その1

 
     
 

     

   パーカー75(1964年〜1994年)

 
 

 

   「パーカー 75」は、丁度、小生が大学に通っている頃に発売となった万年筆である。家庭教師のアルバイト先から、教えていた小学生が念願の某私立中学校に合格した。そのお礼の品に「パーカー 75」のスターリング・シルバーの万年筆とボールペンのセットを頂いた。ということで、「パーカー 75」との出会いは今から40年以上も前からあったのである。  
       
  「万年筆とボールペンセット」   「高級感のあるペン」   「フランス製の75」  
 この「パーカー 75」の開発は、パーカーペン創設者の子息であるKenneth Parkerと多くのパーカーペン(45,61,VP,T1等)をデザインしたDon Domanが担当したと言われている。当初のデザインとして、胴軸とキャップに純銀(スターリングシルバー)を使い、開発担当をしたKenneth Parkerが持っていたタバコケースの格子柄を取り入れたのである。それにより高級感がでて、発売当初より好調な売れ行きとなったのである。
 販売が開始された頃の社会の様子は、事務用品にボールペンが出回り始めて、高価な万年筆の需要にやや陰りが出始めていた。その証拠に、2千円程のジョッター(ボールペン)や、5千円程の「パーカー 45 」といった安価な製品がよく売れていた。このような状況のときに「パーカー  75 」は販売されたのである。
 「パーカー 75 」の特徴は、何と言っても書き手の癖や、好みに応じて14金のペン先を回わし角度が変えられることである。首軸のアルミリングに目盛りが付けられており、発売当初のものには「0」の印がついていた。角度が変えられる大きな14金ペン先は、同じ機能を持ちながら失敗作といわれた「パーカーVP」(1962年〜1964年)から採用されたものだと言われている。
 インクフィラーはコンバータとカートリッジが用意されていることと、ペン先が簡単に取り替えられることができる。このことは、「パーカー45」から受け継いできている。
「角度が変えられるペン先」 「インクフィラー」 「取り替えられるペン先」
   パーカー75の1964年販売時の値段は25ドルであった。この1964年モデルではペン軸のリングはアルミニウム製であった。しかし、後年のモデルでは、ペンの軸とリングが一体成型のプラスチックに替えられてしまった。これにより「パーカー 75」の高級感が損なわれてしまったと感じた。一方、フランスでの製造が始まって、軸の材質の様々なモデルが売り出された。純銀製のスターリングシルバー、純銀に金を貼ったバーメイル、金張りのインシグニア、ステンレス製のフライター等々がある。また、コレクター向けのスペイン船から引き上げた銀で作られた米国独立記念モデル(Spanish Treasure Fleet 75)等が有名である。  
「フランス製の漆仕上げ」 「USAの金張り」 「Insigniaとシルバー」

 1979年にフランスのメル工場で漆塗りやラッカー・モデルが生産され、その後「パーカー75」のほとんどの生産はフランスに移った。1994年に後継モデルのソネットが発売されたことで生産が終了した。
 「パーカー75」がいかに完成度の高い万年筆であったかは、発売から30年間で、1千万本以上が売れたことで照明される。筆記具として今なお現役で活躍しているのも多いペンである。
 

Prince de Galles

「我が家の75」 「ラッカー仕様の75」 「初期のPk-75」
 「パーカー75」も大事にしてきた万年筆であるが、使って見て、良さを味わって頂きたいものである。小生は、いま、この75シリーズを集めてみようという気になった。オークションで落札して、家に待望の万年筆が届いたときも、必ず文字を書いている。オークションを通じて入手する場合、新品以外は、ほとんどと言っていいほどインクが入ったままである。そこで、そのインクが無くなるまで使い、無くなってから綺麗に掃除をしたり、オーバーホールしたりしている。
 「パーカー 75」に関しては大層気に入った万年筆であり、50本以上を所有している。フランスで製造されるようになってから、バレルのデザインは変わっていないが、ラッカー仕上げ、金メッキ仕様、ソリッドゴールド仕様、ステンレス仕様、チタン仕様等々、多くの製品がつくりだされた。さらに、高級品仕様として「 パーカー  Premier 」、「パーカー  T-I 」、「パーカー85」が作られた。
 小生は今も「パーカー 75」のスターリング・シルバーを日々使っている。ブルーブラックのインクで書き上げた書類は(一段と目に付きやすく、きちんと仕上げなければならないが----。)如何にも仕事をしたぞ!という、満足感を与えてくれる。
 さて、このところオークションでも、「パーカー 75」の人気が高まっている。中でも首軸のアルミリングの目盛りに”0”の入ったものが高値を呼んでいる。デッドストック品等は発売当初の3〜4倍に近い値で取引されているのに驚く。 さらに、首軸に金属が使われている、本当の初期型などは3〜4万円近い値で取引されている。コレクターのなすことであり、とても残念である。書くことを楽しんで欲しいものと言いたい。
 

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