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  〜目元〜
  (Main: 忍、ノエル Genre:ほのぼの Written by:竹枕)






 「ねえねえノエル、ノエルー」


 「ハイ、なんでしょうか忍お嬢様」


 「ちょっと見てくれる? これなんだけどさー」


 「……この着包みを使用した幼児向け集団ヒーロー特殊撮影番組の事でしょうか」


 「ウン。でねでね」


  ドテラ姿で、コタツに潜り込んだ忍がその日ノエルを呼びつけた二十一回目の理由は、目の前の
 テレビに流れる特撮番組を見せる為だった。


  ちなみに二十回目の理由はミカンの御代わりである。


 「……で、このチョウサンっていう宇宙人が犯人を追ってきたんだけどー」


 「はい」


  忍の説明に律儀に相鎚を打ち続けるノエル。画面の中では様々な着包み達が、意外とまっとうな
 刑事ドラマを繰り広げていた。


 「このイエローって娘が、チョウサンの娘さんに目元がそっくりって言われるのよ」


 「はい」


 「番組内じゃ割とあっさりスルーされてるけど……かーなり複雑な感じがする話だと思わない?」


 「……はい」


 「ふつーの地球人の女の子が、宇宙人の娘と目元が、って言われてもねぇ?」


  どうなのよと苦笑する忍とは対照的に、ノエルは僅かに視線のみを外したまま黙り込んでしまう。
 それを見た忍も返事を期待していなかったのか、再び着包みと原色タイツの集団に見入った。


 「……聞いた話なのですが」


 「え? 今なんか言ったノエル?」


 「このよく言われている『目元が似ている』というのは、実は実際に顔が似ているわけではなく、
 『雰囲気が似ている』の遠回しな表現であったりする事があります」


 「はい?」


  返事に困って沈黙しているだけだと思われたノエルが突然、それも随分と長く語り始めた事に、
 忍はあっけにとられ思わずぽかんと口を開けたまま。


  ノエルはそんな忍の思考が纏まるまでの間を作ってから、再び口を開いた。


 「私はイエロー様がどのような性格の方なのかは存じませんが、例えば前向きな方なのであれば、
 チョウ・サン様のお嬢様も前向きなお子様だったのではないでしょうか」


 「う〜ん」


 「そうなるとたとえ相手が宇宙人であっても外国人であっても、問題は無いと考えます。よほどそ
 のチョウ・サン様がイエロー様の事を気に入った……という気持ちの表れに過ぎないかと」


 「はー」


 「私の勝手な推論ですが。そういう事ではないかと思われます」


  妙な迫力を持ったノエルの語り口に、なるほどねえと忍は腕組み何度も頷くだけ。が何故かその
 唇だけは薄く微笑んでいた。


  たとえ本で読んだ知識でも、誰かから聞きかじった知識でも。この場合の説明として自分で考え
 自分自身の意見を語ってくれた。そんなノエルの気遣いと成長が忍は嬉しかったのである。


 「でもさあノエル、雰囲気がどうとかそういう話はともかく……」


 「はい」


  しかし。それとは別にやはりこれだけは言っておかなくてはと忍は思う。


  クイと忍があごで促すと、二人は再び画面に視線を戻す。そこには件の宇宙人チョウ・サンの、
 まるでひしゃげたイカのような見目形が映し出されていた。


 「やっぱり微妙よねぇ」


 「……かも、しれません」






                                       了









  後書き:以前お泊りに行った友人宅で、デカレンジャー見た時の会話。
      普段は眠いんで日曜の朝は寝てます。





  05/01/05――UP.

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