第16章 ディジタル画像



  1. ディジタルX線画像

     1.特徴

     ディジタルX線画像は画像処理が容易であり、保存画像の検索時間は短縮可能である。
     また、記憶素子への書き込みは可能で、2進数を4進数に変換して保存すると記憶媒体は少なくてすむ。
     ディジタル画像は光ディスクや磁気ディスクに保管され、記憶・検索を行うのに適している。
     観察はCRTモニターでも行える。  また、ディジタル画像は転送保管の際に画像劣化が生じにくい。
     ディジタルイメージはアナログイメージ より解像力が悪い。

     2.ディジタル画像

     アナログ信号は変数値が連続に変化したときの関数値である。
     ディジタル信号は変数値が離散的に変化したときの関数値である。
     ディジタル化には、標本化と量子化の二つの操作を行う。標本化をしてから量子化が行われる。
     
    標本化(sampling)は画像を画素(pixel)に分割する操作である。
     量子化は画素の濃淡値を離散的な値にする操作である。
     ディジタル画像は画素から構成される。
     画素数は「横方向の列数×縦方向の列数」で表現され、マトリックスサイズという。
     解像度はマトリックスサイズが大きく、画素数(ピクセル数)が多くなる程向上する。
     階調数(グレースケール)は量子化する数値(画素値)の範囲である。
     画素値は白から黒までをビット数で表現する。
     濃度分解能は量子化レベル数で決まる。
     アナログ値をディジタル値に量子化したとき、両者の値の差が量子化誤差である。
     階調数が多いと量子化誤差は小さい。よって、量子化数はディジタル画像の濃度分解能を決定する因子である。
     標本化定理は、標本化間隔(または、ピクセルサイズ)をΔdとすると、空間周波数が1/(2Δd)までの画像は表現できるが、それ以上に細かな画像は表現できないことである。
     この空間周波数1/(2Δd)をナイキスト周波数という。よって、ナイキスト周波数は標本化間隔に依存する。
     標本化間隔が小さいほど空間分解能はよい。
     標本化間隔がアパーチャーサイズより大きければ雑音特性は良くなる。
     データ量は画素数と階調数に比例し、次式で計算される。 データ量=横の画素数×縦の画素数×階調数(bit)
     
       

     3.A/D変換

     ディジタル化はA/D変換器で行う。
     アナログ信号を量子化し、ディジタル信号で表すと量子化雑音を生じる。
     A/D変換の変換周波数が十分でない場合はボケの原因となる。
     対数アンプを使用すると観察域は拡大する。

     4.画像処理

     ディジタル画像の画像処理には、加算平均によるSN比改善、高周波数の増強により輪郭強調、階調処理によるコントラストの調整、スムージングによるノイズの減少などがあり、これらは画質を向上させる。
     ダイナミックレンジ圧縮処理によって診断可視域が広がる。
     画像処理の空間フィルタに属するのは、ラプラシアンフィルタ、平滑化フィルタ(smoothing filter)、Sobelフィルタ、メディアンフィルタなどがある。
     時間フィルタに属するのは、画像加算処理とリカーシブフィルタである。
     
    アンシャープマスキング法は高周波成分の強調手法の一つで、ボケマスクを使用して周波数処理を行う。
     平滑化フィルタを用いて、画像の平滑化を行うと高周波成分がカットされ、鮮鋭度の悪い画像となる(高域特性の劣化)。
     アベレージングは積分処理によりノイズを低下させ、SN比を向上させる。
     サブトラクションでは、信号は減算され小さくなり、ノイズは加算され大きくなるので、SN比は大幅に低下する。
     2値化法は面積計算に利用できる。

     5.画像圧縮

     画像データの圧縮方法には可逆圧縮と比可逆圧縮がある。
     可逆圧縮は画像を復元すると完全に元の画像に戻る。
     画像データを非可逆圧縮すると、オリジナルのデータの一部が失われる。
     画像圧縮を行うと画像ファイル自身の容量が小さくなるので、記憶媒体により多くの画像ファイルを記憶することができる。

     6.CRT診断

     CRTの画質が診断能に影響する。
     CRT診断の場合、診断能が周囲の照度に影響される。
     ディジタル画像なので遠隔医療にも応用できる。
     また、フィルム診断より空間分解能が悪いので診断能は低下するが、階調を変えて観察できるので診断能が向上する場合も有り得る。

  2. ディジタルラジオグラフィ
     ディジタルラジオグラフィ(Digital Radiography)は通常のX線フイルムにおける濃度をディジタル表示したもので、X線イメージをコンピュータでサブトラクションすることも可能である。
     ディジタルラジオグラフィは一般に被曝線量が少ないが、高感度のスクリーン・フイルム系を用いた撮影より被曝線量が多い場合も有り得る。
     ディジタルラジオグラフィに関係するものは、マスク透視法、時間差法、イメージインテンシファイア、イメージングプレート、階調処理などがある。
     ディジタル画像は線量が少ないと量子モトルの影響によりノイズが目立つ。つまり、画質は照射線量(撮影線量)に依存する。

