Parker Streamlined Duofold
(1929-1933)

 
「フラットな天冠」 「バレルのインプリント」 「135mmの長さ」


 
今回紹介するのは、「Parker Streamlined Duofold」と命名された万年筆である。
 1920
年代中期のParker社は、普及版の安価な万年筆を開発していた。その計画では、数種類の物を販売する立案であった。これは、Duofold が高価過ぎて販売が伸びなかったための 打開策であった。この計画が実行されて、万年筆の販売が伸び多大な成果があがった。功を奏したParker社は筆記具メーカーのトップ 企業に位置づけられたのである。それだけに留まらず、高価な「Duofold」ラインの人気を世界中に広めたことにつながったのである。
 この普及版販売の最初の試みは、黒い
Duofold Quality別名ではDQペンで1926年 のことであった。このペンは、3.50米ドル(Duofoldの定価は7.00米ドル)で売られていたようである。「DQ」ペンの後には、「パステル」風のカラーの万年筆が(シニアサイズからジュニアサイズ 、リングトップまで)販売された。(1928年から販売された「
True  Blue」もこの計画の万年筆である。)
 こうした安価な万年筆の販売の後の
1928年に、Parker社は大勢の人や、誰もが一番ほしがる万年筆を導入する計画をもったのである。それが、今回紹介する万年筆の「
Streamlined Duofold」なのである。
 

「Nib」 「クリップとリング」 「クリップのインプリント」


 1929
1029日にニューヨーク資本金市場崩壊が大恐慌を誘発した 。ちょうどParker社が今回紹介する万年筆の「
Streamlined Duofold」を販売することとなった年である。この新たなデザインの万年筆を販売するにあたって、Parker社は市場調査(test-marketed)を実施した。一説では、700人に12種類の異なった万年筆を渡して、その中から 、気に入った1本を選んで貰ったそうである。
 
こうした地道な市場調査を基にして、Parker社は品質の管理と、製品の改良などに力を注いだ。また、製造過程の合理化も進め、「
Streamlined Duofold」は1929から1933年までの5年間このモデルの製造が続けられたのである。
 右下の写真の最上部にある万年筆は、白い斑点(
permanite材料 )のある「ジェイドグリーン」でマーブル(大理石)パターンは、カナダの工場でで製造された。このパーカーの現代的なデザインのDuofold万年筆は、2004年にも
Jade.  Green  Duofold」として導入されている。
 

「マーブルオリーブ」 「ブラックのジュニア」 「同時代の万年筆」


 この「
Streamlined Duofold」万年筆が優れていて、大勢の人を引きつけたのには訳がある。それは、素晴らしい18KのNib(ペン先 )が取り付けられていたからである。「PARKER  DUOFOLD」 とインプリントされた、この万年筆は今でも書き味が大変いい。 また、ペン芯には、クリスマスツリー状設計のインク供給方式が使われている。インクの充填はバレル(胴軸)の尻にある黒いセクションのネジを外し、ボタンを押す方式 (ボタンフィラー)である。
 

「上- Made in USA」
「下- Made in Canada」
「バレルのインプリント」 「本体のシダ模様」

 キャップのTassie(天冠)やバレルエンドは、円柱や、やや先が細くなっているが。平らである。ポケットクリップは大きなボール (シニアタイプのビッグレッドのものよりは、やや小さいボールである。)を付けている。クリップの最上部には「
PAT SEP 5.16」と刻印されている。その文字の下に縦書きでPARKERと彫られている。
 「
Streamlined Duofold」の製造販売は、同時期にカナダ工場でも行われていた。今回、入手できた万年筆のバレルには、(上の写真参照ください。)シダのはのような模様が入っている。そのためか、この万年筆からは、優雅さが感じられ、高級な印象をうける。この模様はParker Jack-Knife Safety Pen などにもつかわれていたバレルデザインである。
 
「キャップクリップ」 「優雅なデザイン」 「全長125mm」

 「
Streamlined Duofold」のUSA製品と カナダ製品との違いは、Nibとバレルに刻まれた文字だけである。尻ノックのボタンフィラー、ペン芯などの構造も全く同じものである。
 この万年筆に取り付けられているNibは、14K製のようである。筆記してみると、やや堅めの感じであるが、今でも十分使える。(写真参照)ペン芯はクリスマスツリーのものがついている。これは1920年代から1930年代にかけてParker社が導入していたものである。
 
「Nib」 「クリスマスツリー」