詩集「生きる仲間」 眼我 真
   詩集「蝉の声」  眼我 真 (インド料理と画廊 ガンガーにて販売中)
  
  「生きる仲間」のもくじ


 ターザン
 雨の日が好き
 天のしずく
 父
 われ五月(さつき)
 ヤンキーなカマキリ
 蜜集め
 うんこ雲(入道雲)
 おまじない
 おしゃべりな椅子
 なかなかだあ
 めしあがれ
 朝
 遊びましょう
 明日へ
 不死のスクラム
 祈り
 雲
 生きる仲間
 かわいい人よ
 メリー・クリスマス
 マリーン・ブルーとOnly girl
 揺れ動く
 蝿殺しのジョニー
 コンコロリンのコンコロリン
 ネコ・タンポ
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『タ-ザン』
 
僕が幼稚園児のころ
お兄ちゃんたちは
墓場の裏の斜面で
大きな木の大きな枝にツタを結んで
タ-ザンごっこをして遊んでいた
僕は
斜面の上の山道から
お兄ちゃんたちの遊びを見ていた
翌日も
その翌日も
ただ見ていた
いつの日か自分の番が来ることを信じて
待っていた
そのうち一人のお兄ちゃんが
手をすべらせ骨折してしまい
その遊びは大人によって中止させられた
僕はついにタ-ザンに成れなかった
ツタを斜面の上まで持って行き
いっきに下に向かってジャンプする
お兄ちゃんたちの歓声
「次は僕だ」「俺だ!」という大きな声
墓場は僕達の遊び場だった
あれからいく年
斜面の上の山道は人も通らない
ケモノ道になってしまった
大きな木と墓場は
時を失ったかのように昔のままの姿である
ただ
あの子供達の喜びの歓声は
もう何処にも聞えない
 
『雨の日が好き』
 
晴れの日は不安
両親は一日中 仕事
兄は外へ
私だけ 
おもちゃと一人遊び
「この子は手がかからない いい子だよ」
と母は自慢した
 
昼過ぎると
そわそわ そわそわ
外で遊ぶ声に 耳をそばだてる
遊びに誘われないかと
あてもなく 待つ
塀ごしに通る人を ちらり ちらり
見てすごす
誰も来ないのを知っていながら
ちらり ちらり
見てすごす
 
雨の日は
外の出来事を気にすることなく
一日中遊べます
自分で作ったプラモデル
横一列に並べて
空想の世界に浸れます
雨の日は 
プラモデルの王様
 
大人になった 
今も雨の日が好き
 
もう王様になれないけれど
静かに想いを深め
言葉を探し
詩の世界の主人公に成れる日
そんな雨の日が好き
 
 
 『天のしずく』
 
バケツをひっくり返したような
お・お・雨
天の大洪水
 
一瞬にして
大気の暑さも一休み
ひまわりさんたちも
ゆっくり一休み
大地のすべての熱気も
みんな一休み
 
天の大洪水の後の し・ず・く
 
木々の葉に伝わって落ちてくる
し・ず・く
涼しい風に乗ってくる
し・ず・く
 
天の国からの贈り物
静かに耳をすましてごらん
何か聞えるよ
心をすましてごらん
ほら 聞えてくる
 
「暑かったね お疲れさま
今晩はぐっすり寝なさい」
 
忘れていた父の面影が頭の中をよぎる
 
なくした大切なもの
 
しずくは語りかけてきます
 
「大切なものを見失わないように」
 
 『父』
 
息子に頼まれ
野球のバッティングの指導をする
青春時代の経験を生かし
親の威厳を示す
 
「足を肩幅より少し広げ
手は右肩の高さに構え
振り降ろすように腰の回転で球を打つんだよ」
 
私は父にこんなに手取り教えてもらった思い出が無い
ただただ 一年中働く父の後ろ姿しか知らない
病気にかかり
一年近く寝たきりになり
冬の寒い真夜中
誰からも看取られることなくトイレで倒れ
それっきり
父の思い出はそこで終わる
 
息子にバッティングを教えながら
少し寂しさを覚える
 
父は私に何を教えてくれたんだろう?
 
