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パーカー61(1956年〜1982年)
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この「パーカー61」こそが、小生が一番大事にした万年筆であると同時に、パーカーの虜にした始まりでもある。 そもそも、左の写真のParker 61 12KGF Insignia は父親からプレゼントされたものである。当時、フィラーの調子が今一つ使い勝手が悪く、人気が出なかった。しかし、私にとってはペンの大きさがパーカー51よりやや小振りであり、手にはなじみやすく、使いやすかった。 それは父からの初めてのプレゼントである想いが、そのように意識させたのかもしれない。 「パーカー61」の特徴は、インクフィラーにある。左の写真のように、プラスチックで造られたもので、Capillary Filler(毛細管スポイト)という方式が採用された。このページの見出しに掲載した広告写真にあるように、インクボトルに突っ込めば、毛細管現象でインクを吸入してくれるのである。しかもテフロン加工されており、拭き取らなくてもいいように工夫されている。 実際に使ってみると大変便利であるが、どれだけインクが入っているか分からないこと、インクを抜きだすことが困難なことなどから人気が上がらなかったようである。 |
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この「パーカー61」の販売されていた前半はパーカー51が全盛であり、デザインもよく似ていた。外観で区別するときは、首軸にアローマークが付けられたのが61である。 1960年代になって、使いかっての良いエアロフィラーや、カートリッジが使える「パーカー45」が市販され、大衆はこの安価な方に流れが変わっていった。 |
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「Allow Mark」 |
「Capillary Filler」 |
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「Capillary System」 | 「首軸のアローマーク」 | |||
「1956初期のParker 61」 | 「キャップのファーストマーク」 | 「初期のFP,SPのセット」 | ||
1956年に初めて販売された「Parker 61」には、上の写真のようにキャップクリップの下に「ファーストマーク」が取り付けられている。初年度以降に販売されたものには取り付けられていない。 Parker社は「Parker 61」の販売に関して相当な熱の入れようであった。その証拠には、「Parker 61」に導入した材質と種類の多さにある。12Kや14K製、12Kの金張り、ステンレスを使ったり 、首軸(セクション)や、胴軸を黒以外に赤や、青などカラーを導入した多様なモデルが販売さた。 後半には、エアロフィラーや、カートリッジ方式に切り替えられ、Hooded Nibの弾力製のなさを改良した「Parker 65」と平行販売されるようになった。 |
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「当時のパーカーの広告」 |
「各種のパーカー61」 |
「エアロフィラー」 |
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カラフルで、気品のあるスタイルであったが、安価な「パーカー45」の方が人気があり、短い寿命となり、パーカー65へとバトンタッチしていった。 |
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《 追 加 》 (07' 02- 26) | ||||
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「右側の8本がPK-61」 | 「Parker 61 レインボー」 | 「14金張り」 | ||
洗練されたフーテッドニブのデザインであり、根強い愛好家も多い万年筆である。小生が収集できたのは8種類である。左上の写真の右側の8本である。今回紹介するのはキャップが14金張りで「レインボー」模様のものである。そもそも「レインボー」模様は「Parker 75」で製品化されたもので、高貴で気品ある万年筆と絶賛を浴びたものである。「Parker 61」では、キャップだけに導入された。万年筆の機能そのものは「Capillary Filler」 のものと々であるが、5mmほどでキャップが長いため、キャップを閉じた状態でも5mmほど長くなっている。(左上写真の右から2本目のもの) |
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「Flighter」「Gold Filled」 | 「Mark Uのセクション 」 | 「Parker 61 Presidential」 | ||
「Parker 61」には、数々の高級品が作られている。上の右の写真にある2本は、「Parker 61 Mark U」と呼ばれている万年筆である。インクフィラーがエアロのカートリッジが取り付けられていることから、「Parker 61」の比較的後期に作られたものと言え、1972年ころから売り出されたとされている。 「Parker 61 Presidential」は、更なる高級品として売り出されたものである。1970年後半に「Waterdrop(水滴)」「Barley(大麦)」「flame(炎)」等のパターンで、9kや18kを彫り抜いて作られた。売り出された製品の数も少なく、幻の万年筆と言えるほど稀少性の高い万年筆となっていた、現在でも1,000ドル程で売買されている。 |
