第13章 血管造影法



  1. 血管造影法の方法

     1.カテーテル法

     セルジンガー(Seldinger)法は皮膚を切開し血管を露出することなく、経皮的にガイドワイヤによってカテーテルを血管内に挿入する方法である。
     血管造影法は目的血管の起始部にカテーテルを挿入して造影剤を注入し、連続撮影を行う方法である。
     高速連続撮影は気管支動脈造影法、選択的肝動脈造影法など血管造影検査には必須の撮影法である。
     セルジンガー法による血管造影法は腫瘍や血管の治療にも用いられる。
     カテーテル血管撮影の手技は診断目的のほか塞栓療法のような治療目的にも使用される。
     カテーテル法では、血液が凝固して血栓を生じる可能性がある。
     血管造影に空気等の陰性造影剤は禁忌である。
     大腿静脈から挿入したカテーテルは、下大静脈、腎静脈、肝静脈、頸静脈へ直接到達できるが、上腸間膜静脈へは到達できない。

     2.選択的動脈造影法

     セルジンガー法による選択的動脈造影法の利点は造影目的外の血管像との重複が避けられること、造影剤の注入量の減少、および造影剤の注入圧力を低くできることである。
     造影剤の注入は造影剤注入装置が用いられる。

     3.前処置

     腹部大動脈造影に際して必要な術前処置は、検査同意書の取り付け、出血傾向のチェック、アレルギー歴のチェック、検査前絶食などである。
     しかし、腸内の糞やガスを取り除くための高圧浣腸は一般的に行わない。


    [内頸動脈造影(L)]

  2. 脳血管造影法

     1.サブトラクション法

     サブトラクションは骨陰影など血管陰影以外の陰影を除いた血管像を得る方法である。
     フィルムサブトラクション法は造影像だけをポジ像で表示する方法である。
     サブトラクションを行うと骨陰影は除去される。

     2.頭部連続血管造影法

     頭部血管造影で含める時相は造影剤注入以前の時相、動脈相、毛細管相、静脈相である。
     特に、造影剤注入以前の時相はサブトラクションを行うために必要である。

     3.椎骨動脈造影法(VAG)

     椎骨動脈造影法は通常は大腿動脈からカテーテル法で行われる。また、前後方向撮影でのX線中心線は頭尾方向30゚で斜入させる。
     小児では、より安全性が高いセルジンガー法が多用させる。

     4.総頸動脈造影法(CAG)

     内頸動脈撮影で造影される血管は眼動脈、前大脳動脈、中大脳動脈、後交通動脈である。
     外頸動脈撮影で造影される血管には中硬膜動脈がある。

    [冠動脈造影(LCA-RAO)]

  3. 心臓カテーテル造影検査法

     1.心臓カテーテル造影検査法

     心臓カテーテル造影検査法では、通常、静脈を切開してセルジンガー法でカテーテルを挿入する。
     画質を重要視するため、小口径I.I.を用いる。
     左心室造影像から駆出率や拡張と収縮期の左室容積の解析ができる。
     心臓シネ撮影では、フィルターで患者の皮膚で吸収される低エネルギーX線を除去するフィルタリングを行っている。また、ディジタル画像を周波数処理する場合もフィルタリングと呼ばれる。
     ディジタル装置の場合、階調処理できるので、被ばく低減、X線管負荷軽減を目的として10〜20kV高い管電圧を使用することができる。
     用いられるカテーテル径(Fr:フレンチ)の表示は外径を表している。

     2.心臓大血管造影法

     心臓大血管造影法はセルジンガー法でカテーテルを心臓まで挿入し、DSAやX線映画撮影法等を用いて撮像する方法である。
     肘静脈から造影剤を注入すると、まず鎖骨下静脈が造影され、次に上大静脈を経て、心臓(右心房、右心室、左心房、左心室)を造影し、胸部大動脈が造影される。

