第1章 X線画像の形成



  1. コントラスト

     1.被写体コントラスト

     被写体コントラスト(subject contrast)に影響を及ぼす因子は、
      (a)被写体の厚さ
      (b)線減弱係数(実効原子番号、密度、X線質)
      (c)造影剤の使用
      (d)散乱線の有無    などがある。

     焦点の大きさ、管電流、増感紙は被写体コントラストに影響しない因子である。

     2.フィルムコントラスト

     フィルムコントラスト(film contrast)に影響を及ぼす因子は、
      (a)増感紙の使用
      (b)フィルムの種類
      (c)フィルム濃度(黒化度)
      (d)現像処理(現像温度、時間、処理液の組成)   などがある。

     3.X線写真コントラスト

     X線写真コントラスト(radiographic contrast)を改善する方法には、
      (a)管電圧を低くする(X線質)。
      (b)付加フィルタを薄くする(X線質)。
      (c)ガンマの高いフィルムを用いる。
      (d)増感紙を使用する。
      (e)高グリッド比のグリッドを用いる(散乱線)。
      (f)可動絞りで撮影範囲をできるだけ絞り込む(散乱線)。   などがある。
    焦点の大きさ、撮影距離、管電流、撮影時間はコントラストに影響しない因子である。
      
    X線画像コントラスト


  2. 画像の幾何学的成立

     1.拡大と歪み

     X線画像の投影歪みには、拡大による歪み、位置による歪み、形状による歪み、照射角度による歪みの4つがある。
     X線束中心線がフィルムに垂直入射する場合において、拡大歪みは拡大率が大きい程大きくなり、位置歪みと形状歪みは照射野内の周辺で最大となる。
     また、歪みは撮影距離が短く撮影範囲が大きくなるほど増大する。
     焦点被写体間距離をa、被写体フィルム間距離をbとすると、拡大率Mは、

                b
        M=1+ ―――
                a     である。

     焦点被写体間距離と被写体フィルム間距離が同じの場合は2倍拡大像が得られる。
     【例題】
     拡大撮影で50μmのX線管焦点を使用した場合、ボケの許容を0.2mmまでとすると最大拡大率は何倍が限度か。    解:5倍

     2.半影

              b
        H=F・――― = F・(M−1)
              a      である。

     【例題】
     焦点−背面肋骨間距離40cm、背面肋骨−フィルム間距離30cmの幾何学的配置において、2mm焦点のX線管を使用して胸骨の近接撮影を行うと、背面肋骨のボケは何mmになるか。   解:1.5mm
     拡大率1.5倍の撮影で、半影は0.3mmであった。焦点−被写体間距離を変化させないで拡大率2倍の撮影を行うと半影は何mmになるか。   解:0.6mm

     3.重積効果と接線効果

     重積効果接線効果によりX線像が形成される。
     二重造影像のリングシャドーはその一例である。


  3. 散乱線
     X線撮影の領域では、コンプトン効果が支配的である。
    散乱線は一般に前方散乱、側方散乱、後方散乱(背後散乱)に分類される。
     画質低下の原因となるのは前方散乱である。
     被写体から発生する散乱線によりカブリが生じ、そのためにX線写真コントラストや鮮鋭度が低下する。

     1.焦点外X線

     可動絞りはX線管からの焦点外X線を除去する。
     焦点外X線の低減は鮮鋭度の向上に効果がある。

     2.散乱線含有率

     散乱線含有率は照射野の大きさが増すとともに増加し、ある大きさ(400cm2)より一定になる。

     管電圧の上昇とともにコンプトン散乱は増加するが、散乱線含有率はほぼ一定である。

     3.散乱線の減少方法

     散乱線の発生を減少させる方法は可動絞りを有効に用いて照射野を最小限に小さくする方法、圧迫により被写体の厚さを薄くする方法、低電圧にて撮影する方法がある。
    また、後面増感紙の後に鉛板を貼ることにより、撮影台からの後方散乱線を除去できる。
     これらの方法は散乱線除去効果をあげることができる。

