摩擦圧接の歴史
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人間は木の棒を接触回転させて摩擦熱を発生させ火を起こすことから技術発展の始まりました。物質同士の接触による摩擦熱を有効利用し金属を接合するのが摩擦圧接です。1954年に旧ソ連の旋盤工A.I.Chudikovが摩擦圧接実験に成功し1956年頃からVNIIESO(旧ソ連邦電気溶接研究所)にて研究開発が進められ1961年にはBWRA(イギリス溶接研究所協会)や日本においても研究開発が始まり1960年代中頃から実用化され現在に至っています。 |
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摩擦圧接の原理
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金属結晶は規則的に配列している原子で構成されており、正電荷の原子核の周りを負電荷の電子雲と呼ばれる自由電子が雲のように包んでいます。負電荷の電子雲は正電荷の原子核と電気的に引き合っています。一方、原子核同士は正電荷同士のため電気的に反発し合うことになります。つまり、引力と斥力(反発力)が同時に作用しています(図1参照)。
理論上、別個の金属結晶を清浄な面同士を接触させて、強い圧力で原子位置をBより近づけて斥力と引力が平衡状態にあるときに完全な接合状態となります。しかしながら、一般に金属表面には酸化皮膜や汚れ・吸着ガスなどがあり、この酸化皮膜の層が存在するため結合するほど原子位置が近づくことは出来ません。この酸化皮膜の層を完全に除去することが出来れば金属同士は結合することが出来ることになります。摩擦圧接の場合、これらの層を摩擦工程中にバリとして外部へ排出することができ、さらに高温・高加圧することで結晶粒が微細化され完全な結合が可能となります(図2参照)。 |
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(図1)金属結晶 |
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(図2)原子間の距離と力の関係 |
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摩擦圧接のビデオ |
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引張り試験
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S45C圧接断面 |
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SUH31B-SUH3B
x400倍 |
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プロセスとサイクル
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プロセス
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サイクル
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両側の素材をセットして、一方の素材を回転させ、もう一方の素材を前進させ接触させます。 |
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2.
摩擦発熱プロセス |
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突合わせ面より摩擦熱が発生。接合に適した温度に到達した時点で主軸回転を急停止させます。 |
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3.
アプセットプロセス |
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アプセット推力を一定時間付加することで接合が完了します。その際、カール形状のバリが発生します。 |
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摩擦圧接の特長
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特長
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固相接合である。 |
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母材同等の接合強度が得られる。 |
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再現性があり、品質の安定がはかれる。 |
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異種金属同士の接合が可能である。 |
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接合面以外での熱影響が少ない。 |
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少ない部材で圧接することで重切削が不要。 |
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接合に伴うエネルギー効率が高い。 |
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スパッタ・ヒュームなど発生せず無害である。 |
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火花・煙は極僅かで作業環境は良好。 |
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中空化が可能で、軽量化・環境保全に貢献。 |
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機械操作は容易であり熟練を必要としない。 |
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用語解説
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【固相接合】
solid-state welding
固相接合は、接合面を加圧し、母材の融点以下の温度で加熱することで、溶かさないままで同種材料あるいは異種材料を接合する技術。固相接合プロセスでは、接合時に接合面の汚染層を取り除き清浄面を得ながら、同時に清浄接合面を接触・密着することを基本としています。溶融接合が困難な金属や異種金属の接合ができる、機械強度や材質健全性の点で信頼性が高い、面接合ができるといった優れたメリットが多々ある。 |
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【スパッター】
spatter
ガス溶接、アーク溶接時に飛散する微粒子。粒径は、約1μm〜数mm。塗装欠陥などの原因になり品質に悪影響を与える。スパッタが大量に出る光景は、自動車のボディ溶接を紹介する映像でよく見られる光景であるが、スパッタは電極を押し付ける力を弱め、溶接品質低下の要因ともなる。 |
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【ヒューム】
fume
溶接作業などで発生した金属蒸気が凝集して微細な粒子となったもの。長時間吸入することにより金属ヒューム熱と呼ばれる症状を引き起こす。職業性疾病に分類され、咳、胸部圧迫感、口渇、知覚異常、発熱などを発症し、肺水腫になることもある。
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素材形状の必要条件
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素材形状の必要条件
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少なくとも一方の接合面は円形断面で、且つ、高速回転や高推力に耐えうる部材でなければならない。 |
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適用例
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