働く後ろ姿と仕事が楽しそうな笑顔
 
今生きていたら
何を語らい 何をしているだろう
 
息子のバッティングを見ながら
また父のことが思い出される
 
親戚の家によく連れていかれ
話し好きの父の話を
いまかいまかと退屈して聞いていた
あの時が懐かしい
 
涙があふれそうになる
息子に見られないように
天を見上げる
 
五月の晴天
何処までも青く
あの時の思い出が鯉のぼりのように
いまも天を泳いでいます
 
 
『われ五月(さつき)』
 
五月の風
心地よく
ボ〜ボ〜と遠く鳴り響く
生命の息吹 
草木の精子の香り
精の香り
 
われ五月
精子を出して
死を食らう
 
五月の風は死を食らう
生の香り
あの時の香り
 
ボ〜ボ〜と鳴り響く
生命の息吹
 
われ五月
我を包みて
精を生む
 
『ヤンキーなカマキリ』
 
朝一番
プランターの花たちに水をプレゼント
 
「タッタラ、タッタ、ラッター、あれ?」
 
手と手がふれて
びっくり ドッキリ
カマキリさんが手をすべらせ
地面にバッタリ
 
夏のカマキリは青緑色
ういういしい美しさ
 
「大丈夫?つい葉っぱと思ったの」
 
「なんのなんの これしき、
わしゃあ ヤンキーなカマキリさ」
 
凛々しく立ち上がり
きりっとこちらを
にらみます
 
「あんさんも、気付けなあかんで!」
 
「はい、すみません」
 
ヤンキーなカマキリに説教された私です
 
 

『蜜集め』
 
昨日の花さん探してる
「あれ あれ いないよ?
あの子は何処いった。」
見た目は同じでも
蜜の味
「違う 違う 彼女じゃないよ!」
 
ポ-チュラカ
朝一番に生まれ 一日かわいく咲いた後
夕方 花をクルクル丸めて
「これで、さようなら、お元気で。」
 
蜂さん探しても
昨日の彼女はもういない
迷って迷っているけれど
そこに丸くなったまま
咲かない花さん
それですよ
 
蜂さんが
風の便りに聞いたなら
さぞかし
さびしかろう さびしかろう 
 
蜂さん
探し探し 
蜜集め
「彼女を知りませんか?」
寂しさ隠して
蜜集め
 
 

 『うんこ雲(入道雲)』
 
お-い うんこ雲
そんなに大きくなると
こっちに落ちてきそうじゃないか
 
うんこ雲
 
落ちるときは
きれいな水になって
町々の汚れをおとしておくれ
 
わたしの汚れもね!
 
うんこ雲
 
夏一番の元気もの!
 
あっ! うんこ雲から虹が出た
 
やった!
あっ!しょんべん
 
蝉が顔にしょんべんした
 
夏!真っ最中
 
 

 『おまじない』
 
ちちん、ぷい、ぷい
あついの あついの
とんでいけ
 
きょうは
おまじないで
あつさを
たいじしました
 
さあ 
あすはどんな
おまじない?
 
 
 『おしゃべりな椅子』
 
椅子のボンちゃん
いつも同じ場所で飽きません?
私なんか子供が来るたびに
呼ばれて 汚れますが
いろんなテ-ブルに行けて
楽しいですよ
同じ場所にず-といるのはつらいですね
 
なんの なんの
僕はここがお気に入りさ
窓辺で日当りも良く
花壇の花さんたちとも話しができ
そうそう昨日はスズメのヤンちゃん
とも話しをしましたよ
ヤンちゃんはとても物知りでね
山のカラスさん 海のカモメさんなどとも
話しをされて 
世界中の情報を集めてますよ
今 うちのボスがはまってる
インタ-ネットですか
それと同じような
バ-ドネットってやつですよ
分からない事があったら
聞いてあげますよ
 
それにね 毎週日曜の昼
ここに座る女性がとてもステキなんです
名前はえ-と「マミエさん」って言ってました
マミエさんが入り口に立つと
もう胸が ドギマギ ドギマギ です
やわらかく ほどよい重さのオシリ
髪の毛のなんとも言えない香り
体を動かすたびに僕の体を
その香りが包みます
もうたまりません
これっていやらしいですか?
ねえ 子供椅子のノンちゃん寝てるんですか?
僕の話し聞いて下さいよ
 
はい はい 
わたしが代りにお聞きしますよ
おしゃべりなボンちゃん
どうぞ
 
 
『なかなかだあ』 
   
「いっぱい皿もてるんだ。
 なかなかだあ、 なかなかだあ」
   
 幼子にほめられる 
 
そうだろ そうなんだ 
なかなかなんだと胸を張る
つい笑顔になる 
 
 
『めしあがれ』
 
今日のカレ-はおいしね
どうして?
オイルさんちょっとおしえてよ
それは ひ・み・つ
なんてね
僕と野菜さんが仲良く
フラダンスしたからさ
玉ネギさんは朝8時から
僕とフラダンス
もうこんがり日焼けして
おいしそう
ニンジンさん
ジャガイモさんも後から仲間入り
さあさあ みんな輪になって
ナスさん
ブロッコリさんに
ピ-マンさん
手を取り合ってフラダンス
私はオタマ片手に「アロハ-」
オイルさん
みんなの中央に踊り出て
ダンスが盛り上がる
みんなじっくり日焼けして
健康美
今日のカレ-は
みんな仲良くフラダンス
こんがり日焼けして
おいしそう
さあ さあ お早くめしあがれ 
 
