"GEOMETRIC "

   
       (別名 “Toothbrush”)
 
 
(1939年〜1940年販売)
   「Duofold Geometric」として販売
    
 

 

 
       
   
 「Parker Geometric」は、製造期間が短かかったこともあるが、本体のデザイン はこれまでにないものである。そのために、この万年筆はコレクターから珍重されている1本である。
また「Geometric」は、色(ブロンズ、グリーン、グレイ、ブラック)用意され、発売当初から魅力的で、珍しがられた。しかし、万年筆自体にメリット(Fillerも古いシステムであること)を持たなかったために、それはその独特のデザインだけがもてはやされた。1939年のParkerカタログには以下の4色が掲載されている。
 
 

Brown

  Brown  
 

Green

  Green  
 

Grey

  Grey  
 

Black

  Black  
 
       
「Victory調のクリップ 」 「オープンNib」 「Button Filler」
 
 
「Duofold」と命名された万年筆は、1921年に導入されて以来、世界中で最高の万年筆であると称えられてきた。 しかし、Parker社は次代の万年筆は「Vacumatic」としたために、「Duofold」は静かに引退していった。この 万年筆は、1935年にはカタログからも消え 去ったのである。
 1933年から1948年にかけては「Vacumatic Pen」が全盛の時代となった。そんな中で「Victory」(1932-1935)初期タイプ、Televisor」(1932-1945)、Challenge1936-1939)などが 新しい「Vacumatic Filler System」を導入せずに、以前に導入して重宝した「Button Filler」を使った異なったモデルを製品化していた。(Old Duofold全盛時代のButtom Fillerの部品がたくさん残っており、それらを消化する手だてであったと、説く人もいる。 )この中で、1939年〜1940年にかけて 製造販売されDuofoldの名称を唯一使った万年筆があった。それが今回紹介する「Parker Geometric」なのである。
 
 
       
  「FPのインプリント」   「SPのいんぷりんと」   「当時の広告」パーカーカタログより
 
 

 発売当時の評価は、「Vacumatic Pen」より低く、2年未満という短い期間だけ市場に出ていた。しかし、その後は、Vacumatic Filler を導入した「
Striped Duofold」に引き継がれたのである。 名称のことで異なった説として、クリップの形状が「Victory」と類似していることから「Duofold」ではなく「Victory」の亜種ではないかと言い、「Victory  Geometric」と表現している人もいる。(このことについて、以下の追加の項を参照してください。カナダ製の「Geometric」には「PARKER VICTORY Geometric」とバレルにインプリントされている。)
 「Geometric」
(幾何学模様)は写真に見られるように、キャップとバレル(胴軸)部分には一見すると「歯ブラシ」を連想するパターンが施されている。このために欧米では別名 として「Tooth brush pattern」と呼ばれている。
 万年筆自体は、
キャップを閉じた状態で全長がおよそ129mm、バレルの太さはおよそ11mmで、「Victory」よりやや小振りな感じである。
 現在アメリカでは、「Parker Duofold Geometric : This is the large size in silver(the scan is a bit too green)fine nib, EXC. $195」とあり、2万円前後で取引されている。
 
追 加 (09’8 26)
「銅時代の万年筆」 「下から2本目がカナダ製」 「上 カナダ製」
「下 USA 製」

 今回、追加で紹介するのは、カナダ製の「Parker Geometric」である。これまでの「Geometric」は、「Duofold」でU,S,A製であった。今回(09’8)、これまでのものより大型のように 感じたので入手したのである。
 実際に、これまでのものと並べてみると、上の写真のようにはっきりと大きさが違うことがわかる。簡便にメジャーではかってみると以下の通りであった。
 アメリカ製----全長(キャップした状態): 117mm、バレル直径 :   9.0mm
   カナダ製------全長(キャップした状態): 131mm、バレル直径 : 12.0mm
 
「左 USA 製」
「右 カナダ製」
「左 USA 製」
「右 カナダ製」
「左 USA 製」
「右 カナダ製」

 キャップやバレルの構造を比較してみる。万年筆の天冠、クリップ、キャップリングなどの形状は、サイズの違い以外はほとんど同じである。バレルについても同様である。
 
「上 USA製 」
「下 カナダ製」
「左 USA 製」
「右 カナダ製」
「USA 製のインプリント」

 今回紹介する大型の「Geometric」の特徴は、Nib(ペン先)とバレルにインプリントされている文字である。アメリカ製のNibには「Parker  Pen  Made  in  U.S.A」とインプリントされている。一方のカナダ製では、「PARKER  14K  ENGLAND  20」とインプリントされている。England工場で作られたNibが取り付けられていることから、1950年代に販売されたものではないかと推測される。
 この万年筆のインクフィラーは、尻ノックのボタンフィラーがついている。1950年代のParker Penは、「Vacumatic」方式の全盛時代であった。だか、カナダではボタンフィラーが、50年代にも使われていたようである。
 この万年筆のバレルには、「Made in Canada」、「PARKER VICTORY Geometric」とある。カナダ工場で制作された「Geometric」は「Victory」万年筆であった 。従って、Parker Penは製造工場によって、作られる万年筆の種類が違うことや機構の新旧の違いがあるようだ。特にカナダ工場では、インクフィラーの機構の古いものが遅くまで導入されていたようである。
 
「カナダ製のインプリント」 「カナダ製」 「本体の部品」