〜ユートピア〜
　　（Main:ゆうひ　Genre:ほのぼの　Written by:竹枕）






　『「ど〜もど〜も〜」』


　　上手から中腰で、手を打ち鳴らしながら二人の男女が皆の前へと駆け込んでくる。


　『ホープ耕介でーす』


　「ピースゆうひですー♪」




　『「よろしくぅネッ！」』




　「突然やけど耕介くん、ちょっとええか」


　『なんだ』


　「うち……うち、クリステラソングスクールに行きます！」


　『そうか、よし勉強だ』


　「いや止めてくれな。うち耕介くんと婚約したばっかやん、そこは引き止めてくれんと。もう一回
　いくで、うちは……クリステラソングスクールに行きます！」


　『なんでクリステラソングスクールなんだ』


　「やっぱりクリステラソングスクールといえば歌姫のメッカ、それに華やかなイメージがあるし、
　たとえばこの田舎の海鳴市で見た事ある芸能人といえばおすぎぐらいやし、この話すると１０人中
　１０人が『ピーコじゃなくて？』とか言うし……とにかくうちクリステラソングスクールで校長の
　ティオレクリステラさんを見たいんや！」


　『それでそのクリステラソングスクールはどこにあるんだ？』


　「え、英語の国やから、多分イギリスかと。うち英語でけへんけど……」


　『馬鹿者！　そんな甘い考えでクリステラソングスクールに行けると思っているのか！』


　「あう」


　『いいか、イギリスと日本の距離はあまりにも長く、険しいんだ。そう、このゴムのように……』


　「ゴムのようにっ？！」


　　そう言うと耕介は懐から一本の板ゴムを取り出した。


　『よし、このゴムを咥えてそこへ立て。お前の位置がイギリスで、俺が日本だ』


　「こうふけふん」


　『なんだ』


　「こわいれふ」


　『怖がるな、どんなに苦しい時も歯をくいしばって前へと進むんだ』


　「ふぁい」


　『いいか』


　「ふぁい」


　『いくぞ』


　「ふん」


　『いくぞ』


　「ふぁい」


　『あっそうだイギリスと言えばお前……』


　「何ですか？　っ痛い！」




　『「よろしくぅネッ！」』






　　今年のクリスマスパーティーでの受けはまあまあだった……






　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　了