永遠の太陽
 SLAMDUNK 
ースラムダンクの光と影ー

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                   作・井上雄彦 ジャンプコミックス 全31巻「スラムダンク」
の感想及び私見です。
文責は、全て私KYOにあります。

  アニメはあまり好きではなかった。
ただ、「でも、原作はすっごく良いんだよ」という風評を聞いていたので、いつかは読んでみたいと思っていた。
やっと読むチャンスがやってきたのは、2004年3月下旬。
連載が終了して、実に8年の月日が経過していた。

 ・・・胸を打たれた。
 すごいなぁ、と思う。
読んでも読んでも、まだ読みたい。
初めて読破したのが、2ヶ月半前。
以来取り憑かれたように、毎晩、就寝前の愛読書である。
31巻まで読み終わると、ため息をつき、余韻に浸り・・・また1巻から読み返してしまう。
で、何日もかけて全巻読み終わると、また1巻を手に取ってしまうという、その果てしない繰り返し。

一体、何がそんなに私を惹きつけるのだろう。
私は、この作品に何を求めているのだろう。
・・・そう自問すると、いっぱい答えは返ってきますよ(笑)

若さと美しさがギュッと詰まっているから。
濃縮された青春像が、見事に美しい絵で描き出されているから。
登場人物の個性が豊かで、大変魅力的だから。
ギャグが面白いから。
ワハハと笑えるから。
ワクワクするから。
感動して、思いっきり泣けるから。
イイ男がいっぱい出てくるから。
仙道が好きだから。
深津も好きだから。
と言うか、みんな好きだから。
   そして何より、心を存分に癒されるから。

知らない方のために、あらすじをざっと紹介しますと・・・

 どこにでもある普通の県立高校(進学校でもなくスポーツ名門校でもない)、
神奈川県立湘北高校の男子バスケットボール部が、主役の物語です。
 不良少年だった桜木が、一目ぼれした美少女・晴子に勧められて、バスケット部に入ります。(なかなか入部を認められず、ひと奮闘)
 ここは弱小チームなわけですが、安西監督(元全日本選手で現在は隠居同然)を慕って、実は名選手が集まってきており、それがこの年に、赤木・三井・宮城・流川・桜木というベストメンバーとなって、開花します。
 毎年県予選緒戦敗退だったのが、インターハイ全国大会にまで進み、ついには常勝強豪覇者とがっぷり四つに組むほどになるのです。
 要は、その成長物語・・・。
 特に、ルールも知らない全くの初心者(けれどとてつもないポテンシャルを秘めた)である、主人公・桜木の成長と、それを支える地道な努力や友情に、読者は共感を覚えることでしょう。

バスケットボール漫画です。
初めの方こそ編集部の意向を汲んで、ギャグタッチの学園モノ&不良モノですが、途中から見事にバスケオンリー、それもほとんどは緊迫した試合シーンの連続になります。
それが、おもしろい!
なぜこれほどまでに!というほど、おもしろい。

 作者自身、バスケットボールが大好きで、高校では部のキャプテンを務めたそうです。
「漫画を描くことと、バスケットボールは、人生で最も好きなものの2大要素」であるそうで、それが合体したものだから、スラムダンクは至福の作品であるとか。
 それゆえの、名作ですね。

 本当に丁寧な絵で、丁寧な描写で、汗と涙と笑いのバランスが絶妙で(←これがカギ)、あんなに時間の経過が遅いのに(山王戦後半20分を描くのに、まるまる1年かかってる!)、決してくどくなくさっぱりしている。
作者の愛情が込もった、渾身の作品だなぁと思う。
 渾身の力作というのは、他にも少なくはないだろうが、スラムダンクが他作品とはっきりと一線を画すのは、経験者の視点と感覚に裏打ちされた真実であるということ。そして、そこから生まれ昇華してゆく高みがあること。

 ストーリー展開は、けっしてご都合主義的でなく、あくまでも客観的に自然に、淡々と進んで行く。
天才的に見えるプレーヤーも、陰では血のにじむ努力を重ねていることを、きちんと読者に伝えている。ありえない必殺技も登場せず、地に足の着いた物語だと思う。
誰かを紹介する演出も、思い入れ過ぎることなく、冷淡過ぎることもなく、あっさりと適確に過ぎて行く。
 それでいて、息を呑むほどにかっこいいシーンが満載。
と言うより、シーンやセリフに、無駄なものが一つもない。

 キャラクターも1人ひとりにサイドストーリーを思い描けるほどに、個性豊かで魅力的である。
私が好きな順に列挙すると、深津・仙道・水戸・桜木・流川・晴子・彩子・藤真・牧・沢北・河田(兄)・赤木・木暮・三井・宮城・ヤス・神・清田・・・以下延々。
彼らは連載終了後8年経った現在でも、それぞれが個々にファンサイトを持つほどの人気を維持している。名を挙げなかったキャラで、人気の高い人もいる。
 天才でなくても、美形でなくても、地味な存在であっても、愛されている。
 それほどに、存在感のある現実味のあるキャラクターたちだということだろう。

 スラムダンクは、1990年から1996年まで、週刊少年ジャンプに連載されていた。
最も白熱した山王工業高校との試合を最後に、作品自体が最も人気沸騰した最盛期に、すっぱりと幕を閉じた。
以来、続編を望む声が高いが、作者は動かない。
 だからこそ、スラムダンクは不朽の名作なのだと思う。
 あの最終回で終わったからこそ、彼らの鮮やかな煌きが、読者の心に、永遠に焼き付けられる。
そして、読者の心の中で、愛したキャラクターたちは生き続け、太陽のように輝き続けることだろう。

   人間は、かくも美しくなれる。
   人間である、ということが既に宝物なのだ。

永遠の太陽「SLAMDUNK」は、私たちに、そう語りかけ続けるのではあるまいか。

(2004.6.15)

 

スラムダンクの光と影

 「スラムダンクは陽の世界、(現在連載中の)バガボンドは陰の世界」と作者は、言う。
なるほど、陽の世界。
 あまりにも眩し過ぎる、美しい若者たちの青春像。
 しかもそれは、あり得ないほどに現実離れした世界ではない。

努力すれば私だって、がんばれば僕だって・・・
桜木のように・・・流川のように・・・ なれるかも知れない。
少なくともその可能性は、ゼロではない。

 実際、小学生の頃にスラムダンクを読んで、バスケットを始めたという現在ABA(アメリカのプロ)選手もいる。
スラムダンクには、そういう希望を読者に与える力が、大変強い。なんせ太陽だから。
しかも、最も美しく華やかな時期だけを切り取って、後は全て封印してしまった。
 最終回以降の彼らはどうなったのか?
 時は無常に流れ、彼らも年をとっていく。バスケだけをして、人生終われるものでもあるまい。
まちがいなく、影はあるだろう。
ただその影を、幸いなことに作者は目隠ししてくれた。

 その影は、読者1人ひとりが、各々自分の人生に照らし合わせることにより、自らの胸に浮かび上がってくるものだろう。
 そして、同時に光も。

「天才ですから」
ラストシーンの桜木の清々しく美しい表情が、雄弁に物語るものは何か。
その答えも、読者1人ひとりの胸の中に・・・。

(2004.6.19)

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