新　　　刊 ガラスの玉ねぎ −こどもの姿を写し出す１年白組教室通信− ジャパンマシニスト社刊

Ｏｈａ５周年記念 岡崎学級のすべて がわかる

『ガラ玉』紹介　〜ホームページ版〜

　「こんばんは〜」
と、口々に、あいさつをしながら入ってくる。おもしろ学校職員室の打合せ風景だ。
　「いやあ、すまない。高速飛ばして来たんだけどさ。１５分でついちゃった」
　「さ、やろうか。で、次のおもしろ学校で、今日は、時間割づくりってことで、よかったんだっけ、な」
　こんな調子でワイワイと始まる打合せ。前回の反省をもとに練り上げていく。小学校では教えた経験のない私は、いつも、どんな授業が組み上がっていくのか楽しみな時間である。

　おもしろ学校ごっこは１９９３年１２月に始まった。当時は「名古屋 ひとの会」と名乗っていたグループである。前身はと言いたいところだが、私が入ってからはメンバーが増えもしないし減りもしない。『ひと』という雑誌が休刊し、９８年の本出版を契機に名前を変えた。私自身は、１９９２年の１２月に初参加した最も若い新参者である。このときにひらいていたのは授業実践報告会。発表者は岡崎さんで、テーマは「家族って何だろう。」だった。
　学生だった私は、メンバーの迫力や知識の豊富さに圧倒され、ほとんどしゃべった記憶がない。そんな頃、岡崎さんから教わったことがある。「マジメ一辺倒より、いい加減」「あんがい、管理教育って良かったところもあったかもよ」
　瞬間、「マジ？」って思った次第。よくよく聞けば、いろんな意味と含みのある言葉だったのだけど。

　そんな教育現場の右も左もわからないような私が、いつも楽しみにしていたものがおもしろ学校の打合せの時にたまに見せてもらえる岡崎さんの「学級通信」だ−。

　と書けば「紹介」という感じになるのだけど、あいにく、ほかのメンバーほど真剣に読んでいないような気がする。正直に告白すれば、自分の興味のあるところしか読んでない。いや、それすらあやしい。そんな私がなんで紹介をかいてるかといえば「ホームページならではの紹介にして」と岡崎さんに言われたからだ。依頼されてから一ヶ月経ってるなあ。。。
　何となく教員免許を取ってみたものの、絶対になりたくない職業のナンバー１とナンバー２が教員と医者（笑）だった私。管理教育の名の下に人前で平気で差別をしてくる教員や、体の障害をいとわずに薬を処方する医者にどうしてもむかついていた。そんな私が、なんで岡崎さんと出会う機会があったのだろうと思うかもしれない。私にもよくわからない。
　教育の世界をハスにみていた私には、岡崎さんがものごとに正面からぶつかるように見えてとてもまぶしかった。あまりにまぶしくて、目をそむけて逃げ出したくなった。しかし、残念ながら逃げ方を知らなかったためか、自分が「変わりたい」と思っていたせいか、思いっきり踏ん張ってみた。あれから１１年以上経っている。その間、岡崎さんはずっと学級通信を書き続けている（のだと思う）。当然、岡崎さんの学級通信は毎年題名が変わる。今年はなんだっけ？　また聞いてみよう。

　さて、ガラ玉である。「ガラスの玉ねぎ」、略称「ガラ玉」は２００３年度の岡崎クラスの学級通信の名前である。なんでガラスの玉ねぎなのか？　私にはまったく意味がわからない。玉ねぎと聞くと斉藤由貴が出てくる世代なので（これも古い話かもしれない）、今回、本を手にしてはじめてビートルズだと知った。ずーとるびを先に知った私は「ポンキッキ」がビートルズだらけだったことに大学生の時にはじめて気づいたくらいなので、これにはまるで気づかなかった。個人的には、生まれたときには解散していたビートルズがおもしろ学校のメンバーに熱く語られる（歌われる？）のをとてもおもしろいと思っている。
　もう一度、ガラ玉である。これは極上のエッセイ集である。どこから読んでもおもしろいというのは、これは良く使われる宣伝文句だが、ガラ玉は是非はじめから読んでほしい。この本を、いま子育てをしている人や教育関係者だけが読むというのはもったいない。岡崎さんの学級通信を本にしたいと思ったジャパンマシニスト社の人の気持ちがわかるように思う。ここは文庫化も視野に入れてはどうだろう？
　私がもっとも気に入ったのは教室通信のコツとツボ。正確には「匠の技師　岡崎勝流教室通信　１０のコツ　１１のツボ」となっている。「コツとツボ」と聞いて、管理教育を「コツツボ」にでもホウリコムのかしらと、期待して読んだのは私だけではないと思うが、期待に反して（？）、岡崎さんはマジメに書いている。書く方も読む方も、そして周りも楽しめるように力を抜いて、考えてというメッセージだと思う。
　たぶん、この「楽しむ」ってのがミソなんだろう。１年間を楽しむのは才能だ。いや無能か？　でも、苦悩がいくらあっても、振り返ってみて楽しいと思うことは可能だ。ちなみに地図をつくったのは伊能だ。と、駄洒落を言ってもしかたがない。ただ、ついつい、シャレを言ってみたくなる。そんな楽しさや魅力がこの「ガラ玉」にはある。

　この本を手にする人に最後に注意をしておこう。読むスピードに自信がなければ、はじめは時間に余裕のあるときに開くといい。あっという間に時間が過ぎる。かくいう私も、すでに午前３時をまわってる。


松尾かずな（おもしろ学校）

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