  3. イメージングプレートによるコンピュータX線画像法

     1.原理

     コンピュータX線画像法(Computed Radigraphy,CR)の空間分解能は書き込み、読み取りのマトリックスサイズに左右される。

     2.特徴

     CRの特徴は、
    (1)被曝線量の軽減が可能である。
    (2)エネルギーサブトラクションができる。
    (3)撮影範囲はイメージングプレートのサイズによる。
    (4)イメージングプレート(IP)のカセッテへの装填は遮光する必要なく、明室で処理できる。
    (5)画像の転送ができる。
    (6)入力に対する出力の直線性はスクリーン・フィルム法より優れている。
    (7)CR画像はDSA、MRI、RI、CT画像より空間分解能の優れたディジタル画像である。
     などがある。

     CRでは、サブトラクション処理はできるが、DSAのように、画像読み取りが瞬時に行えないので、リアルタイムの観察は不可能である。
     また、スクリーン・フィルム系の半分以下の線量で撮影可能であるが、画質を考慮すれば、線量はスクリーン・フィルム系とほぼ同等である。
     これは、線量が多くなるほどSN比のよい画像が得られるからである。
     CR画像はディジタル画像であるから、スクリーン・フィルム系に比べれば空間分解能は劣る。
     長期間使用しないイメージングプレートは、自然放射線によるノイズのため若干コントラストの低下が考えられる。しかし、自然放射線による影響を消去後使用すれば問題ない。
     CR装置の読みとり条件設定のための先読みで照射野の認識処理をしている装置では、濃度の影響はない。しかし、これが行われていない場合は、濃度に影響を与える。

     3.画像処理

    (i) FCR(FUJI CR)による非鮮鋭マスク(unsharp mask)処理
     非線形処理(周波数タイプにより処理を変えること)を行うことによって、線形処理よりはノイズを減少させることができる。
     強調周波数はボケマスク像のマスクサイズ(周波数ランク)によって影響を受ける。
     周波数処理は周波数ランク、周波数タイプ、周波数強調度によって行われる。

     4.実際

     FCRではイメージングプレートは乳房用とそれ以外の撮影部位用の2種類がある。
     CRは単純撮影、断層撮影、上部消化管撮影など、スクリーン・フィルム系に用いられている撮影法の全てに適応されている。
     ダイナミックレンジが広く濃度と露光量が直線関係であるのでX線量の多少の過不足については濃度補正ができるが、撮影条件を考慮する必要がある。

  4. DSA

     1.DSAの種類

     DSA(ディジタルサブトラクションアンギオグラフィ,Digital Subtraction Angiography)の時間差分法(テンポラルサブトラクション)に用いられるモードとして、
    (a)コンティニュアス・イメージ・モード(CI)
    (b)パルス・イメージ・モード(PI)
    (c)タイム・インターバル・ディファレンス・モード(TID
    などがある。
     造影剤の投与は動脈、静脈ともに行われ、経動脈性DSA、経静脈性DSAがある。
     経動脈性DSAは、経静脈性DSAに比べ、
    (1)造影剤の濃度や量を減らすことができる。
    (2)従来の血管造影(フイルムを用いる血管造影)よりも低濃度の造影剤が使用可能である。
    (3)IVRの検査時間短縮に有用である。

     2.特徴

     DSAの特徴として、
    (a)患者のリスクが小さい。
     カテーテル操作や造影剤の急速注入による危険性が少なく検査後の処置が容易である。つまり、低侵襲性であるので、外来で検査可能である。
    (b)リアルタイムで画像観察ができる。
     サブトラクションにより、骨陰影を除いた血管像が得られる。
    また、サブトラクション像の実時間観察(リアルタイム)が可能で、撮影終了と同時に画像が得られる。
    (c)コントラスト分解能が高い。
    (d)空間分解能が低い。
    (e)高分解能、高検出能のI.I.-TVや広視野のI.I.が必要。
    (f)体動や呼吸によるマスク像とライブ像のズレが画質に大きな影響を与える。
    などがある。

     DSAではサブトラクションを行うためにマスク像が必要である。
     検査後にマスク像を変えてサブトラクション像を作製することができる。
     DSAはフィルム方式に比べフィルム枚数を減少させるのに有用である。
     DSAは血流速度の比較をすることができる。
    [DSAの原理]

     3.性能評価

     DSAは通常の血管撮影に比べて、一般にコントラスト分解能が優れ、空間分解能が劣る。
     空間分解能は視野を広げるため大口径のI.I.を使用すると低下する。
     可変型I.I.の入力視野が小さいほど出力の輝度が低下するため、被曝線量は多くなる。
     DSA画像で空間分解能に関係する因子は、X線管焦点サイズ、I.I.−TV系のMTF、マトリックスサイズである。
    また、X線量は
    ノイズと関係があり、被写体の動きは鮮鋭度に関係するが、両者とも間接的に空間分解能に関係がある。
     DSAの被曝線量は通常の血管造影より多い。
     DF(Digital Fluorography)によるDSAでは、撮影視野はX線蛍光増倍管の入力蛍光面の大きさで決定される。
     DSAのハードとして、AD変換器やフレームメモリーがある。

     4.アーチファクト

     腸管内ガスの移動は障害陰影(artifact)となって画質を損なう。
     拍動や呼吸による動きのある部分にはサブトラクション応用が困難なこともある。
     アーチファクトを低減あるいは補正する方法として、
    @リ・マスキング処理、Aピクセルシフト処理、Bカーディアックサブトラクション処理の3種類がある。
     ハレーションはDSAの画質低下の原因の一つで、発生したらサブトラクション処理しても除去できない。


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2008年03月作成