お疲れ「哀・地球博」 引率記
その壮大な無駄!愛知万博

     予想通り、疲れ、むなしく、怒れる行事だった。どこが、環境博? どこが国際理解? 職場の先陣を切った、六年生担任オカザキが報告する。「哀、地球博・やっぱり思った通りじゃないか、コノヤロー。責任者出てこい!バーカ!」の巻き。

  1. 会場に早く連れてってよ

     四月二七日六年生を引率して、午前八時四〇分、鯱バスに 乗って六年生を引率し、万博へ行く。水曜日なのだが、連休前の「一仕事」の感あり。
     国道三〇二号つまり東名阪自動車道に重なりながら、上社 ジャンクションを東に、東部丘陵線リニモの下を走る。トヨタ博物館のあたりから、団体バスが多くなり、速度も落ちる。こういうバスがたくさん排気ガスをまき散らす、環境は苦(環境博)である。九時半過ぎに、やっと駐車場が見えてくる。
     会場の西ターミナルの中央に停車して、チケット受領などの手続きを旅行会社の添乗員の人がやってくれる。それが、終わるまでみんなバス中で待機する。駐車した所から、多くの小中学生団体が入場する西ゲートまで、直線距離で五百メートル弱(あとで地図を見ると、駐車場の範囲からいうと、まだ近い方だった)。しかし、車窓から見ると、小中、幼稚園のような、子供子供子供子供! 通路は、渋滞して、列はちょっとづつしか動いていかない。
     確かに、この子供たちが、九時前後に集中してくるのだか ら、当然のこと混雑する。しかも、我ら六年生のような高学年よりも、低中学年が目立つ。高校生も若干(あとで、高校生がどんと来場する)。
     いろんな学校が、帽子や服に、目印をつけている。ガムテープに名前を書いて帽子に貼ったり、赤のビニールテープを肩に貼ったりと色々工夫している。でも、正直、会場ではそんなに「一目瞭然」とはいかない。広くて色々な目印があって、大変。それよりも、本校のように、「何も目印がしていないのがうちの学校」というのがよかったかもしれない……という程度のこと。ICチップ埋め込みの方がいいかもな(笑い)。
     手続き終了まで、ざっと二〇分くらい。やっと下車。走ってきて汗だくの添乗員が、「手続きが終わりました」と報告。ゆっくり降りて整列して点呼。やっと進行、西ゲートまで行こうと気合いを入れる。
     ところが、私たちが止まっている間にも、どんどん団体バスがやってくる。だから、狭い通路に子供たちが集中し、譲り合っているうちに、なかなか前へすすめない。もちろん、醜い争いはない。だが、その列の脇を、「すみませ〜ん」と言って、子供のトイレに走る先生が何組もある。
     西ゲートへいく通路に上がるためのエスカレーターの手前に、トイレと小さな広場があり、そこで、係の人に、いったん止められる。ここで、エスカレーターで上がるため順番を待つ。係員が、無線機で、出発の調整しながら、連絡を取りあっている。その間に、子供たちにトイレの使用を促す。
     トイレも、勝手に使えない。団体は並んで行くようにとの指示。ここのトイレは、一方通行であり、男女別表示がちいさい。若干、子供たちもとまどっている。「団体小学生」と表示したプラカード持った高齢の教育委員会風の男性が、場違いで、異様なダークスーツで立っている。なんとか、十五分くらいそこで待機したあと、やっとエスカレーターに乗る。
     上がると、一〇〇メートルくらいの距離の動く歩道。が、動いてないので、歩く。おそらく、動かすより歩いた方が早いし、安全なのだろう(帰りは動いていた)。

  2. テロリストは列を作って入場するかもよ!

     このあたりでも、案内係が、大きな声で、二列にして下さいとか、前の人を押さないでとかアテンション。でも、子供たちには聞こえない。テンションが上がっているので、右手に見える遊びと参加ゾーンに夢中。
     しばらくすると、案内係が、踏み台の上から、「団体以外は持ち物検査があります。金属探知機を通ります」とアテンション。西ゲートの左から(北側)から、私たちは子供と入場。チケットの提示も無し。もちろん、持ち物検査もない。このあたり、テロリストが、自分たちでゲート前で子供を使って列をつくり、団体をでっち上げ、まぎれて、入場したらどうするんだよ! 明確な分離点検システムがない。
     ゲートを通った直後、右へ行こうとする小学生の列と、左へ行こうとする一般客が交差する。前からも人が来る。トイレを待つ団体もいる。ゲート前が交差して、異様に混雑する。
     でも、列に強固(笑い)にこだわっている小学生は前後の間を開けないので、強引に、案内係が割って入る。小さい子、大きい子が入り乱れて、右往左往する。
     ここで、ちゃんと前の子についていないと、迷子に「確実になる」と思われる。特に小さい子は大変だ。前の子のリュックを持って列を維持している学校もあるが、あれは、危ない。危ないが、やりたくなるくらい混雑している。
     この時、すでに十時過ぎ。予定としては十時から散策スタートだったのに。
     下見が、これほど役に立たなかったことも珍しい。途中で、とんでもないアクシデントが起きた。

  3. 集合解散場所の変更!

