ここでは、主に単行本40巻までの事件を詳細にまとめた公式ガイドブック「コナンドリル」を参考にしつつ、分析をしていきたいと思う。
名探偵コナンの事件
名探偵コナンのメインテーマと言えば事件である。ここでは事件について考察してみたい。作中では膨大な数の事件が発生しているが、このうち検証できた165件について書きたいと思う。
(1)事件現場について
まず事件の現場であるが165件の内訳は屋内110件屋外55件(事件現場が不明のものは発見現場でカウント)で、全体の67%が屋内で発生していることが分かる。さらに調べてみると最も屋内で事件が発生しやすい場所は被害者等の自宅で36件。一方屋外で発生しやすい1番事件が発生しやすい場所は観光地であり11件その次が路上で9件である。このことから意外にも観光地・路上といった人目につきやすい場所で犯行に及んでいる。人目の多い場所ほど実は目につきにくいという死角をついた事件が多いことが分かる。
2)事件の時刻
165件の事件の発生時刻を調べてみたところ午前3時から6時が8件・午前6時から9時が3件・午前9時から12時が5件・12時から15時が25件・15時から18時が33件・18時から21時が36件・21時から0時が29件・午前0時から3時が14件・不明が12件となっている。日が陰りだす18時から21時が最も多く早朝6時から9時にかけて最も発生率が下がること
が分かる。
では実際の社会ではどうか検証してみた。「平成23年の犯罪」によると犯罪の時間が判明している刑法犯411,613人のうち日中(朝6時から18時まで)に事件を起こした人数は241,998人で、夜間(18時から翌朝6時まで)に事件を起こした人数は169,615人であり59%が日中に事件を起こしていて夜間より多い。57%が夜間に事件を起こしている名探偵コナンの世界とは逆の結果になった。空想の産物である名探偵コナンは夜に事件が起きやすいという先入観(闇夜に紛れて犯罪を犯すネズミ小僧など)があって描かれているのではないか。
(3)被害者・加害者の男女比
被害者・加害者の男女比を見ると、被害者の内訳は検証できた191人のうち男性125人、女性47人、性別不明が19人、その他(商店・企業など)が9件であった(男性63%、女性24%、不明10%、その他5%)加害者の内訳は全160人のうち男性126人、女性34人であった(男性79%、女性21%)被害者も加害者も圧倒的に男性が多い事が分かる。
ここでも実際の社会ではどうか検証してみた。「警察白書平成22年度版」によると男性被害者は830,361人女性被害者は426,283人で(男性66%女性34%)加害者については「犯罪白書平成23年度版」によると男性加害者は253,464人女性加害者は69,492人で(男性78%女性22%)と名探偵コナンの世界と同じく被害者・加害者とも男性が圧倒的に多い事が分かる。
(4)被害者・加害者の年齢について
作中で年齢の算定が可能な被害者、加害者から算出した被害者の平均年齢は、31歳(男性被害者37歳、女性被害者25歳)で加害者の平均年齢は36歳(男性加害者40歳、女性加害者33歳)という結果になった。つまり検証した限りでは、コナンの世界では立派な大人がいちばん犯罪に走っているということだ。さらに下のグラフを見ていただければ分かるが、検証した限りでは14歳以下の刑事未成年者は登場しない。数名登場する未成年加害者も最年少でも検察官送致が可能な18歳である。さらに成人加害者の中にも心神喪失者はいない。つまり、責任能力のある人しか罪を犯さないということがいえる。これは、作品の根底に罪を犯したならきちんと法律に則って裁きを受けるべきであるという思想があることが窺える。さらに自殺で自分勝手に終わらせることもダメだということがコナンの言った「犯人を推理で追い詰めて、みすみす自殺させちまう探偵は・・・殺人者とかわんねーよ」というセリフからも読み取ることができる。ちなみにこの検証をしていて不思議に1番不思議に思ったことは、検証した限り被害者、加害者だけでなく登場人物という視点でみても作中に中学生が1人も登場していないということである。作中に中学生が登場する日はくるのだろうか?
(5)被害者・加害者の職業
検証の結果被害者も加害者もとにかく自由業者が多いということが分かった。これに学生を加えると被害者では59人(全体の30%)加害者では30人であった(全体の19%)。さらに加害者に関しては前述の2つにお尋ね者を加えるとなんと全体の約5割に到達してしまう。被害者では学生が1番多いがこれは作中の登場人物である少年探偵団のメンバーのコナン、灰原哀「CV林原めぐみ」、吉田歩美「CV岩居由希子」、円谷光彦「CV大谷育江・折笠愛」、小嶋元太「CV高木渉」が複数回襲われているからだ。次が物書きで8人(内訳は作家4人、脚本家1人、ライター2人、新聞記者1人)となっている。物書きが被害に遭いやすい理由は作中に登場するライター&新聞記者がスクープ屋っぽく、かなりヤクザなにおいのする人が多いからだろう。作中に登場したライターは2人とも恐喝していたし、新聞記者のアメリカ人は本国で訴訟を起こされまくっていた素行不良者であった。狙われて当然かもしれない。
(6)加害者と被害者の関係について
検証の結果被害者と加害者の関係は、職場や友人、サークル仲間といった身内関係か、親子・兄妹などの血縁関係、夫婦・恋人・愛人などごく親しい関係が多数あり限られた関係の中で事件が多発していることが分かった。突発的に事件に巻き込まれることはほぼ無く被害者加害者が無関係というのはたった2%しかない。つまりほぼすべてがなんらかの形で繋がっている身内の犯罪といえるのではないか。この項目でも実際の社会ではどうか検証してみた。上にも挙がっている「平成23年の犯罪」によれば刑法犯452,048人のうち面識なしは252,591人で55%が無関係であった。コナンで無関係な人が極めて少ないのは、作者青山剛昌が不条理殺人は書きたくないというポリシーがあるからだろう。
(7)殺人事件について
ここでは作品の代名詞でもある殺人事件について検証してみよう。なぜ代名詞と言えるのかというと検証した165件のうち殺人罪が適応される事件は131件である。なんと全体の79%の事件で殺人が起きているからだ。ちなみに現実の社会では「平成22年の犯罪情勢12」よると刑法犯の認知件数1,585,856件のうち殺人は1,067件でいかに名探偵コナンの世界で殺人が多いかが分かる。(グラフにしようかと思いましたが件数が少なすぎて表示が極めて見にくいため断念、殺人の割合はおよそ0.0006%)。コナンの世界で検証できた殺人事件の中で殺害人数を殺人犯の人数で割った1人あたりの平均殺害人数を算出してみたところ単独の男性の殺害人数は1.2人・組織犯は1.0人・単独の女性は1.8人であった。さらに女性は残忍な殺害方法を選ぶことが多いという傾向も表れた。例を挙げるならピアノの線とジェットコースターのパワーを利用して首を切断。「ジェットコースター殺人事件のひとみ(CV引田有美)20」最大限苦しませるために心臓ではなく肺を包丁で刺す。「雪山山荘殺人事件の中原香織(CV山田栄子)21」など例があるがおそらくワースト1は「青の古城探索事件の西川睦美(CV京田尚子)22」である。名探偵コナン史上最大人数である16人を殺害。3人を餓死させ、さらに13人を塔に閉じ込め焼殺するという残忍さである。このような事実からコナンの世界においては女性の方が凶悪犯であると言えるのではないだろうか。
参考文献
名探偵コナン公式ガイドブック・コナンドリル
平成23年の犯罪
警察白書平成22年度版