 

 『朝』
 
目が覚めるとき
涙が自然と
にじんできた
 
なんだろう
 
こんな朝はしあわせです
 
ありがとう
 
 
『遊びましょう』
 
「どこ どこにいるの?」
 
声は遥か彼方から
 
「ここよ ここよ」
と風に乗ってやってくる
 
竹やぶは生き物のように
うね うね
波打っています
 
「ここの中ですか?」
 
「いえいえ そこではありません」
 
池の波紋がいいます
「この中だよ この中だよ」
 
「いえいえ そこではありません」
 
空に流れる細長い糸雲がいいます
「北の山頂にいたよ」
 
「いえいえ そこではありません」
 
大地の中から響きます
「ここだよ ここだよ」
 
日も沈み
星空になりました
 
お月さまが静かに語りかけます
「お疲れさま また遊びましょう」
 
   
『明日へ』
 
すずなりの樹に
すずなりに花が咲き
蜂や蝶さんたちが
すずなりに蜜を吸う
 
すずなりの樹は庭のはずれの奥まった
日当りのよい角地にあります
あまり人目につかないこの場所に
昆虫たちは群がり命を紡ぎます
 
すずなりの樹に咲く花 黄色く
おしべが手のように長く
めしべを守ります
その手にやさしく乗って
昆虫たちが命を吸ってます
 
花の命は大地から
空のお日様から
紡いだ命です
 
「あなたは私の後よ」と言いながら
順番守りつながります
次から次へ紡いでいく命の糸は
果てることなくつながり
明日へと希望を紡ぎます
 
『不死のスクラム』
 
手をとり合ってみんながっちりスクラム組んでます
一つとして欠けることのないスクラム
もし どれか一つでも欠けることがあれば
みんなで悲しみ 祈り
新しく生まれる命を待ちます
後に来る〈もの〉はまた
みんなと手を取り合って
がっちりスクラムを組みます
 
過去から来て
現在を生き
そして未来へと連なっていきます
これが不死の秘密です
一つが死して欠けても
その変わりの新しい〈もの〉が補い
連なりはとぎれることなく
その〈もの〉による
スクラムは変わりません
 
生きる〈もの〉すべてが尊く
海のバクテリアも魚も
陸の昆虫も花も
空のトンボも鳥も
すべての人 動植物
みんな同じ〈もの〉です
連なっているのです
あなたもわたしも
その〈もの〉の中の一つです
欠けることのないスクラム(地球)の〈もの〉なのです
 
「祈り」   
 花が咲いています。
花は人を楽しませるために咲いているのではありません。 
子孫を残すため、かわいらしい花を咲かせるのです。 
花粉を受精させてくれる虫のことを考えて、咲いているのです。 
人の目を気にすることなく花のように、
見る人が自然となごむような生き方をしたいものです。 
 雑草の中にも、かわいらしい花を咲かせる草があります。 
かわいらしい花を咲かせない雑草もあります。
それらの雑草も生きているのです。
きれいな花を守るため、名もない雑草を引き抜くことに、 
ためらいを感じない人たち。
 夏、蚊が人を刺す。人はためらわず蚊を殺す。
テロリストがアメリカ帝国主義を刺す。
アメリカはためらわずテロリストを殺す。
蚊は何故人を刺すか? テロリストは何故アメリカを刺すか?
蚊もテロリストも命の重みは同じと考えられるかどうか? 
人は平気で蚊を殺します。人は生きるために邪魔なものを殺しているのです。
私もあなたも殺しているのです。
 そんなことを考えると偉そうに「平和」を語ることはできません。 
でも語らなくてはいけません。
蚊を殺すとき、名もない雑草を抜くとき、心に痛みを忘れないために、
「平和」を語る必要があります。
 
『雲』
 
稲刈り後の
 
水溜まり
 
青空照らし
 
てかてかて
 
はずかしそうに
 
雲泳ぐ
 
『生きる仲間』
 
タローが暑そうにハッ、ハッ、ハッと
息をしている
アゴの下に手を添えると
手に頭を預けてくる
安心したように呼吸が落ち着く
手にタローの重さと信頼を感じる
見つめ合う目
ふとタローの足元に目をやると
蟻が体の数倍あるタローの餌の残りを運んでいる
その横でタマ虫がごそごそ動いている
踏みにじられ忘れられているこれらの虫たち
手の中のタローの重さと同じ重さが
これらの虫たちにもあるのだと思えたとき
 
