書 評

『逆』読書法

百人一首の謎

日下公人『「逆」読書法』知的生きかた文庫、2000年。
 

 考える術、書く術があるのと同様に読む術がある」(There is an art in reading, as well as in thinking and writing.)

 これは、Isaac Disraeliの言葉です。

 読書というものは、あるがままに読めばいいというものではありません。自分の中に理念を持っていなければ、本の思うままに操られてしまいます。人は物事を考えるとき、自分では意識していなくても、言葉を使って考えています。言葉は、考えや思想を生み出します。この命題は真であると私は思うし、真であると信じています。本の中にある活字も言葉の一種です。活字は、思想・考えを人の心の中に植えつけます。その影響は思いのほか大きいものとなります。マルクスの『資本論』が書かれなければ、ソ連はこの世に存在しなかったかもしれません。一冊の本の思想が、一国を作り上げてしまった一つの例です。しかも、その思想が現実に適用させる上で、必ずしも健全なものとはいえなかったので、ソ連という国家は、現在は消滅してしまっています。活字の思想を無批判に鵜呑みにすると、自分の身を滅ぼすことにもつながりかねません。そういった意味において、古代人の信じていた「言霊」という言葉も、あながち軽視できないものです。

 『「逆」読書法』の日下公人氏のよる主張は、結局のところ、「世間に流されないようにしよう。暗黙のこととされている世間の常識を疑ってかかろう」ということに尽きると、私は思います。それは、すなわち、「自分自身で考える人間になろう」ということです。そのためには、読書をするとき、ただ無批判に本を読むのではなく、いくつかの読書法を駆使する必要があります。以下は、『「逆」読書法』の中で取り上げられている読書法の一部です。

 ●役に立たないように思われる本を読む。

 ●人の読む本とは逆の本を読む。

 ●暗黙の大前提を疑って読む。

 ●著者の年齢、背景を考えながら読む。

 ●問題意識のワナだらけにして読む。

 ●幼年時代からの素朴な疑問を大切にする。

 ●1テーマにつき10冊の本を読む。

 ●中立の立場で書かれている本より、両極端の立場で書かれている本2冊を読む。

 ●解説本より原典のほうが易しい。

 ●読書と体験の相互作用を生かす。

 日下公人氏は、読書法について書いているのですが、それだけでなく、人間としての生き方をも著しています。「本を読むからには、一人前の人間になる必要があるし、また、一人前の人間にならなければならない」ということです。

 『「逆」読書法』は、普段何気なくしている行為である、活字を読むという行為について、一石を投じかける書物であると言えます。





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