     4.散乱線除去法

     散乱線除去法として、グリッド法とグレーデル法(エアーギャップ法)がある。

     5.グレーデル法

     グレーデル法は被写体とフィルムとの距離を15〜20cm離して、被写体からの散乱線を除去する方法である。
     散乱線を除去するのでコントラストは向上するが、被写体とフィルムが離れるため、像の拡大に伴うボケが大きくなり、鮮鋭度が劣化する。
     グレーデル法は、高圧撮影、拡大撮影に応用されている。


  4. 鮮鋭度
     鮮鋭度低下の要因は主に幾何学的不鋭、運動による不鋭、感光材料による不鋭である。
     なお、鮮鋭度低下に大きな影響を及ぼすのは、半影と散乱線である。

     1.幾何学的不鋭

     幾何学的不鋭の主な原因は像の拡大に伴う半影である。
     鮮鋭度を良くするにはX線管焦を小さくする。
     焦点・フィルム間距離は鮮鋭度、解像度に関与し、長くすると鮮鋭度が向上する。
     被写体・フィルム間距離のみを長くすると鮮鋭度が低下する。

     2.運動による不鋭

     被写体の動きにより鮮鋭度が低下する。

     3.感光材料による不鋭

     鮮鋭度は増感紙の使用により低下する。
     鮮鋭度は高感度増感紙(感度が高い)ほど悪くなる。その理由は、感度を高くするほど蛍光体の粒子径が大きくなることや、蛍光体層が厚くなるからである。
     一般に、鮮鋭度と感度は相反する。
     増感紙・フィルムが密着不良のときMTFは低下する。
     X線の斜入によりボケが増大し、鮮鋭度が低下する。

     4.総合不鋭

     それぞれの不鋭の要因を集計したものがその撮影系の総合不鋭Utである。
     総合不鋭は一般に2乗和の平方根で表示されている。


  5. 解像度〔力〕
     解像度に影響する因子として、管球焦点の大きさ、グリッド、撮影距離、線コントラスト、露光量、現像条件などがある。
     解像力は被写体のコントラストが上昇すれば向上する。


  6. 粒状性および粒状度
     粒状性は画質を損なう原因となるもので、粒状性の評価はSelwynによって研究された。
     粒状性に関する画像の性質も鮮鋭度と同様なフーリエ解析によって取り扱うことができる。
     視覚的測定による表示方法は心理的粒状性、物理的測定による表示方法は物理的粒状性(粒状度)という。

     1.粒状性の構成

     X線画像モトル(X線写真モトル)はスクリーンモトルとフィルム粒状性とで構成される。
     スクリーンモトルは量子モトルと増感紙の構造モトルとで構成される。
     量子モトルはX線光子の統計的ゆらぎである。
     量子モトルは増感紙蛍光体に入射するX線量子数に関係する。
     増感紙の構造モトルは蛍光体層の厚さ、粒子径の均一性、分布に影響される。
     フィルム粒状性はフィルム乳材の形状や大きさに影響される。
     X線画像モトルはK.Rossmannによって研究された。

     2.粒状性を左右する因子

     モトル構成寄与率が最も高いのは量子モトルであり(70〜80%)、粒状性に大きく寄与する。
     粒状性は感光材料の感度に依存し、高感度システムほど量子モトルの影響が大きくなり、低下する。
     同一濃度のX線写真では、粒状性は高線量(低電圧)で撮影した方が向上する。
     総合感度が同一であれば、粒状性は高感度増感紙と低感度フィルムの組み合わせの方がよくなる。
     粒状性は濃度により変化する。
     同一感度の感材システムでは、増感紙のMTFが高くなると、低い場合に比べて、RMS値やWS値は大きくなるので、一般に粒状が目立つ。
     フィルムのガンマが大きいほど、すなわちコントラストが高いほど、RMS値は大きくなり、粒状性は一般に悪くなる。
     粒状性の優劣は低コントラストの信号検出能に影響する。

     粒状性は低温現像処理をすると向上する。
     粒状性に関係する因子には、X線光子数、ハロゲン化銀結晶の大きさ、増感紙の蛍光体組成、現像液の組成、写真濃度などがあり、定着液の組成は粒状性に関係しない。

目次    第2章


2011年4月作成