英 語

WINDMILLS OF THE GODS

英語の歴史

中尾俊夫『英語の歴史』講談社現代新書、1989年。
 

 中尾俊夫著『英語の歴史』の中で次の文章に出会った。高校生以上の方には、一度訳してもらいたい。単語は中学生でもわかるレベルであるが、いざ訳そうとすると難しいことがわかるだろう。

 The son of Pharaoh's daughter was the daughter of Pharaoh's son.

 「ファラオの娘の息子は、ファラオの息子の娘だった」と訳した方、何かあなたの訳文に違和感はないだろうか。
 娘の息子は、本当に息子の娘になるのだろうか。答えは否。「娘の息子=息子の娘」とは常識的にはなりえない。
 正解訳は「ファラオの息子の娘は、ファラオの息子の娘だった」である。

 なぜ、このような訳文になるかを読解していく。

 まず、wasの前のThe son of Pharaoh's daughterに注目する。この文の構造をわかりやすくするため括弧を用いると、[The son of Pharaoh]'s daughterとなる。'sはPharaohに付けられているのではなく、The son of Pharaoh全体に付けられている。つまり、The son of Pharaoh's全体が所有格なのである。主語は、sonではなく、daughterである。

 一方、wasの後ろのthe daughter of Pharaoh's sonは、他のよく見かける英文と同じように、of Pharaoh's sonが前方のthe daughterを修飾する。daughterは補語となる。

 The son of Pharaoh全体が所有格になる場合、グループ所有格と呼ぶらしい。私も以前に、このような所有格の用法を見たことがあったが、この本を読むまで、この所有格の存在をすっかり忘れていた。

 『英語の歴史』には、他にも、このような珍しい英文の例が、歴史的背景とともに述べられているので、こういったことに興味がある人には一読することをお勧めする。





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