第18章 X線CT
(X-ray computed tomography)




  1. 原理
     CTスキャナはX線照射した目的部分のX線減弱係数値をコンピュータで算定させ、画像を構成するものである。
     CTは横断面(軸位面)の画像が基本である。
     三次元CTにより、複数枚の軸位断層像のデータから任意の断層面を再構築できる。
     ウインドレベルを上げると骨内部が見える。
     ウインド幅を狭くするとコントラストが高くなる。
     部分体積効果はボクセルデータを2次元表示するために標本化し、量子化によりボクセル内のCT値を平均化するので生じる。
     そのために、CT値の測定が不正確になる。また、組織の境界が不明瞭になったり、小さな組織を描出できないことがある。
     スライス厚を薄くすると部分体積効果の影響が減る。
     植込み型ペースメーカの一部の機種において、X線CT検査で設定内容のリセットや、オーバーセンシングが起きる不具合事象が報告されている。

  2. CT値
     CT値は水を基準として、水のCT値を0、空気を-1000にしている。
     人体各組織の平均的なCT値は、@骨・石灰化、A凝血血液、B軟部組織(甲状腺>肝臓)、C脳脊髄液・血液、D水、E脂肪、F空気の順に低い。
     脳灰白質と脳白質では前者の方がCT値は高い。
     新鮮な脳出血と脳梗塞では前者の方がCT値は高い。
     心臓と肺臓では前者の方がCT値は高い。
     肝のCT値は脂肪肝では低下し、肝嚢胞では水に近い値となる。
     肝内胆管の拡張は単純CTで低吸収域として描出され、造影CTでより識別されやすくなる。
     肝内胆石は高いCT値で描出される。
     胆石には、ビリルビン系結石とコレステリン系結石があり、前者は肝実質より高吸収域として描出されるが、後者は一般に肝実質より低吸収を示す。
     骨転移には低吸収域(溶骨性転移)と高吸収域(造骨性転移)を呈するものがある。

  3. アーチファクト
     スキャン時間が長いと患者の体動によりアーチファクトが生じる。
     胸部検査において、呼吸停止位相が正確でないと、患者の体動によるアーチファクトが生じる。
     胃内のガスは蠕動によってアーチファクトの原因となる。
     腸管に残存するバリウム製剤はX線吸収が大きくてアーチファクトを起こす。
     アーチファクトの種類としてリング状アーチファクト、メタルアーチファクト、シャワー状アーチファクト、モーションアーチファクト、ビームハードニングアーチファクト、階段状アーチファクトなどがある。
     下図ようなリング状アーチファクが生じる原因は、検出器チャネルの不良(出力値異常)などである。
      
    [リング状アーチファクト]    [リング状アーチファクト]
     モーションアーチファクトは心電図同期再構成や体動補正処理を行うと低減する。
     下の右図の骨三次元CT画像みは、歯牙の金属からのメタルアーチファクト(矢印)が認められる。
     このアーチファクトを軽減する方法は咬合平面とスキャン平面を一致させる方法があり、体軸方向のアーチファクトを軽減させることである。
    [メタルアーチファクト]
     階段状アーチファクト(stair-step artifact)はヘリカルCT特有のアーチファクトで、スライス面に対して斜走する血管や骨(CT値が高い物質)を三次元表示したときに周期的に凸凹が現れる現象である。
    このアーチファクトを軽減する方法はスライス厚を薄くする、再構成間隔を小さくする、ヘリカルピッチを小さくすることである。
     脳底部のアーチファクトを低減する方法は線質硬化補正処理や薄いスライス厚を用いることである。
    [階段状アーチファクト]

  4. 撮影条件
     シングルヘリカルCT装置で同一範囲を下表の条件で連続スキャンする場合、被ばく線量が最も多くなる撮影条件はaである。
     管電流
    (mA)
    回転時間
    (S/回転)
    スライス厚
    (mm)
    寝台移動速度
    (mm/S)
    条件a100121
    条件b100222
    条件c100555
    条件d200112
    条件e200112

