェットコースターに乗るジンなどのコメディチックさに出ている。


ちなみに、これは組織と関連性があるのかどうかは不明ではあるが、アニメ化に関して不可解な点がある。
阿笠博士のメインの回で、異常にアニメ化が遅れている回が存在するのだ。
それは月と星と太陽の秘密とイチョウ色の初恋の二本。
前者に関しては、1996年9月18日発売の単行本12巻収録であるが、アニメ化されたのは三年後の1999年10月11日・18日。
通常のコナンのアニメでは、単行本発売から一年ほどの間にアニメ化されるのだが・・・
実際に発売されたグッズとのタイアップ回だったというのが関係している可能性もあるが、それはそれでアニメオリジナルのアイテムを出せば済む話ではある(実際のアニメでも同様の処置がとられている)。


 ちなみにこの回、アニメ化がされた時期には すでに灰原が登場済みとなっている。
そのため、灰原は「興味がない」と留守番しており、原作通り事件に絡むのはコナン・元太・光彦・歩美・阿笠博士の五人となっている。
灰原がいても何ら問題がないのに、この改変に何か意味があるのだろうか・・・?
後者については、2003年2月18日発売の40巻に収録で、2005年11月21日・28日放送である。季節の都合(秋の事件)というのもあるだろうが、
それにしてもアニメ化の時期が遅すぎる(同時期に放送されていたのはすでに48巻収録の原作であった)
何かアニメ化を後回しにせざる事情でもあったのだろうか・・・?
ちなみに、両回ともに 阿笠博士の家族・過去が重要なテーマとなっている。 これは何か意味があるのだろうか・・・


◇工藤優作

 彼の執筆している「闇の男爵」と同名のウイルスが組織のウイルスとして使われていたこと、新一を上回る頭脳の持ち主であること、
さらには組織の大物であるベルモットが有希子と友人であったことなどの状況証拠があった。


しかし矛盾点も多く、『ダ・ヴィンチ』2014年5月号誌上において、作者が「優作はあの方じゃない」と明確に否定した。
なお、この誌上で作者は「もうこれ以上あの方の質問は受け付けません!だってわかっちゃったらつまらないでしょ」と言ったため、原作者サイドからの
有力情報は当面ないと思われる。


◇ジェイムズ・ブラック

FBIで赤井・ジョディらの上司。
ホームズの宿敵ジェームズ・モリアーティと名前が一致、名前に組織のカラ―であるブラック、
赤井が来葉峠で死んだことがホームズがライヘンバッハの滝で死んだ点と対応する等が怪しかった。
(黒の組織のモデルはモリアーティ一味という説あり)
物的証拠は薄いものの有力候補の一人とされていたが……。


しかし『異次元の狙撃手』で赤井に狙撃の依頼をしたこと、およびその後の原作における描写から、黒幕である可能性はグッと低くなった。
そして『ルパン三世vs名探偵コナン THE MOVIE』ではギャグシーンとして今までにない意外な一面も見せており、好々爺の面が多くなっている。
登場当初の彼の怪しい・頭の切れる姿は、FBIだと判明するまでのミスリードとして描きたかったものと思われる。


後に作者が読者に宛てた2015年の年賀状の中ではついに「ジェイムズはあの方ではない」と明確に否定している。


だが一方で、モリアーティ関連で一つ気がかりが情報があるのも事実である。
ジェームズ・モリアーティには 名前が同じ兄がいるのである。 そのため、ジェイムズ・ブラックにも全く同じ名前の兄弟がおり、
その兄弟があの方なのではないかという説がある。


◇円谷光彦

小学一年生とは到底思えない知識量、時にコナンを凌ぐ推理力・観察力(単行本20巻-File10~21巻-File3 「青の古城探索事件」)などがその例を疑い、
「光彦はAPTX4869を飲んで体が縮んだ組織のボスではないか?」とされることもある。
(たとえネタでも)インターネットでのあの方予想では決まって「光彦だろ」「光彦でしょ」と書き込まれることが非常に多い。


しかし冷静に考察すれば矛盾点もある。仮にそうだとして、表向きは毒薬とされている薬を自ら飲むのは考えにくい。
(作中の描写で、体が縮む効果を知っていたのは灰原くらいである。もっとも、組織のボスなのだから、
描写されてないだけでその効果を知っていたという可能性もある。また組織が不老不死と少なからず関連していることから、
若返りの薬として服用したという見方も取れる。この辺りに関しては、考察するときりがない)


また光彦には教師の両親と、中学生の姉の朝美がいるのだが、この家族に関しての説明はどうなる、あの方はチキンなのに光彦は作中危険によく巻き込まれている、などの点から厳しい。
仮に家族全員がグルで表向き家族のように見せているという強引な解釈も成り立たなくはないが、あまり説得力の無い解釈なのは明らかであろう。
後に作者が年賀状にて否定していることから、この説は崩れた。


【それ以外で地味に有力な説】

毛利探偵事務所の近くにある「喫茶ポアロ」のマスターが正体という説もある。
初期から「店名という名前」は出ていたことには違いなくポアロという名前も意味がないわけではない。
探偵事務所に近いので色々と情報も入手しやすいかもしれない。


参考文献
名探偵コナン 単行本
アニヲタWiki(仮)あの方(名探偵コナン)https://www49.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/7322.html
名探偵コナン全事件レポート編纂室http://websunday.net/conandb/top.html