自分もこれらの虫と同じ存在
生きていることに意義があるのです
 
手に残るタローの重さと信頼が
生きる仲間を意識させます
 
 

『かわいい人よ』
 
かわいい人よ かわいい人よ
心のかわいい人よ
恋することはできないけれど
そっと見つめていたい
野の花のように
かわいい人よ
 
コスモスの花を見て
微笑み
バラの花を見て
喜び
さくらの花を見て
かなしむような顔をして
「散る花の先に若葉の芽があるのね」
と言いそうな
かわいい人よ
 
いつまでも いまのままの
かわいい人でいてほしい
野の花のように
 


『メリー・クリスマス』
 
あなたへの想いが雪のように
降り積もり
雪崩を起こしそう
クリスマスの夜
あなたのその優しい一言で
わたしの積もり積もった想いが
雪崩のようにあなたを襲う
あなたは優しく私を抱きとめ
受け入れる
あなたと私は一つになる
一つの想いで一つ
この世の終わりが来ようとも
一つの想いで一つ
メリー・クリスマス
メリー・クリスマス
あなたと一つになれた日
メリー・クリスマス 
 
 
『マリーン・ブルーとOnly girl』  
 
マリーン・ブルーに憧れて
南の島へ旅立つ
「一人で行くわよ」と
強がってみせた
あの時の彼の瞳が寂しそう
マリーン・ブルーを見ていたら
素直になれるわたしです
 
Please don't say anything.
Please don't say anything.
I'm only girl.
I'm only girl. 
 
あなたの瞳で一人泳でいたい
I want to swim in your eyes.
   
I'm only girl.
i'm only girl.
 
あなたの待つ町へ帰ります
このマリーン・ブルーを持って帰ります
 
 
	  
『揺れ動く』
(ヘンリー.ミラー美術館にて)
 
ヘンリー
ヘンリー
北回帰線に乗ってサンバが流れる
少し暗めの照明が
ヘンリーの宇宙空間を作り出す
色鮮やかな水彩たちが
踊り出す
バッサバナ バッサバナ
絵の中の 
ローマ字の日本語も
konnitiwa
douzo
homi doki
バッサナバ バッサナバ
と踊り出す
 
見る側を楽しませ
ふと 
人生を感じさせる水彩たち
 
わたしもいつしか
宇宙空間を浮遊する
チリのように
揺れ動く
 
こんな風に
楽しく
自由奔放に描きたい
わたしの心が揺れ動く
 
 
『蝿殺しのジョニー』
 
ちょっと殺し過ぎじゃねえか?
でもよ
やたら蝿の奴増えてるんだぜ
もう何匹殺したやら
後から後から出てきやがる
俺も殺生したくねえがよ
来る火の粉は払わねばなあ
 
蝿さん達よ もう来るなよな
それでも来るものは来る 
 
殺人鬼の役も辛いものよ
天使の役なんてのもいいね
今度は天使の役にしてくれよな
 
死んだ蝿を生きかえらせ
蝿の恩返しで億万長者なんていいね
 
蝿の宝物って何だろう?
 
腐敗しかけた食べ物とかネズミの死骸だったりしてね
それを山ほどプレゼントされ
生ゴミ長者になったりしてね
 
生ゴミ長者のジョニーなんて言われちゃったりして
カッコわりー 
 
 
『コンコロリンのコンコロリン』
 
コンコロリンのコンコロリン
つちの子がコンコロンリのコンコロリンと
生まれましたとさ
「ここはどこ?」
コンコロリンのコンコロリン
迷子のつちの子
こまってる
コンコロリンのコンコロリン
お日様てらして
いじめてる
コンコロリンのコンコロリン
雨がふって
いじめてる
コンコロリンのコンコロリン
つちの子
じっとがまんの子
そのうち内から芽を出し
       葉を出し
       花を出し
せっせ せっせと仲間をふやします
コンコロリンのコンコロリン
いつしかお日様も雨も
みんな みんな仲間になって
コンコロリンのコンコロリンと歌います
みんないっしょに
コンコロリンのコンコロリンと歌います
 
 
『ネコ・タンポ』
 
ネコタンポ
ネコタンポ
冬はこれです
ネコタンポ
湯タンポじゃないよ
ネコタンポ
あったかくて ふわふわで
ついてまわる
ネコタンポ
クロとブチどちらでも
おすきな方をどうぞ
 
(使用上の注意)
 ときどきツメをたてることがあります。 
					

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  著者 ・眼我 真(ガンガ マコト)

      発行者・荒金 誠

      発行所・ガンガー
         日進市梅森町上松六六一 六
         携帯 08069495811

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