  5. 単純CT

     1.頭部CT

     頭部CTでは、180〜200mm径のFOVを用いる。
     画像の対称性は重要なので、正確なポジショニングを行う。
     患者の頭部の整位によっては、ガントリーを傾斜させて基準線の位置決めすることがある。
     ノイズ低減のために低周波数用関数を用いる。
     頭部CTのルーチンの検査では、副交感神経遮断剤を用いる必要ない。
     頭部単純CTでは、脳膿瘍、脳梗塞、脳壊死、脳浮腫は低吸収域を示し、脳出血(急性期)は通常高吸収域を示す。
     クモ膜下出血は脳漕の高吸収域として描出できる。
     硬膜外血腫は脳表に沿った凸レンズ形の高吸収域として描出され、時期により高・等・低吸収域となる。
     硬膜下血腫は脳表に沿った凸レンズ形、三日月形の高吸収域として描出され、時期により高・等・低吸収域となる。
     水頭症は脳室の拡大として描出される。
     図は眼窩耳孔線に沿った後頭蓋窩レベルの頭部CT像である。
     後頭蓋窩レベルの断層面で小脳橋角腫瘍やトルコ鞍付近の病変が検出される。
     後頭蓋窩レベルは錐体骨や突起からのアーチファクト(障害陰影)が最も多いスライス面である。
     外耳道内は通常一様な低吸収域として描出される。
     骨折は骨のディスプレイで観察する。
     小児においては、基本的に造影検査は施行しない。
     造影検査を施行する必要がある場合は、非イオン性の造影剤を用いる。
     小児においては、体動を防止するための対策が必要である。
     水晶体は撮影部位に含まれるため、生殖腺よりも被ばく線量は多い。
      
    [後頭蓋窩レベルの頭部CT画像]


     2.胸部CT

     胸部X線CT検査では、整位中に以下の事項を実施する。
      (1)患者の氏名を確認する。
      (2)検査の依頼内容を確認する。
      (3)呼吸動作を指導する。
      (4)被写体中心と回転中心を合せる。

     体位は背臥位なので、少量の胸水は肺尖にみられない。
     胸部CTにおいて、リンパ節腫大は縦隔のウインドレベルで評価され、縦隔の血管は造影剤の静注により濃染する。
     肺石灰化病変は高吸収域を示す。
     気管の内腔は心臓に比べて低吸収域を示す。
     心嚢液(心外膜液)は造影CTにより、心臓に比べ低吸収域となる。
     肺血管性病変は造影CTで診断する。
     び慢性肺疾患の描出には薄いスライス厚(1〜2mm)が用いられる。
     胸部CT画像の画像Aに対し精査目的で、薄いスライス厚を用い、FOVを小さく、高分解能関数を用いると画像Bが得られる。
    [胸部CT画像(肺)] [胸部CT画像(図A)] [胸部CT画像(図B)]
     胸部CT画像において、画像Aは肺野表示条件、画像Bは縦隔表示条件で表示されている。
     これらの単純CT画像の体位は背臥位である。
     右中葉に結節を認める。
     ウインドレベル幅はAがBよりも広く、ウインドレベルはAがBよりも低く設定されている。
    [胸部CT画像(図A)] [胸部CT画像(図B)]


     3.腹部CT

     膵臓レベルの腹部CT像では、肝臓、右腎臓、膵臓、脾臓、下大静脈、大動脈が描出される。
     膵病変の描出には薄いスライス厚(5o)を用いる。
      

  6. 造影CT
     造影X線CT撮影で造影剤を投与する際に第一選択となる穿刺部位は肘静脈である。
     CT普及後、使用頻度が減少したものは、脳室造影法、後腹膜充気法、縦隔充気法、回転横断撮影などである。

     1.頭部CT

     頭部CTにおける造影は脳腫瘍の診断に使用される。
     脳出血の診断は単純CTで診断できるので、造影剤注入後の検査は必要としない。

     2.腹部CT

     造影剤注入法は腹部CTの診断に役立つ。
     腹部CTでは、実質臓器と消化管との区別や病変輪郭の抽出のために造影剤(ガストログラフィン)を20〜50倍に薄め経口的に投与することが多い。
     バリウムによる胃透視直後の膵癌CTはバリウムによるアーチファクトのため撮像が不可能である。
     胆嚢結石(コレステリン結石)は胆嚢造影直後の腹部CTで描出可能である。
     経静脈性腎盂造影直後のCTでは造影剤のため腎結石を描出できない。
     TAE施行後の肝癌の状態を把握するために、2〜3週間後にCT検査が行われる。

     右図の腹部造影CT像は第1腰椎レベルの画像である。
     このレベルの画像では肝右葉、膵頭部、左結腸曲、左腎が描出されやすい。
     腎皮質と下行大動脈が強く造影されていることから、造影剤注入約30秒後の画像である。
     造影剤の注入法はボーラス注入方である。

