きょういく大研究(2005.3)

卒業生はみんな危険なのか?

 大阪で起きた、卒業生の教師殺傷事件は、衝撃的だった。しかし、すさまじい学校事件がつぎつぎと起きるので、「もう、かんべんしてよ」という感じだ。職員室でも、あまり話題にしたがらない。
 今回はとくに、加害者が卒業生だったからだ。だって卒業生が来たら、「ナイフはないだろうね?」といちいち聞く教員はいない。「嫌な先生を刺しに来たんじゃないだろうね」と聞くはずもない。私も、卒業生が来たら、たいていは卒業のときの担任を呼びにいってあげる。多少、突っ張って、金髪だったとしてもだ。小学校時代のことを思い出すから来てくれているのだろうから、とりあえずは営業的にはリピーターの扱いだ。もちろん、以前いた学校では、小学校の校舎の裏をシンナー吸引場にしていた、とんでもない卒業生もいたので、やさしく(笑)注意し、けんかしたことはある。
 今回のような事件は、防ぎようがない。後ろから追突されたようなものだ。
 教育委員会が「先生も護身術を身につけるべきだ」といいだし、さすまたの使い方を練習したりする学校もあるようだが、何か間違っているような気がする。実際に、学校へ来て悪さをしようとするなら、いくらでも入れる。アメリカのように銃だって持ち込めるかもしれない。門に警備員を立てたって、悪意のある人間ならなんでもやるだろう? それに、警備員の仕事は、巷でいわれるほど守備範囲が広くない。私が警備員のアルバイトをしていたころ「粋がって、危険なことはやってはいけません。逃げてください」と上司に指導された。「いないより、いい」という程度だと思う。
 今、学校でいろいろと安全対策をしているが、みんな不十分で、場当たり式だ。もちろん、何もしないよりはいいのかもしれない。でも、本当は「自分の命は自分で守りましょう」ということを、小さな子どもに言わなくてはならない世の中にした私たち大人が責任をどう取るかという問題だろう。
 「平和」のために空爆やテロを続ける大人、自殺する三万人、そんな大人たちを日常的に見ていたら、子どももおかしくなるさ。道草も、冒険もできなくなったのは、ひとえに「あなたの責任だし、私の責任だろう」と思う。
 学校で、不審者侵入の危険時対応の教職員マニュアルがあって、今度の事件後、その確認作業があった。「ええと、岡崎先生は、現場対応要員ですから」だという。それ何?と聞くと、「ええ、不審者と対峙していただくことになります」と教頭。「マジかよ?」
(熊本日日新聞2005年3月号)


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