第20章 超音波検査



  1. 原理
     超音波の周波数が高い(波長が短い)ほど解像度は良くなり、距離分解能が向上する。しかし、生体による吸収が大きいので、透過性が低下し、深部臓器の映像化は困難となる。
     肥満体(腹部などに厚い脂肪のある体躯)は、反射、散乱などにより深部臓器の観察が十分にできないため検査は困難となる。


  2. 特徴と課題

     1.特徴

     2.課題

     超音波検査の欠点は、
    (1)骨や空気により画像化できない部分が生じる。
    (2)超音波特有のアーチファクトがある。
    (3)視野が狭い。
    (4)術者の技術により情報量、診断能に差が生じる。
    などがあげられる。

     骨や空気は軟部組織と比べ、音響インピーダンス(kg/m2・s)(=密度×音速)が大きく異なるため、超音波をほとんど反射させてそれ以上伝播しない。このため、骨や空気、ガス(胃、腸、肺)などの部位は映像化できず検査の妨げとなる。


  3. 基本表示モード

     1.Aモード

     Aモード表示(AmplitudeのA)は横軸(ブラウン管の時間軸)に生体深度(距離)、縦軸に反射強度(受信波形)を示す表示方法である。

     2.Bモード

     Bモード表示(BrightnessのB)は反射信号の強度をブラウン管上で輝度変調を行う表示方法である。
     このBモードが一般に超音波画像と呼ばれ、肝臓や乳房などの多くの臓器に用いられている。
     画像表示はリアルタイムに表示される。

     3.Mモード

     Mモード表示(Motion or MovementのM)は反射源の時間的位置変化を記録する表示方法で、ブラウン管の横軸に時間を、縦軸に生体深度を表示して、反射信号を輝度変調することにより反射源の運動曲線が得られる。
     Mモードは心臓の弁の動きを診断するのに応用され、Mモード心エコー図として用いられている。

     4.カラードプラー法

     DモードはBモード画像に血流信号を重ねて色表示する表示方法である。
     図は腎臓のカラードプラー画像で、Bモード画像を併用している。
     探触子に向かう方向の血流を赤色で、遠ざかる方向の血流を青色で表示している。
     早い血流と遅い血流とを同時に表示できる。
     カラーゲインを調節して、速度が早いほど明るく表示することで、血流を評価する。


  4. アーチファクト
     超音波のアーチファクトとして、(1)超音波の屈折、減衰などによるアーチファクト、(2)サイドロープによるアーチファクトがある。(1)には多重反射、音響陰影、後方陰影増強、外側陰影、ミラー現象、レンズ効果などがある。
     多重反射は組織の境界などで超音波の反射が繰り返される現象である。
     多重反射によるアーチファクト(右図)への対処法には、プローブにて圧迫強度を変えたり、反射面に対するビーム角度を変化させる方法がある。
     音響陰影は強い反射体の後方に超音波が届かず低エコーとなる現象である。
     後方陰影増強(音響増強)は超音波の減衰の少ない組織の後方エコーが高くなる現象である。
     ミラー現象によるアーチファクト(鏡像、ミラ−イメージ)は、横隔膜を鏡面として、肝内の腫瘍などが、横隔膜の上下に認められる現象である。
     レンズ効果は音響インピーダンスの異なる組織に、超音波が斜めに入射したときに発生する。
     折り返しアーチファクトは、血流速度がパルス繰り返し周波数で制限される周波数上限を超える場合、上限を超えた周波数成分が反対側に折り返して出現し表示される。


  5. 探触子(プローブ)
     振動子(探触子の先端)は圧電効果を利用している。
     心臓、腹部には低周波数(3〜5MHz)の探触子を用いる。
     乳腺や甲状腺などの体表面に近い臓器の検査には、腹部より高周波数(7.5〜10MHz)の探触子を用いる。
     超音波ゼリーは体表面と探触子の間に空気層が生じるのを防ぐために用いる。
     コンベックス電子走査は腹部に用いられる。
     セクタ電子走査は心臓、腹部、脳脳(新生児)などに用いられる。
     リニア電子走査は腹部や表在臓器に用いられる。
     リニア電子走査(超音波内視鏡)は胃などの消化器、気管に用いられる。


    超音波用探触子の特徴
    電子リニア型 コンベックス型 電子セクタ型 メカニカルセクタ型
    走査形状
    画面の形 矩 形 扇 型 扇 形 扇 型
    ビームの方向 垂 直 放射状 放射状 放射状
    接触面 平 面 弧 状 平 面 平 面
    近距離視野幅
    深部視野幅
    探触子周波数 3〜10MHz 3〜7MHz 2.5〜5MHz 2.5〜12MHz
    適応部位 腹 部 腹 部 心臓・腹部 心臓・腹部


  6. 腹部超音波検査
     腹部超音波検査の走査は、腹臥位や座位でも可能である。
     検査は、病室でも可能である。
     超音波所見で腫瘤像を示すのは腫瘍であり、肝血管腫や転移性肝炎などである。また、肝硬変、脂肪肝、慢性肝炎は腫瘤像を呈しない。
     腹部超音波画像において、成人の正常値は、腹部大動脈径20mm、胆嚢壁厚2mm、主膵管径2mm、総胆管径5mm、右腎臓長軸長90mmである。
    [胆嚢超音波画像]
    [肝臓超音波画像]

     1.胆嚢

     胆嚢の検査は、内部エコーを得るために絶食とし、空腹時に行う。
     胆石ではストロング・エコー(strong echo)と後方に音響陰影が発生する。
     嚢胞は無エコー域となり、黒く抜けた像になる。また、嚢胞内は体液なので後方エコーの増強を伴う。
     結石や胆嚢腺筋腫症ではコメット様エコーが発生する。

     2.肝臓

     図の超音波画像は、肝右葉を右肋弓下走査した画像である。
     右肝静脈(▽)と中肝静脈(↓)が描出されている。

     高輝度な肝臓は脂肪肝であり、肝腎コントラストが大きくなる。
     肝臓ガン(主に肝細胞ガン)の場合、肝臓にモザイクパターンやハローが観られる。

     3.膵臓

     消化管ガスにより、膵臓の尾部の描出は困難である。

     4.腎臓

     左腎の検査は側背部から走査する。

     5.前立腺

     前立腺の検査では、経直腸プローブによる体腔内ラジアル走査(経直腸的走査)が行われる。

     6.子宮

     子宮など骨盤腔内検査では、体表走査する場合、良好な画像を得るために膀胱充満法を行う。
     経膣プローブを用いた子宮検査では膀胱充満法は不要となる。

     7.乳腺

     検査体位は背臥位で行う。
     使用する周波数は 7.5〜10MHzである。
     通常は水平走査(縦断走査)と矢状走査(横断走査)の2方向である。
     探触子で圧迫を加えて走査することもある。
     超音波検査は嚢胞と癌の鑑別にすぐれている。


  7.  超音波造影剤
     超音波造影剤はマイクロバルブと呼ばれる微小気泡で、経静脈投与される。
     ハーモニック法は、組織ハーモニック法とコントラストハーモニック法がある。一般には送信波の2倍の周波数の高調波成分だけで画像化する。また、コントラストハーモニック法は超音波造影剤の造影効果をより高めるための方法である。


  8.  超音波ガイド下の検査
     超音波ガイド下の経皮的生検は、甲状腺、乳腺などの体表臓器、肝臓、腎臓などの腹部臓器に有効である。
     超音波ガイド下で行われる手技は、胸腔穿刺術、 膵嚢胞ドレナージ、経皮経肝胆道ドレナージなどがある。

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2010年7月作成