きょういく大研究(1998.12.4)

教育長の夢は断たれた!

 ボクは今年度、自分の所属している組合の執行委員長になった。これ程「名誉」なことはない……と言うのもちょっと恥ずかしいけど。組合名は「がっこうコミュニティユニオン・あいち」(略称ASCU、アスク)という。結成して11年になる。日教組や全教との関係はない。上部団体とか政党と無縁の、いわゆる自立独立系組合である。

 毎年夏に、全国の仲間の組合が集まって交流集会を開いている。全国にこういう組合が15こある。また一つできるかもしれない。全国あちらこちらにできている。一応、行政当局に届けを出して「登録団体」になっている。

 アスクは公称50名で小中高の学校労働者で組織されている。しかし、長く書記長をやってきたボクは、いままで「機関決定」なるものに、きちんとめぐりあったことがない。つまり、アスクのメンバーは大抵学校に一人しかいない。二人以上になると「配転」させられることになっている(ようだ)。だから、「私の決定=組合決定」ということになって、各分会の実態に合わせて「適切に組合決定ができる」のである。これは、当然のことながら校長や教委に混乱を招く。あの学校では要求しているのに、こちらの組合では「まあいいんじゃないの」とか言っている。時には「同じ組合員だからといってもな、人格は別だ、一緒にするな!」と言う人もいるらしい。しかし、たとえ辛党と甘党でも、抗議行動だけはいつも一緒にやることになっている。面倒な話し合いになる執行委員会や全員会にはあまり出席しないが、抗議だけは、きちんと来る人が多い。「今日は、なんの抗議だっけ?」と小声でボクに聞いたりする人もいてワクワクするけど。「じゃあ、これで決着ですね」とまとまりかけると、組合員が「それはいかん!謝罪が必要だ!」などと言って、身内で意見が食い違い、当局,も誰が代表か分からなくなって困惑することもある。きょろきょろしていると、「何をキョロキョロしとるんだ!」と我が組合員に叱られてしまう管理職もいる。

 ボクたちは極めて論理的でかつ合法的なのだが、当局はまったくそうでない。これにはいつも驚く。教育課長に「教育長はどこですか?」というと「ちょっと分からない」というので、「そうかそうか、じゃあ明日からボクらが勤務時間中にどこかへ行っていなくなっても、絶対に処分するなよな!」と言うことにしている。先日などは、会いに行った課長が湯沸かし室で電気を消して隠れていたのを見つけたが、まったく面白いことばかりが起きるから抗議はやめられない。でも、アスクのメンバーだけで学校を作ったら、ボクは、多分すぐに「転勤希望」を出すだろう。こういう組合の委員長は、ほとんど存在感も責任もなく気楽にできるのである。これでボクも教育長の座をあきらめることになったのは残念だが………?!

(社会臨床学会のニュース誌掲載1998.12)


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