     3.膀胱造影CT

     オリーブ油を陰性造影剤として用い、尿道カテーテルから注入して病変輪郭を抽出する方法。

     4.脳槽造影CT

     脳槽造影CTは腰椎穿刺により、腰椎クモ膜下腔に非イオン性造影剤を注入し、脳底部をスキャンする方法である。
     脳底部付近の腫瘤性病変の検出を目的とする場合は、注入2〜3時間後にスキャンを行う。
     脳脊髄液の循環動態を観察する場合には、3,6,24時間と経時的にスキャンを行う。

     5.CTミエログラフィ(脊髄腔造影CT)

     CTミエログラフィは非イオン性造影剤を腰椎クモ膜下腔に注入して、注入後6〜24時間後にスキャンを行う。
     CTミエログラフィはミエログラフィ後に施行され、椎間板ヘルニアの診断に用いられる。

     6.Xe-enhandced CT

     Xe-CTは非放射性Xeガスを吸入させてtime density cureを作成し、局所脳血流(CBF, cerebral blood fiow)を測定する方法である。

     7.経動脈性門脈CT

     血管造影の技術で、カテーテルを上腸間膜動脈または脾動脈に挿入して造影し、肝内の門脈血流による造影効果を判定する方法で、腫瘍の鑑別診断に用いられる。

     8.冠動脈造影CT

     冠動脈CTに用いられる画像表示法は、VR、MIP、Curved MPRがある。
     冠動脈造影CTで血管拡張薬として、ニトルグリセリンが用いられる。

  7. ダイナミックCT

     1.ダイナミックスタディ

     ダイナミックCTは造影剤60〜100mlを急速に静注し、同一部位を連続的に撮影する方法で、血管動態の経時的変化の観察を目的とし、動脈相から静脈相までの像を連続的に得ることができる。
     造影剤注入はボーラス注入法である。
     ボーラス注入法(急速静注法)は大量の造影剤を静脈内に急速に注入する方法である。
     血管性病変や腫瘍性病変の把握に有効であり、血行動態の解析、肝腫瘤、脳血流動態の診断などに用いられる。
     新生血管に富む腫瘍は動脈相で強く濃染される。  造影早期に濃染するのは大動脈である。
     ダイナミックスタディはスキャン後、造影剤による各スライスのROI内のCT値変化を時間−濃度曲線として求める検査法である。  同一断層面での連続スキャンのため、びまん性肺疾患の診断には適していないし、スキャン数の増加により撮影部位の被曝線量も増加する。

     2.ラピッドシーケンススキャン

     ラピッドシーケンススキャン(Rapid Sequential Scan)はの造影効果の高い時期に、1回の呼吸停止時間内に広範囲にスキャンする方法である。

  8. ヘリカル(らせん)CT
     ヘリカルスキャンはスリッピングによる連続回転を応用し、テーブル移動させながららせん状に投影データを収集するスキャン方式である。よって、X線管への負荷が多くなる。
     短時間に広範囲のスキャンを行うことができるので、1回の息止めで目的部位をスキャンできる。これより、患者の体動によるアーチファクトを軽減できる。
     また、造影検査では、造影剤の使用量を少なくすることができる。
     収集されたデータは連続性を持っており、3次元的位置情報が得られるし、任意の断層面の画像再構成を行うことができる。
     連続的にダイナミックCTができる。

  9. 三次元画像表示法
     ボリームレンダリング(VR, volumr rendering)法は三次元のボリュームデータから二次元画像を作成する方法である。
     サーフェスレンダリング(SR, surface rendering)法は与えられたボリュームデータから面を抽出し、それを描画する方法である。
     最大値投影法(MIP,maximum intensity projection)は三次元的に構築されたデータに対し任意の視点方向に投影処理を行い、投影経路中の最大値を投影面に表示する手法である。
     下図の左はMIP法による三次元画像、右はVR法による三次元画像である。
      
    [MIP像]    [VR像]
     多断面変換(MPR,multiplanar reconstruction)表示法は三次元的に収集されたCT値情報の任意断面を抽出し表示する方法である。
     Ray Sum(ray summation)法は投影線上の値の積分値を画素値とし、X線透過画像をシミュレートした方法である。
     バーチャルエンドスコピー(VE,virtual endscopy)法は中心投影法を用いた三次元画像処理で、仮想内視鏡画像とも呼ばれている。

  10. X線CTと他のモダリティとの比較
     高分解能画像処理により、高コントラストの微小構造を描出できるので、側頭骨の骨折に有用である。
     耳小骨の描出など耳鼻科領域において、X線CTは1mmスライス厚により、多軌道断層撮影より優れている。
     X線CTがMRIより優れた描出能を示すのは、石灰化や肺線維症などである。
     また、靱帯損傷、半月板損傷、下垂体腫瘍などはMRIの方が優れている。

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2011年5月作成