きょういく大研究(2004.3.26)

熊本日日新聞 「学びの窓」

    「開かれた学校」の閉じられた門

     職員会議で「学校評価」の話が出た。地域住民に自分たちの学校がどれだけ教育的 な努力をして、成果を上げているかを知らせるためだという。なるほど、学校は今ま で閉鎖的だったように私も思う。
     しかし、その学校評価を先進的にやっている学校が、本当に地域に開かれた学校に なっているのだろうか? そもそも「地域に開かれた学校」で、みんなはどんなイメー ジを持っているのか? 私自身の考えている「地域に開かれた学校」とは、今、文科 省や教育委員会が一生懸命推進しようとしているのとは、そうとう違うのだ。
     私は、十年間勤務した学校を異動になり、昨年の四月から新しい学校へ赴任した。 最初に地域がどんなところか知りたくて、入学式の準備もそこそこに学区を歩いた。 もちろん勤務時間中に。すぐに、自転車を一台自分用に購入して、あちこちと走り回っ た。ほとんど、無計画に学区を走った。そして、コンビニや、子どもたちが出入りし そうな小さなお菓子屋さんや、コミュニティセンター、公園、ゲームセンター、百円 ショップ、本やさん等々を、見て回った。忙しい新学期だったが、私は、会議よりも それを優先した。どうしても必要な会議は出席したが、一任できるものは他の人に任 せたり、任せられたりした。
     交番へ行って、無愛想な警察官に「今度来たオカザキって教員です。ちょくちょく 遊びに来ますからね」と言って嫌な顔をされたりもした。学童保育所へも行って、指 導員の先生とやんちゃな子どもの話もした。
     こうしたことを、勤務時間にちゃんとやれるのが良い学校なのだ。学校という制度 が開かれるわけではない。その学校で仕事をしてる教員が、ドシドシと学校の外へ出 ていって、学校の外で、子どもに出会うことが必要だと思っている。学校の外で、子 どもと出会えば、そこには、親や近所の人がいる。そういう人と話しもできる。そこ で、家族のことや、子どもへの期待だとか、生活のしんどさがちょっとでも見えれば、 学校でのこどもたちとのつき合い方もずいぶん違ってくる。
     ときどき、教員が世間知らずだというが、ならば、街へ出ればいい。会議を一回減 らして、子どもと一緒に、道草しながら帰るとか、一緒にお菓子屋さんへいくとか、 そんなことをやってみたらどうか? 「子どもに近い順に仕事をしましょう」と言え る頭脳明晰な校長がいれば、教職員も自由に学校を開けるだろう。
     先日、私は、学区のお菓子屋さんに、子どもと一緒に行った。もうちょっとでおご らされるところだったが、お菓子屋さんのおばさんに、「先生は、いいわねえ、子ど もと一緒に遊べて」と言われ、「そうそう、先生が子どもと一緒に、お菓子食べてる なんて絵になるねえ、いいじゃないの。ねえ、おまけしてよ」と言いながら、子ども の自転車を借りて走って、しばらく遊んだ。
     「学校を開きましょう」などと声高に言わなくても、自分が門をこじ開けて出てい けばいいのだ。
    (2004.3.26)


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