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《 追 加 》 (07' 03- 15) | ||||
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「上 カートリッジ式」 「下 キャピラリー式」 |
「ペン芯」 | |||
これまでに「Parker 61」を10本近く使ってきたが、フーテットニブであり、ペン芯を覗いたことはなかったのである。ところが最近、大阪の友人から「部品取りにどうぞお使いください。」と、「Parker 61」や「Parker 45」を送ってくださった。そこで、フーッテットニブからスッポリとペン芯がはずれてしまった「Parker 61」があったのである。これまでオークションに出品されている「Parker 61」で、毛細管現象を取り入れたインクフィラーを強引に外そうとされ、キャピラリー・フィラーを傷つけてしまったものをよく眼にしてきた。外しかたがわからなかったもので、何時かは見てみたいと思っていたものであったのだ。偶然とはいえ、Nibも見ることができ大いに勉強になった。 特に、キャピラリー・フィラーの場合、ペン芯がフィラーの部分まで伸びた長いぺんしんであり、効率よくインクが流れ出るように工夫されていることがわかった。 |
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《 追 加 》 (08' 07- 03) 「Parker 61」の後期 | ||||
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「Parker 61 Flighter」 | 「Flighteと12KGF 」 | 「61のエアロコンバーター」 | ||
ベストセラーとなった「Parker 51」の後、手を汚さず、自動的にインクを吸い上げてくれる画期的なインクフィラー(Capillary Filler)を導入した「Parker 61」を1956年に発売した。物珍しさもあり、当初の売れ行きは順調であった。しかし、これまで述べたように難点もあり改良を余儀なくされた。新機構の導入を慎重にすべきであったと思われる結果となったのである。 「Parker VACUMATIC」から「Parker 51」に移行するときは、事前に市場調査を実施し、更に多大な資金を注ぎ込んだ宣伝活動を展開した。この結果に大成功を納めるに至ったのである。この「Parker 51」は長期間販売されていたので、インクフィラーもバクマッチック・フィラーからエアロ・インクフィラー(Parker 61が発売となっている頃はエアロインクフィラーのParker 51がよく売れていた。)、そして最終販売品は、現行の物と共通性のあるカートリッジ&コンバーター方式になっていたのである。更に、1964年から販売されている「Parker 75」は、販売当初からカートリッジ&コンバーター方式を導入していて、大流行の兆しを示していた。このような状況火にあり、このように慎重に販売戦略を進める会社であったにも関わらず、敢えて、新開発のCapillary Fillerが導入されたのである。新開発のCapillary Fillerが、これからの万年筆の主導権を掴むと過信してしまったのではなかろうか、としか思えないのである。 |
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「左 USA製 」 「右 England製」 |
「上 前期12KGF」 「下 後期12KGF」 |
「後期と前期のキャップ」 | ||
さて、後期型の「Parker 61」の話しに戻ることにする。現在、入手して使っているのはFlighter 2本と、12KGFの1本の3本である。自分はあまり外へ持ち出さないので、キャピラリーフィラーでも構わないと思っている。ただ、フーテッド・ニブ(Hooded Nib)であり、しなやかさに欠けるので、最近はオープン・ニブ(Open Nib)の物を多く使っている。デザインは、前期のものと後期の物の違いはない。ただ、前期のキャップに「61」とインプリントされていること、「PARKER」の文字が、後期は縦の線が二重の飾り文字であるが、前期は「PARKER」そのままである。 (下の右の写真参照) |
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「左下 Parker 61」 「右上 Parker 65」 |
「上 Parker
61」 「下 Parker 65」 |
「左 Parker 61」 「右 Parker 65」 |
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「Parker 61」の後期のキャップに「61」とインプリントされていない訳は、1969年には Hooded NibからOpen Nibに変換された「PARKER 65」が販売となっていることにつながる。上の中央の写真のように、キャップは共通部品なのである。製造の合理化? 製造工程の簡略化? 共通部品化? などが考えられ、コストダウンを図ったものと思われる。 この「Parker 65」に導入されたフィラーについても不可思議なことが起きている。初期に購入した「PARKER 65」は、固定されたエアロフィラーが装備されていたのである。これには驚いた。これも後半に販売されたものは、カートリッジ&コンバーター方式に変えられているのである。 大きな企業となってしまい、創業者の顧客を第一にした企業思想が揺れた次代であったようである。 |
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