     行きに、下車して入場する途中で、添乗員が「先生、集合場所に予定していた、日本広場が、今日は催しがあるとかで、使うのを禁止されました」と言うのだ。
     子供たちには、集合も解散も、すべて日本広場でやると伝えてあるので、困った。早速相談して「小原和紙空間」の前の道にしようと急きょ決定。しかし、「道が広ければいいけどなあ」と心配しながら向かう。
     途中に通った日本広場は、もう相当な混み様で、もともとレストランの集中しているエントランスが近いこともあって、列を作って歩く小学生や、一般客でごった返していた。結局、長久手愛知館という、ほとんど人の集まらない館の西側の空いたスペースを拠点にすることにして、そこへ、子供たちを集め、留意点と帰りの集合におくれないことを念押しして解散。十一時すぎになっていた。(予定より一時間以上遅れ)

  4. なすすべもなくただ待つだけ!

     担任がタイムスケジュールの交代制で拠点に在駐することにしていたが、すでに、精神的に疲労困憊状態で、まあ適当にやりましょうということになる。
     それぞれが、適当に、コモンを周回することにしたが、広いのでとても全部はまわりきれない。
     私のクラスの子供が、体調不良のため、診療所で養護の先生付添のもと休憩。教員の数が足らないと困ったことになっただろうとヒヤリ。
     私は、エキスポドームでウィーン少年少女合唱団が公演予定だというので、そこまで行ってみる。会場南の果て。ところ が、すでに満席で二時間くらい待たないと、次の公演がないようで、すごいなあと言って帰ってくる。
     途中で、クラスの子供たち二チームに出会う。
     また、日影のある休憩場所まで来ると、養護学校の生徒で、興奮気味の大柄の男子を、小柄の女性教員二人が押さえてなだめている。教員二人に子供一人でもきつそうだった。もっと、手厚い補助が必要なのではないかと、怒れる。無神経なアテンダントが、「パビリオンに入れますよ」と言うと、「それどころじゃないんですっ」と教員も怒り。万博さえなけりゃ、もっと、他のゆったりと行けるところを探したのに! という感じがする。
     結局、午後一時半の集合時間に、くたびれた子供たちが無事全員到着。約一名が、水筒をコモンに忘れて、担任と走る。走るんですよ! どっと疲れますね。

  5. 行ってみなけりゃ、わからない!から困るぜ

     パビリオンは、並ばずに入れるところは少ない。並ぶ時間が数分なら、子供たちは待って入ったようだし、そのあたりの判断は上手くやれる高学年。が、低学年はムリだよな。
     そもそも、他の学校の低学年を見ていると、子供たちを座らせているか? あてもなく歩いているかのどちらかに見える。パビリオンに入るにしても、明るいところでないと児童管理できないし、一年生にワケのわかるパビリオンは……あるかな?おそらく、ないと思う。その場その場で判断するしかない。
     結局、小遣いを持っていない子供たちは、何かもらえるパビリオンを上手く探し、工作おもちゃ、紙の旗、フォト、パンフレットなどもらってきた。一番羨ましがられたのは、ブルガリヤ館でヨーグルトをもらってきた子ども達である。
     お金がないと、つまらないだろうなあと思う。「えびせんの里」まである万博って、物産店そのものじゃないの、何コレ?
     トイレは、たくさんあるが、場所が分かりにくいんで、なれればいいが子供たちも困ったようだ。一部のトイレは、外まで並んでいるが、グローバルループの上のトイレは空いている。だが、ループへの上がり口が見つけにくくて困った。
     こういう建築は、一人でゆっくり来たり、デートでくるなら多少のごちゃごちゃも気にならないが、たくさんの子供を連れてくるのは辛い。
     これから、暑くなったり、雨が降ったりすると大変だ。
     帰りも、長い列を所どころで分断しながら、なんとか、無事バスまで戻った。行きに比べ早くついた。それでも、二時過ぎである。予定ぎりぎりだ。
     そこへ携帯電話「お宅の学校のお子さんの帽子がゲートに届いています」「それなら、保管しておいてください」「いや、私は連絡するだけの係なので保管については、また連絡します。」と(笑い)。すぐに、「保管の係ですが、学校へ送りますから」というのでお礼を言って、けっこう親切だなあと感動。しかし、次の日、宅急便が「着払い七四〇円」で届いて、「はぁ?」だった。最後までやってくれますなあ。感動して損した。
     そうだよな、こんな馬鹿なことやる万博協会や当局がそんな親切なわけないよな。

    (2005.4.28 記録)


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