短 評

「ほうか」

日本語と英語

<ほうか>

 「ホウカ」という言葉を聞いたとき、あなたなら、どのような意味を持った言葉を頭に思い浮かべるでしょうか。
 ある人は、「放火」、「法科」、「砲火」などの言葉を思い浮かべることと思います。また、別のある人は、「放下」や「放課」といった言葉を思い浮かべるかもしれません。
 さらに、これらの言葉の意味も思い浮かべてみてください。
 今挙げた、それぞれの言葉の意味は下記の通りになります。

  放火 …… わざと火をつけて火事を起こすこと。
  法科 …… 法の科条。法律に関する学科。
  砲火 …… 火砲を発射したときに出る火。
  放下 …… 投げ捨てること。
  放課 …… その日の所定時間の授業が終わること。

 上記の言葉の意味を見て、ふと疑問に思う人がいるかもしれません。おそらく、それは、「放課」の意味のことではないでしょうか。彼らは次のように述べると考えられます。「放課とは、授業と授業の間の休み時間のことではないのか」と。
 ところが、大多数の人は、その意見に反対することでしょう。ほとんどの人は、「放課」=「その日の所定時間の授業が終わること」であると理解しています。しかも、その理解は正しいのです。
 辞書で調べると、「放課」=「その日の所定時間の授業が終わること」=「放課後」(つまり、「放課」=「放課後」)と記されています。「放課」というよりも、「放課後」といったほうが一般的であるでしょう。

 それでは、「放課」=「授業と授業の間の休み時間」と考えている人が間違っているのでしょうか。

 結論を言います。先程、「放課」の意味を疑問に思った人は、愛知県の人です。(場合によっては、愛知県周辺に在住の人も含まれるかもしれません。)
 愛知県では、「放課」は「授業と授業の間の休み時間」を意味します。そして、愛知県人は、「その日の所定時間の授業が終わること」を「放課後」と考えています。愛知県では、「放課」と「放課後」の意味が違うのです。
 一方、全国的には、「放課」と「放課後」は同じ意味であり、ともに「その日の所定時間の授業が終わること」を意味しています。「授業と授業の間の休み時間」は「休み時間」と表現します。

 つまり、愛知県と愛知県を除いた全国地域を比べると、次のようになります。

 愛知県
  放課 …… 授業と授業の間の休み時間。
  放課後 …… その日の所定時間の授業が終わること。

 愛知県を除いた全国地域
  休み時間 …… 授業と授業の間の休み時間。
  放課=放課後 …… その日の所定時間の授業が終わること。

 このような事実を見ると、「放課」を「授業と授業の間の休み時間」という意味で用いる場合には、この「放課」という言葉は愛知県の方言と呼んでも差支えがないような気がします。ふつう方言とはある地方特有の言葉に対して使われます。では、全国的には使われている言語ではあるが、特定の地方においてのみ、異なった意味を持つ言語を方言と呼ぶべきでしょうか。
 広辞苑で「方言」の意味を調べると、

 1、一つの言語において、使用される地域の違いが生み出す音韻・語彙・文法的な相違。また、そのような相違に基づく同一言語の下位区分。地理的方言。

 2、共通言語に対して、ある地方だけで使用される語。

 3、社会的身分・職業・年齢・性別などの要因が生み出す音韻・語彙・文法的な特徴。また、そのような特徴によって区分された同一言語の変種。社会的方言。

 と書かれています。

 方言を「使用される地域の違いが生み出す語彙の相違」と考えれば、「授業と授業の間の休み時間」の意味の「放課」は、愛知県の方言であると考えることができます。

 「放課」という言葉は、私たちに次のような示唆を与えてくれます。それは、普段何気なく使っていて、誰にでも通用すると思っている言葉でも、地域によっては意味が違ってくるということです。





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