Parker Vacumatic Pen

 

 1933.3 release - 1953

 

     
       
  「Transparent Ink」   「In print of the barrel」   「Clip of  Arrow design」  


 Parker社は、これまで様々な材質や色の万年筆が好調な売れ行きであった。中でも、「Duofold Pen」は、筆記具の世界に新たな息吹を吹き込んだ。これらのインクフィラーは、ボタンフィラー方式の万年筆であった。今回、紹介する「
Vacumatic」は、新しいインクフィラーを導入した万年筆である。上の左の写真にあるように、 バレルに直接インクは取り込まれる。このため、「Duofold」よりもインクの貯蔵量は増えた。さらに、透き通るバレルのためにインクの残量が 確認することができるようになった。こうした利点から、Parker社は、この「Vacumatic」方式が導入されたのである。
 この万年筆は、Parker製品の中で個人的な好みからは外れる部類である。その主たる理由は、「Vacumatic」機構の修理が簡単にできないことがあげられる。 また、デザインなどからも横縞模様があまり好きではない。縦縞の模様を導入した「Golden Web」や、入手が困難であった「Shadow-Wave」(1938〜9)、最高級品として導入された「Imperial Series」(1940)などは気に入っている。 
 

  「インク吸入機構」   「尻ノックのフィラー」   「大きめのオープンニブ」  

 Parker 社は、1932年の1年間「Vacumatic Pen」のテスト・マーケティングを実施した。その後の1933年に正式に 「Vacumatic」は発売された。これにより、これまでParker社の高級品であった「Duofold Pen」にとって代わることになっていった。
 この万年筆の命名は、当初は「Golden Arrow」としていた。しかし、新しい機能面を前面に出して、販売を促進するために「acuum Fillers」Vとされた 。そして、さらに軽快な口調になるように考えられ「Vacumatic」という名でリリースされるようになった。
 ここで「Vacumatic」のメカニズムについて説明したい。これまでのボタン式のフィラー は、インク嚢を機械的におしつぶし、インク嚢の元に戻ろうとする吸引力でインク嚢にインクを蓄えた。「Vacumatic Pen」は,、万年筆の バレル(銅軸)の尾部に取り付けたゴム幕が人間の横隔膜の役目を果たす仕組みである。軸尻のPlunger(ノブ)を押すとバレル内 の空気が押し出される。Plungerを話すとバレル内が真空状態になる。その結果、バレル内にインクを吸い上げることがでるのである。この新しいインク フィラーの「Vacumatic Pen」は、バレルの容積だけのインクを貯蔵できる。だから、これまでの「Duofold」よりはるかにたくさんのインクが充填できたのである。
 
       
 

Emerald Pearl--------- 1935-1948

Azure Blue Pearl------ 1940-1948

Burgundy Pearl------- 1933-1941

Golden Pearl---------- 1936-1948

Silver Pearl------------ 1933-1948

 




 
  「Vacumatic ペンの色と製造年代」 「改良尻ノックボタン」  

 
「Vacumatic Pen」 には
多くのサイズと色のものが用意された。最も人気のあったのは、色の付いたパールとクリヤーなセルロイドを水平に交互につないだ、バンド模様である。クリヤーな部分もあり、万年筆の使用者が、インクの残量を確認することが可能となり、好評であった。
 この「Vacumatic」方式のインクフィラーは、
1941年発売となった「Parker 51」の初期バージョンや、初期のマンダリンイエローなどにも導入されている。従って、「Vacumatic」方式は、1953年ま での20年間以上も生産されていたことになる。

 
「我が家のPen」 「初期のVacumatic」 「改良型」


 「Vacumatic Pen」の正式な発売は、万年筆の完成から1年かかった。このことは、
先にも述べた通りである。Parker社は、1932年8月から「Golden Arrow」の名前で次世代の万年筆としてのテスト販売を開始した。この革新的な 万年筆は、軸尻のボタン操作でインクの充填ができる「ポンプ・フィラー」を採用したのである。この方式は、Arthur Olaus Dahlberg教授の考案によるもので る。Parker社は、この発明の使用権に高額を出して買上げた。Parker社は、これを万年筆へ導入するために数年を費やして完成させたのである。
 この「ポンプ・フィラー」方式は、他社にはない便利さであり、パーカー社が「Vacumatic
Pen」と命名し、好調な販売実績を上げたのである。皮肉にもこのことから他社では新たなインクフィラーの開発に向かわせる 原因となった。より便利なインクフィラーの開発競争が激しくなったのである。
 「Vacumatic Pen」のバレルは、インクの残量が確認できるように配慮された。それは、バレルを不透明と、透明なセルロイドを交互に接続したことで可能となった。Parker社は、テスト販売の結果が大変好調であったので、1933年3月18日付けのサタディ・イブニング・ポスト紙に、 全面広告を出して世界中に発表したのである。
 「Blue Diamond」クリップの付いたVacumaticは、8.75ドルで当時販売された。1948年(カナダでは1953年まで)にParker Penの製品ラインから姿を消すまで、この値段であったそうである。
 

「初期のクリップ」 「中期のクリップ」 「後期のブルーダイヤ」
「金メッキのキャップリング」 「三重リング」 「二重リング」

 20年間以上販売が続いた万年筆であり、様々な改良や、デザインの変更などがあった。キャップクリップは矢の形をした「Golden Arrow 」のデザインは、ジョゼフ・プラットによって作成されたものである。これも時代とともにブルーダイヤを付けたもの、付いていない物など上の写真の3種類が主たるデザインであった。
 キャプバンドは写真あるように金メッキが施され、彫刻の入った物が多く、細いリング状の物もあるが、写真にある3種類が主なものであった。
 下の写真は、David Shepherd & Dan Zazove の出版した「PARKER  VACUMATIC」に掲載されているNibの写真である。この他にカナダで作られた物もあるようで、相当な数 がある。小生は20数ほど所有している。その中の1本(友人から譲っていただいた物)に珍品があった。下の右の写真にあるように矢羽根デザインがずれた不良品が出回っていたようである。出荷時の検査もくぐり抜けた珍しい珍品と言えよう。
 
「初期のNib」 「30年代・40年代のNib」 「彫刻ミスのNib」


 第2次世界大戦も終了した頃になると、新聞や雑誌の広告も洗練されて きた。カラー印刷の広告も多くなっている。下には「Vacumatic Pen」に関する広告を拾い上げてみた。
 今年(2008-9)ロンドンへ出かけた折、PENFRIEND店で購入した。店のカウンターに見本本としておいてあったのが目に止まり入手してきた。
「PARKER  VACUMATIC」という「Vacumatic Pen」のみを紹介してある(A4サイズ 343ページ)。英語版であるが、「Vacumatic Pen」を歴史的に「初期」「中期」「後期」の3段階に分類して紹介するとともに、Gift-Boxや、広告などや会社の経営内容などまで取り入れてある。マニアには必読の手引き書であると思う。
 

「PARKER  VACUMTIC」 「PARKER  VACUMTIC」