     3.冠(状)動脈造影法

     Judkins法とSones法にて、経皮的にカテーテルを挿入する。
     冠動脈の各枝の重なりを防ぐことと血管を立体的に観察するために、通常は多方向から撮影する。
     左冠動脈の支配領域は右と比較して広い。
     冠動脈造影における1回注入当たりの造影剤使用量は6〜8mlである。


  4. 腹部大動脈造影法および末梢動脈造影法
     腹部血管造影法は主に正面1方向撮影が行われ、増感紙フィルム系ではカットフィルムが用いられている。
     腹部血管造影には拡大撮影が併用されている。
     腹部血管造影には大照射野が必要とされるので、I.I.の視野は大口径がよい。

     1.腹腔動脈

     腹腔動脈は第1腰椎上縁から分岐し、左胃動脈、脾動脈、総肝動脈の3枝に分岐する。
    さらに、胃十二指腸動脈、背膵動脈などに分岐する。
     腹腔動脈造影における1回当たりの造影剤使用量は30〜40ml、IADSAでは15〜20mlである。

       
    [腹腔動脈造影像]     [上腸間膜動脈造影像]

     2.上腸間膜動脈

     上腸間膜動脈は十二指腸動脈、右結腸動脈、中結腸動脈、空腸動脈、回腸動脈に分布する。
     上腸間膜動脈造影にて、造影される血管枝は小腸、上行結腸の血管、門脈である。
     上腸間膜動脈造影における1回当たりの造影剤使用量は30〜40mlである。

     3.下腸間膜動脈

     下腸間膜動脈は左結腸動脈、S状結腸動脈、上直腸動脈と分布する。

     4.下肢動脈造影

     下肢動脈造影では、感度補償型増感紙が用いられる。

     5.腕頭動脈

     腕頭動脈は鎖骨下動脈と総頸動脈に分かれる。


    [下肢静脈造影]

  5. 静脈造影法

     1.下大静脈造影

     下大静脈造影は大腿静脈から経カテーテル法で造影する。

     2.下肢静脈造影

     下肢静脈造影(上行性静脈造影法:ascending venography)は足背静脈から用手注入で順行性に造影する。
     両下腿外顆上部・膝上部を駆血帯で締め、非イオン性ヨード造影剤30〜50ml程度をゆっくり用手注入する。
     造影剤注入時に足首に駆血帯を巻いて締めれば、表在静脈への還流が遮断され、深部静脈が造影される。駆血帯をはずすと表在静脈が造影される。
     患者の体位は半立位とすることが望ましいが、仰臥位でも検査可能である。
     検査は、X線TV透視下で施行する。
     下肢静脈造影の適応となる疾患は肺血栓塞栓症である。


  6. リンパ造影法
     リンパ造影法は悪性リンパ腫の進展度判定に有効である。
     リンパ造影法はキンモンス法にてリンパ管に油性ヨード造影剤(ウルトラフルイドリピオド-ル)を注入する。
     キンモンス(Kinmonth)法は色素により末梢リンパ管を識別して、造影剤自動注入装置を用いて造影剤10mlを30分〜60分かけてゆっくり注入する。
     リンパ管造影は、造影検査の中で最も秒間造影剤注入量が少ない検査で、0.1〜0.2ml/minである。
     リンパ造影では、撮影は注入終了後と24時間後に行われ、造影剤注入直後に撮影すればリンパ管が、24時間後に撮影すればリンパ節の造影像が得られる。
     リンパ造影においては検査後24時間の安静臥床は必要としない。
     傍大動脈リンパ管は胸管を経て静脈角に注ぐ。


  7. 血管連続撮影の点検事項
     撮影の直前に点検する事項は、撮影管電圧、連続撮影プログラム、造影剤自動注入装置の注入条件と セットの確認である。
     血管撮影の始業点検を行なう装置として、造影剤自動注入装置、フィルムチェンジャ、患者テーブル、コントローラ計器などがある。
     造影剤の血管外漏出の検知に、赤外線やX線が用いられている。前者の場合は、穿刺部位を赤外線センサーにて監視するシステムである。

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2011年5月作成