第6章 造影剤



  1. 具備すべき条件
     造影剤は周囲組織よりX線吸収の少ない陰性造影剤(空気、酸素、炭酸ガスなどの気体)と周囲組織よりX線吸収の大きい陽性造影剤(硫酸バリウム、ヨード造影剤)がある。
     陽性造影剤として硫酸バリウムやヨード造影剤がある。
     ヨード造影剤はイオン性と非イオン性に分類される。

     造影剤の具備すべき条件は、
    (a)周囲組織とのX線減弱係数の差が大きいこと。
    (b)生体に対して副作用が少ないこと。
    (c)検査後排泄されやすいこと。
    (d)化学的に安定であり、使用目的に合った性状を有すること。
    などである。

  2. 造影検査と造影剤

     1.消化管造影剤

     消化管造影にはバリウム造影剤(硫酸バリウム)とヨード系造影剤(ガストログラフィン)と陰性造影剤が用いられる。

     2.ヨード造影剤

     水溶性ヨード造影剤は血管造影尿路造影硬膜外腔造影関節腔造影造影X線CTに用いられる。
     非イオン性ダイマー型は、尿路血管造影、脊髄造影、造影X線CT、関節腔造影、子宮卵管造影に用いられる。
     水溶性または油性ヨード造影剤を用いる検査は子宮卵管造影気管支造影である。
     血管内に注入できる造影剤は非イオン性水溶性ヨード造影剤、水溶性ヨード造影剤、低浸透圧水溶性ヨード造影剤である。
     油性造影剤は経静脈性腎盂造影には絶対に投与してはならない。
     油性ヨード造影剤のみ使用される検査は、リンパ造影、唾液腺造影である。
     ヨード造影剤にはヨウ素固有のK吸収端(約33keV)がある。

     3.尿路血管造影剤

     尿路血管造影剤は非イオン性モノマー型が多く、他には、イオン性ダイマー型とイオン性モノマー型がある。
    (イオン性モノマー型は経静脈性の検査の適応が削除され、現在使用できる検査は、逆行性尿路造影のみである。)
     非イオン性モノマー型の浸透圧は血漿と同等もしくは若干高いレベルである。
     尿路血管造影剤は腎臓からほとんど排泄されるが、一部肝臓から胆道系へ排泄される。
     造影剤は血液脳関門(blood brain barrier,BBB)を通過しない。

     4.陰性造影剤

     陰性造影剤のみが用いられる検査は、後腹膜気腹造影、気縦隔造影、脳室造影である。

     5.造影剤注入量

     1回の造影剤注入量と秒間注入量は次表のごとくである。
    検査名 注入量 秒間注入量(ml/s)
    経静脈性DSAによる
    腹部大動脈造影
    30ml 15
    脳血管造影 5〜9ml 3〜8
    下肢静脈造影 30〜50ml 1〜2 または用手
    経静脈性尿路造影 30〜40 注入時間1〜2分
    逆行性尿路造影 20〜40 1〜2
    ERCP 膵管2〜4ml
    胆管5〜15ml
    リンパ造影 5〜10 0.003〜0.004
    唾液腺造影 顎下腺:1.0〜1.5ml
    耳下腺:1.5〜2.0ml
    腹部造影X線CT 腎:50〜100ml
    肝胆膵:100〜150ml
    急速静注法で、1〜5ml/s
    頭部造影MRI 0.2ml/kg(体重60kgとして12ml)

  3. 硫酸バリウム造影剤
     硫酸バリウム製剤の化学式はBaSO4である。
     硫酸バリウム製剤の必要条件としては、
    (a)流動性がよいこと。
    (b)付着性が高いこと。
    (c)沈澱しにくいこと。
    (d)胃液や腸液で凝集しにくいこと。       などがある。

     硫酸バリウム製剤は消化管内においては、安定した化合物である。
     硫酸バリウム製剤は粒子状で水に溶解しない懸濁液である。そのため、消化管壁よりの吸収はなく、肛門より体外へ排泄される。
     硫酸バリウム製剤の副作用として便秘を起こしやすいので、検査後に下剤(クエン酸マグネシウム)を処方するのが望ましい。


  4. ヨード造影剤の副作用
     副作用をおこす原因は、
    (1)造影剤の物理的特性、(2)造影剤の化学毒性、(3)アナフィラキシ−様反応、(4)心理的因子の4つに大別される。
     (1)と(2)は造影剤の高浸透圧性と非親水性ならびにイオン負荷が関係する用量依存性の反応であり、(3)は化学伝達物質の遊離、抗原抗体反応などの活性化作用といった非用量依存性のアレルギー反応である。
     しかしながら、実際に生じる副作用の各症状は、必ずしも単独の発生機序で発現するのでなく、むしろ心理的因子も含めた様々な要因が複合して生じている。
     造影剤の副作用として、くしゃみ、発疹(蕁麻疹)、熱感、血管痛、嘔吐、冷汗、顔面蒼白、血圧低下、呼吸困難などが発現する。
     上記の副作用の中で、最も重篤なのは呼吸困難である。
     上記の副作用の中で最も発生頻度の高いのは熱感である。
     非イオン性造影剤は血中でイオン化しないため浸透圧が低く、血液に近いので副作用が少ない。

     非イオン性造影剤(イオパミドール等)はイオン性造影剤(ウログラフィン等)よりも、副作用の発現率が小さい。
     非イオン性造影剤はヨードを用いているため、ヨード過敏症への配慮が必ず必要である。
     非イオン性造影剤による血管造影では疼痛、熱感が少ないので、体動が減少し、静脈相のよいサブトラクション像が得られる。
     水溶性造影剤を血管内に注入するときは体温と同程度に温めた方がよい。
     水溶性造影剤は油性造影剤に比べて安定であり、かつ安全である。


  5. 造影検査前の注意事項
     造影剤の投与に際し、造影剤副作用歴、アレルギー歴(特に喘息)、心疾患の既往に注意する。

  6. 造影剤導入方法

     1.内服

     造影剤を経口投与する検査は経口胆嚢造影、消化管造影(小腸造影など)である。
     胆嚢造影の体内導入経路は腸管より吸収され、門脈を経て肝臓から排泄され胆嚢に蓄積される。
     検査前日に造影剤が投与される検査は経口胆嚢造影法である。

     2.注射および穿刺

     ディジタルサブトラクションアンギオグラフィ排泄性尿路造影(腎盂造影)、胆嚢・胆管造影、造影X線CT検査などは経静脈性に造影剤を注入する検査である。

     3.注入

     逆行性に造影剤を注入する検査は注腸造影(大腸造影)、子宮卵管造影、ERCP逆行性腎盂造影である。
     造影剤自動注入装置を使用する造影検査は、血管造影(腹腔動脈、下腸間膜動脈、肺動脈、腎動脈など)、造影X線CT検査、リンパ造影である。

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2010年07月作成