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  〜ちくび〜
  (Main:真雪 Genre:ほのぼの Written by:竹枕)






 「好きだよ……真雪」


 「ん、知ってる……」


  耕介の熱く湿った吐息が、優しく真雪の耳の裏を撫で上げる。


  もう数え切れぬほど繰り返されたやり取り。それでも言葉にする事で、相手に伝える事で、二人
 の心はその都度満たされていく。


  真雪は耕介の開いた足の真ん中に座っており、耕介が後ろから両腕と両足で抱きつくような形に
 なっていた。


  豊かな胸のせいでそれほど細くもない真雪の体が、耕介の太い腕、足に抱かれるとすっぽりと包
 まれてしまう。口にした事はないが真雪は密かにそれが気に入っていた。


  耕介が日に何度片付けても、ベッド以外は乱雑な真雪の部屋。ここで耕介と真雪は、深夜の甘い
 一時を過ごしていたのだった。


 「ん、よかった」


 「うぅん」


  顔が見えない代わりにとばかりに、耕介はグイグイと、息が詰まるほど互いの体を密着させる。


  後ろから真雪の肩口に顔を埋め、肩や首にちょっ、ちょと何度も口付けて。前は鎖骨から乳房に
 そって手を這わせ、自分には無い滑らかな滑り台の感触を楽しんでいた。


 「んっ!」


  その手が下った一番先、乳頭に掛かった時、真雪の体がピクリと震え小さく声が漏れる。


 「……男ってのはどーしてこー、おっぱいが好きなのかねー」


 「え?」


  声が出てしまった事に対する照れ隠しなのか、真雪はやや不機嫌そうにそう言った。


 「こんなもん、あたしにしたら邪魔なだけだってのに。飽きもせずまー触ること触ること」


 「いやそれはまあなんちゅーか、男の性と申しましょうか。しょうがないと言いましょーか……あ、
 でもでも俺は真雪のおっぱいだけじゃなく、全部好きだよ?」


 「フォローになってねーっての」


  そう言っている間にも耕介は真雪の胸を下から両手で持ち上げる事を止めていなかった。まこと
 説得力にあふれたセリフである。


 「ま、いいけどさ」


 「ホントだよー。俺、真雪の額も、眉も、目も、唇も」


 「アッ……んん」


  一つ一つ挙げながら、耕介はその場所を指でなぞり、キスしていく。


  額に、眉に、目に、唇に。


 「首も、肩も胸も、お腹も、足も、ココだって……」


 「んっ、んんっ、もう全部、あんたのもんなんだから……」


  大好きだよ。


  好きにして。


  耕介の唇が真雪の首、肩から胸へと下っていく。そうして互いにそう囁き合ったその時。


 「……ウン?」


  ピタッ、と左の胸に口付けた所で耕介の動きが止まった。


 「……あ? どしたのこーすけ」


 「……変な、味がする」


 「あ」


  不審がる真雪に向って耕介は自分の舌を出して見せる。それを見て真雪は一人全てを悟り、急に
 あぐらをかいてすまなさそうにポリポリと頭を掻き始めた。


 「わーりーわりー、今あたしちょっと乳首が荒れててさー、薬塗ってたのすっかり忘れてたわ」


  苦笑いを浮かべる真雪。しかし実際に苦虫を噛み潰したような気分はのは耕介の方であった。


 「痒くて掻いてたらちーと切れてきちまってさ、ちょちょっと軟膏をね。ほら、あんたもあたしの
 乳首が切れて取れてなくなっちゃったら困るだろ?」


 「そりゃどこの奈美○子かって話になるけどさ」


  耕介は苦笑し頷きつつも未だ渋い表情を崩さないまま。時折腕で口元を拭っている。


 「どうなの? 苦いの?」


 「いや苦いっちゅーかなんちゅーか、なんとも形容しがたい、変な味です」


 「あはは、まぁ薬ってのはそういうもんだ。良薬口に苦しって言うしな」


 「良薬て……なんだか赤ん坊になった気分だよ」


 「赤ん坊?」


  確かに夢中で乳首に食らいつく様は、大きすぎる赤ん坊に思えなくも無かったけど。


  真雪がそう言うと耕介はいやそうでなくて、と力無く手を横に振って話を続けた。


 「ほら聞いたことない? なかなか乳離れ出来ない子供におっぱいを卒業させるために、乳首にわ
 さびや辛子を塗ったりとか」


 「あーはいはい、あとおっぱいにオバケの絵を描いとくとかな」


 「指しゃぶりはその指たたっ切るぞっ、と母親に脅されて直されたことはあるけどね。おっぱいは
 初めてだよ」


  ハハハ、と二人とも勿論全裸のままベッドの上で笑い合う。


  妙に和やかな雰囲気に完全にHの腰はへし折られてしまったかと思われた。だが。


 「……それで、でっかい赤ん坊の耕介くんはどうするかね」


 「はい?」


  真雪は口の端を釣り上げ、見せつけるようにおっぱいを持ち上げながらこう言った。


 「おっぱい卒業、する?」


 「…………」


 「ぁん♪」


  耕介は無言のまま、グッと真雪の腰を引き寄せ今度は右の乳首に吸い付いた。


  先程の左側とは違い、そこは酷く甘い味と香りがした。






                                       了









  後書き:私が一番好きなキャラがこの真雪さんです。真雪さんは長い話は難しいんですが、
      こういった短い、ワンシーンだけを切り取った物ならジャカジャカ出てくるので。
      気をつけないとSSSが真雪さんのもので埋まってしまいそうになりますな〜。





  07/03/11――UP.

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