〜飴〜
(Main:ゆうひ Genre:ほのぼの Written by:竹枕)
「ゆうひー、そろそろご飯だぞー」
「あ、はいはーい♪」
夕飯ができた事を告げる為ゆうひの部屋へ入った耕介は、そこになにやら甘い匂いが満ちている
事に気が付いた。
「んん? なんだか甘い香りがするな……」
「あ、今アメ舐めてるから」
「なんだ」
あまりにたわいない原因に耕介が苦笑する隣で、ゆうひはなにやら急に口をつぐむと。
「……ねえ耕介くん、うちが今舐めてる飴、何味やと思う?」
ニヤッと唇の端を吊り上げ飴の袋を揺すって見せる。袋には六種類ほどの果物が描かれていた。
「んー喉飴だろ? じゃあハッカかな」
「正解はー……せやね、一緒に舐めてみる?」
「ああ」
一つ、舐めているものと同じ飴をくれるものと思い、耕介は首を縦に振る。
「じゃあ……ん〜」
「?!」
「ん……ふぁい」
「むむむ……」
いきなりのキス。ゆうひは押し付けた唇を開き更に深く口付ける。
ゆうひから耕介へと、口の中を舌と共にスルッと移動する小さくなった飴。
「どうやった?」
「……レモン、でしたか」
「正解♪」
突然の事に混乱する耕介だったが、唇を伝い口内に広がる甘味と僅かな酸味に我に返り、何とか
それだけ答えた。
「えへへへへ……」
「……ゆうひ、お前顔真っ赤だぞ」
「耕介くんこそ」
にた〜っと笑顔で、しかし顔中真っ赤にして耕介を見上げるゆうひ。その視線を受け止める方も
頬を熱くしている。
結局帰ってこない耕介を不審に思った知佳が様子を見に来るまで、二人はにたにたとただ見詰め
合っていたのだった。
了